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メイン攻略キャラだけど、ヒロインなんていりません!  作者: くもま
一章 向かう所敵なしのお子様、小学生篇
26/42

25.鬼畜御曹司vs電波親子(開戦)

 こんばんはー! 遅くなりまして申し訳ないです。

 更新が……本当に……日曜からずれる……!


 ただし昨日はSAN値削られるんじゃなくて回復してました!☆(ゝω・)

 友達とカラオケ&萌え語りは……最高の……癒しです……

 麻倉亜麻音――通称「電波さん」来襲から一週間が過ぎた。

 その間の龍治周辺は、まぁ概ね平和だったと云っておこう。


 麻倉亜麻音のせいで公園で会えなくなった為、会いたい時には椋太郎の自宅へ出向くようになった事は、棚から牡丹餅と云うか不幸中の幸いと云うのか。

「心配ですから」を免罪符に、一週間の間で三回手土産を持って遊びに行ったりしたのだが、椋太郎も厭がってはいなかったと思う。事前に「これから行きます」と連絡を入れてから訪ねると、すぐに出てきて「よく来たな」と云ってくれたからだ。その言葉を龍治は信じる事にする。


 椋太郎の自宅は、築二十年ほどの二階建てアパートだ。一階の角部屋になる。居間も寝室も兼ねた六畳一間。男一人暮らしの割には片付いていたが、龍治達が来るから掃除したとは椋太郎談だ。元がカウンセラーなせいなのか、部屋に不釣り合いな大きさの本棚には、臨床心理学関係の本が多く詰め込まれていた。推理小説や風景の写真集などは個人的な趣味だろう。他に家具はちゃぶ台くらいなもので、部屋の隅にノートパソコンや書類が寄せてあった。「今は在宅ワーカーだから」とは本人談。

 ゼンさんの弟が一人立ちした頃こう云う所に住んでたなぁと、龍治などは感慨深く思ったのだが、柾輝と佐々木はカルチャーショックを受けていた。「こんな狭い所にお住まいになられて、気が滅入りませんか」とか云った佐々木の腹には龍治が頭突きを叩き込んでおいた。云うに事欠いてなんて事を云い出すのか。賢く沈黙を選んだ柾輝を見習って欲しい。速やかに佐々木を土下座させたのは正しい行いだったと龍治は信じている。

 云われた当の椋太郎は、全く気にしていなかったが。「土下座とかやめて!」と叫ばれた。むしろ龍治が平然としている事の方に驚いていたと思う。

 確かに大財閥の御曹司が、自分の家の手洗い場にも満たない広さの部屋に案内されたら無礼な言葉の一つや二つ云う方が、逆に普通なのかも知れない。しかし龍治のキャラではないので、「世の中の全てを自分の物差しで測れるとは思っていません」と返しておいた。「生意気」と笑われた。笑ってくれた事に安堵する自分がいた。


 一回目は佐々木同伴であったが、二回目以降は龍治と柾輝のみで遊びに行った。勿論、家の前まで佐々木たちが送ってくれたが。椋太郎の手前、「連絡入れたら迎えに来てくれ」と云ったが、彼らは勿論帰ったりなどせず、不審者に思われないよう工夫しながら椋太郎宅の周りに散って遠くから龍治の安全を確保していた。

 そうして守られていた龍治が椋太郎と何をしていたかと云うと、特別な事は何もしていない。公園で会っていた事の延長だ。龍治の手土産を食べつつ、柾輝を含めた三人で談笑するくらいである。


 そうして表面上は平穏に過ぎていたが――当然の事ながら、龍治は麻倉亜麻音について情報収集を行っていた。

 潰してしまうのが一番楽で後腐れがないように思えるが、奴はどうやら龍治の“お仲間”――前世の記憶持ちである上に莉々依の親戚だ。故に、短慮に事を成す訳には行かない。そもそも眞由梨のトラウマがある龍治が、「邪魔だから潰す」と云う方向に行く訳がないのだ。

 情報を集められるだけ集めて、出来れば会話をしたいと龍治は思っている。何せ初めての“お仲間”である。会話をしてみたいと思うのは当然の好奇心と云えよう。しかし相手は周りから見てどうやっても「危ない電波受信しちゃってるアイタタな女」であるし、龍治自身も真っ向から行って対話が成り立つとは到底思えない。

 故に龍治は悩みつつ、考えつつ、情報を集めていた。


(俺にも前世の記憶があるとバラせば、こっちの話を聞く気にもなるかも知れないけど……最悪の悪手の可能性も高いからなぁ)


 ゼンさんの記憶から引っ張り出した、転生やらトリップ、もしくは憑依と云う代物を題材にした創作物において、“記憶”と云うものが持つ威力は凄まじく高い。特に創作物の世界へ転生したと云う話の場合、その世界の未来をり他者の人生を握っていると同義である。

 例えばこれが、同じ目的を持った同士であれば問題などない。事情を話して協力関係になってしまえば済む話だ。しかし互いが別の目的を持っている場合、事は上手く運ばない。龍治は未来に訪れるだろう不幸の回避が目的であるが、相手がその知識を利用し己の意のままに楽しもうとしているのだ。当然ながら、そのままでは協力関係などまず望めない。相当うまく立ち回らなければ敵対するしかなくなってしまう。

 正直云って――それは困る。

 彼女は莉々依の親戚であり、何かあれば大事な婚約者の友人が哀しむ事は確実だからだ。さらに龍治自身も、「邪魔だから」「面倒だから」と云う理由で排除を望むのは乱暴かつ短絡的な行為に感じて気が進まなかった。

 まだ対話すらしていない相手を、自身の目的にとって障害となるから排除する。

 なんとも冷たい文面である。そんな行い、龍治が唾棄し疎む『綾小路龍治』の行動そのままではないか。そんな事、今の龍治はしたくはない。だが初対面での麻倉亜麻音の言動が、「果たして対話は、相互理解は可能なのか?」と云う疑問に「否」を突き付けてくるのだ。

 故に龍治は悩んでしまう。最近すっかり、悩む事が癖になってしまっているようで哀しい。


(それに、麻倉家が綾小路家の怒りを買った……なんて云われて、浅井家にまで余波が出たら厭だしなぁ)


 血縁とは強い味方になる事もあれば、足枷にも成りえると云う事だ。


 ところで龍治は、“麻倉亜麻音”と云う存在について、少々疑問があった。


(記憶を得る前は品行方正な大和撫子だったって云うけど……)


 莉々依の話や佐々木が集めてくれた情報から分かった事なのだが、麻倉亜麻音は本当に高等部に入るまでは大人しい優等生であったのだ。教師の覚えも良く、友人からは慕われ、成績は上々、姉妹仲も莉々依を含めて大変良かった。

 それが本当に突然、あの有様になったと云うのだ。


(……その唐突って云うのが、どうにも、解せない……)


 龍治が記憶を得た時には、膨大な記憶の波が脳内を暴れ回り、処理能力があっと云う間もなく限界を迎えてぶっ倒れたシャットアウトした。それから数日は寝込み魘されまくったのだ。

 だが、麻倉亜麻音には“それがなかった”。


(前日に頭を打っただとか、誰それに会ったとかそう云う事はなかった。そもそも、誰かに会った事が切っ掛けだって云うなら、椋太郎さんに会ったその時が切っ掛けになるだろう。けど椋太郎さんは初めて見たあった頃はまともだったと云っている。その後、麻倉亜麻音が寝込んだと云う話も何かに思い悩んでいる様子だったと云う話もない。奇矯な振る舞いを始めた後にも、特になし。健康にも異常無し)


 年齢が違うからか。性別の違いか。それとも性格の違いからか?

 しかし記憶を得る前の亜麻音の性格を思えば、自分の中にある前世の記憶について悩んでもよさそうなものだが。それとも、善人だったが故に前世の記憶に触発され、抑圧されていた自我が芽生えた、とか?


(……わっかんねーなーもー。どうにか会話……会話が出来ないものか……)


 結局本人と直接会話しなくてはわからない事が多すぎて、どうするかと龍治がまた悩みの渦に飛び込みかけた時―――それは起こったのだった。



 側に放っておいたスマートフォンが着信を告げる。

 しかも着信音は椋太郎用に設定しておいたものだった。


「……椋太郎さん?」


 メールではなく通話の方である。慌てて手に取り応答をタップする。


「はい、もしもし? 龍治ですけど」

『おう……俺だ……椋太郎だ……』

「どうしたんですか。絞殺される前の犬みたいな声出して」

『例えに悪意を感じるんだがまぁそれはいい。助けてくれ』

「藪から棒に。どうしました、麻倉亜麻音が来ましたか?」

『来た』

「おや」

『――俺の部屋に不法侵入しやがった!』

(Oh……)


 自分の予想よりもっと酷い答えが返って来た。

 自宅が割れただけでなく、不法侵入まで――立派な犯罪である。


「……今、どこですか」

うずら区の警察署。麻倉の親が来て騒いでんだよ……何でもするから助けてくれよもう……』

「今すぐ行きますから、何でもするなんて危ない事云わないで下さい。俺が足舐めろって云ったらどうするんですか」

『喜んで舐めるわ! 足の裏から指の間までペロペロしてやるよ! もう厭だ! お願い早く助けて!』

「どこの追い詰められ系ヒロイン……あぁはいはいすぐ行きますから泣かないで。ちょっと待ってて下さい、ね?」

『待ってる……』

(こりゃだめだ)


 力ない椋太郎の言葉に、これはアカンと即座に判断した龍治は上着をひっつかんで部屋から出た。無論、柾輝と護衛達を呼び出して。もう暗くなっていたので母に、「友人が大変なので、ちょっと行ってきます」と声をかけて。



 *** ***



 鶉区の警察署はそこそこ大きい。龍治達が住む区よりは小さいがそれでも充分だ。

 小さな部署よりこのくらいの規模の署の方が、綾小路の名が効果絶大なのである。


「こんばんは。綾小路龍治と申します。友人の久遠椋太郎を迎えに来たのですが、取り次いでいただけますか?」


 にっこり笑って云えば、受付に居た女性職員はしばしぽかんとした後、柾輝から見せられた綾小路家の紋章に目をかっぴらいて、叫ぶような声で「少々お待ち下さい!」と頭を下げた。

 ほんの二、三分ほどで恰幅の良い中年男性――階級章からして、彼がここの署長のようだ――が部下を三人引きつれて駆け付けた。


「こ、これは、綾小路家の若様。お待たせいたしました……!」

「いえいえ、大丈夫です。それで、久遠さんなんですが」

「実はややこしい事になっておりまして……。えぇと、お急ぎでしたら道すがらお話致しますが」


 どうやら地位だけある愚鈍なトップではないようだ。龍治が無駄や手間を惜しんで居る事を即座に察してくれたらしい。その好意を龍治は素直に受ける事にして、「ではお願いします」と頷いた。

 案内すべく歩き出した彼らの後を追う。署長は多村と名乗った。


「久遠さんからは麻倉亜麻音と云う少女が、彼の家に不法侵入したと聞いたのですが?」

「あぁ、先ほどの電話のお相手は若様でしたか……。えぇ、それは事実だと確認済みです。証拠も確保していますよ。麻倉亜麻音も久遠さんやぬしの留守中に無断で入った事は認めています」


 最後の云い方が何となく引っかかった。どう云う事かと問い返すと、多村は深い溜め息をつく。


「いえね……どうにも、無断で入った事を犯罪だと思っていない様子で……」

「はあ?」

「なんでも、自分と久遠さんは恋人同士なのだから、家に無断で入っても問題ない、などと云っておりまして……」

「うわ……っ」


 思わず声が出ていた。

 その発想に対して、ヤバイ・コワイ・キモイの三重苦だと思ってしまった龍治が悪いのだろうか。いや、隣りを歩く柾輝も声は出さずとも顔を顰めている。龍治に関係した事では常識を取っ払う部分がある柾輝だが、一般常識はちゃんと弁えている。だからこの場合、龍治と柾輝の反応が正しいのだ。……と信じたい。

 合鍵を貰っているとかならまだ分かるのだが。


「……ちなみに、侵入方法は?」

「台所の窓からですね。久遠さんが締め忘れたようで」

(無防備過ぎる! 椋太郎さんは後で説教!)

「大人の男は無理ですが、小柄な女性なら入れるくらいの幅はあります。指紋がべったりでしたよ」

「……念の為ですが、まさか信じてませんよね。久遠さんと麻倉亜麻音が恋人同士だなんて」

「久遠さんの怯えようを見ますとねぇ……。それでも片方がそう主張していますから、こちらとしても判断が難しくって。ただ久遠さんに頼まれましてね、隣県の樋熊ひぐま区警察署に問い合わせましたら、麻倉亜麻音と云う少女が久遠さんに対してストーカー行為をしていたと確認済みだと云われましたよ。久遠さんが隣県からこちらへ戻って来る事で一応決着と云う事になって……相手が女子高生ですからね。厳重注意くらいで済ませていたようで」

「まさか女子高生が県跨いで追い掛けて来るとは思っていなかった、と」

「その通りで……面目ありません」

「まぁ警察もお忙しいでしょうからね。女子高生の暴走に一々付き合ってられないでしょう。それは別にいいです。……ただ今回は、久遠さんが望むようならキッチリお願いします」

「心得ております」


 恰幅も貫録もある署長が、銀髪碧眼の目立つ容姿とは云え小学生相手に、極力丁寧に接して来る様は他者の目にどう映るのかなぁとどうでもいい事を思う。改めて綾小路家の名前が怖い。

 そうして情報を得ながら歩いて行くと、目指す先が騒がしい事に気付く。麻倉の親が騒いでいると云う、椋太郎からの事前情報は正しかったと云う事だろうか。


「……おい、なんだ騒がしいな?」

「あの部屋には久遠さんと付き添いだけのはずなんですが……」

(えっ)


 ぼそぼそと話す多村達の声が聞こえてきた。龍治達に聞かせまいとして小声であったが、残念な事に龍治は五感も鋭いのできっちり聞こえていた。

 あぁ厭な予感――龍治のマイナスな予感は、あまり外れない。


「――いい加減にして下さい! 勝手な行動は慎んでいただけますか?!」

「貴様誰に向かって物を云っている?! たかが公僕の分際で無礼な!」

「善良な市民を守るのが我々の務めですからッ!」

「ねぇ!『椋太郎』からも云ってよ! 私は悪くないって! 私達恋人でしょ?!」

「お前は心底悪いしそんなもんになった覚えも一切ない! 頼むからもう俺の事は放っておいてくれよ!」

「人の娘を誑かしおって! これだから下流の奴らは厭なんだ!」

「あんた人の話聞いてんの?!」


 ――自身の表情がスッと引いたのがわかる。柾輝が息を飲んでこちらを凝視し、それに気付いたらしい護衛達がそわそわし始める気配がした。


「わ、若様、すみません。少々お待ちを……」

「いや、いい。待たされるのは嫌いなんだ」

「あ、あの、その……お、お待ちをっ! どうか!」

「ああああ……」

「龍治様落ち着いて下さいませ……!」

「む、無茶はなさいませんように……!」

「お怪我だけはどうか……!」

「龍治様、扉は僕が」


 多村たちと護衛たちは慌てているが、柾輝は一人さっさと覚悟を決めると、龍治より前に出てそう云った。その顔をちらりと見て、龍治は頷く。


「音が響き渡るよう、思いっきり開けろ」

「はい!」


 笑顔で頷いた柾輝が件の部屋のドアノブを握り捻るとほぼ同時に――勢いを付けて開け放った。部屋の内側へと開いた扉は壁に激突し、叩きつけられ、けたたましい音を発した。正直耳が痛いくらいである。反動で戻って来ないように柾輝が手で押さえ込んでくれたので、龍治はちゃんと室内を見渡せた。

 室内には五人いる。目的の椋太郎、以前見かけた電波女・麻倉亜麻音、ブランド物のスーツを着込んだヒョロリとした男、そして制服の警察官が二名。全員が団子状態になりながら、ぽかんと扉の方――つまり龍治の方を見ていた。

 一番早く正気に戻ったのは椋太郎で、唇の動きだけで龍治を呼んだ。次いで亜麻音が瞳を輝かせ、ヒョロい男――間違いなく麻倉家当主、亜麻音の父親だろう――が顔をしかめた。


「い、いきなりなんだね! ここをどこだと……!」

「鶉区警察署ですね、麻倉殿。お初にお目にかかります。綾小路家嫡男、龍治です」


 龍治に悪態をつこうとした麻倉が、ぱかりと口を開いて改めて呆けた。まさか、とその目が語っている。あぁどうしよう、取り返しのつかない莫迦だった。


(あんたのトコのじーさんと、うちの佐々木名刺交換したよなぁ? さらに云えば、俺、今挨拶してやったよなぁ?)


 綾小路家と麻倉家では、どう足掻こうが太陽が西から昇ろうが火山が爆発しようが、綾小路家が格上だ。

 その綾小路家の一粒種が自ら挨拶してやったと云うのに、呆けるとは何事か。普通ならば、早急に挨拶が遅れた事を謝罪し、丁寧に名乗る。それが然るべき態度と云う物だ。例え予想外の事が起きようと、上流階級に属していると云う意識と矜持があるならば、正しく対処すべきなのだ。

 それに、龍治と椋太郎の間に交友――とまでは察せずとも、なんらかの関係があるとは名刺交換と云う行為で知らせてある。その椋太郎が警察に連れてかれたと云うなら、龍治が自ら乗り込んで来る可能性は客観的に見て大変低くとも、ゼロではない。ゼロでないなら、想定しておくべきだ。

 だと云うのに正しい対応が出来ないと云うなら、当主にたる資質がないと云う事。

 莉々依からの情報で、この男は娘の豹変を他者からの悪影響だと云って憚らぬとは聞いていた。しかしそれは好意的に考えて、その豹変に付いて行けず混乱しているのだろうと、思ってやっていたのに。

 その好意を思い切り無駄にされた形だ。


 そうして――親が親なら、子も子だった。


「嬉しい『龍治』! 私を助けに来てくれたのね?! 聞いて、この人達ったらまるで私が悪いみたいに――」

「黙れ、雌豚」


 部屋が凍りついた。この場に居る人間、全てが凍りついた。

 椋太郎は、よもや龍治の口からそんな単語が飛び出すとは思っていなかったのか、唖然としている。

 喜色満面だった亜麻音は表情を凍らせ、自分が今何を云われたのか理解出来ないのか、したくないのか、こぼれんばかりに目を見開いている。

 娘が“綾小路龍治”を呼び捨てにした事に対して、恐れ多いと思うよりも、そんなに親しい関係だったのかと幸せな勘違いをしかけていた麻倉は、顔色を真っ青にした。

 警官二名も冷や汗を掻き始め、後ろからも恐れ戦く気配がする。

 柾輝はただ一人、どこかうっとりした顔で龍治を見ているがそれは置いといて。


「なに、え、な……めす、ぶ、た……わた、し、……え?」


 一般的に云えば可愛らしい顔を歪めて、亜麻音は喘ぐような声で云う。

 それに対して龍治は――最上級の笑顔を浮かべてやった。



「黙れと云ったのが聞こえなかったか? そんなに絞め落とされたいのか、莫迦雌」



 ゼンさんが「わー」と呟いた後、「鬼畜御曹司vs電波親子……ファイッ!」と謎の掛け声をして来た気がした。

 ……ちょっと黙ってて欲しい。


 美少年からの罵倒って私たちの業界ではご褒美ですよね?←

 え? 違う? そんな馬鹿な……っ!


 龍治が週三回も椋太郎を訪ねていたのには心配以外にも理由がありますが……。まぁもう少し後で。

 とりあえず、次で麻倉親子とは決着でござる。あ、ネタばれ?←

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