表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰もこの命題を証明できない。  作者: ignisruby
第1章 空、明くる
8/19

6話 彼女は懐古する。そして、日記を閉じる。

今回はリアの一人称です。

では、よろしくお願い候

 私の名前は、リア・カーライルです。

 帝国系メンデーア人で、グリティム男爵エインズワース家にお仕えするメイドです。

「あ、リアお姉ちゃん!」

 トコトコと体を左右に揺らしながら、近付いてく黒い長髪の子の名前は、私は直接お仕えするクリフィード・エインズワース様です。

 一見すると、クリフ様は女の子のように見えますが、れっきとした男子です。

 けれど、腰までかかる艶やかで、滑らかな黒い髪は、女性である私ですら、嫉妬してしまいます。

 ……まあ、私が髪を洗っているのですけど。更に言えば、この髪形は私の我儘ですけど。

 そんな容姿もあって、クリフ様は私の妹の様な感じです。

 顔も肌は白くて、眼は夜空の様な青みかかった黒で、特に小さくて可愛らしい鼻は私の一番好きな部位です。

「クリフ様なんですか?」

 ……あぁ、クリフ様かわいい~。腰に手をまわしてすり寄ってきて、つぶらな瞳で見上げるクリフ様は眼福ものです。


 6歳のとき、私は商売敵に誘拐されました。

 私の家はエインズワース邸があるリンデルの街でおじいちゃんの代から続く魚屋をしていました。内陸にあるグリティム領において、魚は高級品です。私の家系は凍結魔法が使えたので、その釣り上げた魚を北方に住んでいる大叔父様から安く買って、グリティム領で高く売っていました。

 だから、私の家はグリティム領の中でもかなり名の知れた商人で、エインズワース家ほどでもないですけど、立派な邸宅に住んでいました。なので、私もいろいろと手読み書きをはじめとする基本的なことは勉強させられました。

 ……もっとも、勉強は嫌いではありませんでしたが。

 今の当主様――スコット様が魚を好むこともあって、私が小さい頃から、スコット様には可愛がってもらった覚えがあります。

 ところで、凍結魔法と言うのは魔法の中でも難しい部類の魔法になっていて、扱える者はあまり多くありません。

 だから、この魚の小売も私の家が独占していました。

 それをこの街の皆さんは許してくださったのです。……まあ、諦めていただけなのかもしれませんが。

 これも、私のおじいちゃんとお父様の仁徳のおかげです。

 勿論、ずっと甘い汁を吸っているカーライル家に敵愾心を抱くものは数多くいました。

 しかし、私の家とエインズワース家の縁が深いこともあって、そういったものはすべて抑えられていました。

 けれど、ある日、スコット様がいないときに私は誘拐されました。

 後で聞くところによると、その誘拐犯は私を誘拐して、リンデルの南東にあるテリスと言う街で、新しく魚屋をやろうと画策していたそうです。

 ……まあ、ただ、誘拐が成功しても、その目論見は出来なかっただろうと思います。

 だって、私、凍結魔法使えないんです。

 最後まで、その誘拐犯はそのことに気付かなかったけれど。

 家族――カーライル家の血が流れていないお母さんとおばあちゃんを除いて、凍結魔法が使えるのに私だけ扱えないんです。私は小さい頃から、そのことが負い目でした。

 その後、おじいちゃんやスコット様の尽力で誘拐犯から解放された私に、スコット様が私の人生を変えることをおっしゃるのです。

「ときに、リアちゃん。私の下で給仕をしてみないか?」

 えっ……って思いました。なんでそんなことを言うのか? って思いました。けれど、スコット様の顔を見た瞬間、何故、唐突にそんなことを言うのか、理解しました。

 スコット様は不器用な人です。他人を策に嵌めたり、陥れたり、嘘を吐いたりなんて言うことは何と言うこともなく、こなしてしまうスコット様ですが、その所為で、人とどのように付き合ったらいいのか分からなくなっている人です。小さい頃からスコット様に可愛がってもらっていたのでよくわかります。でも、だからこそ、そんな人が私のために、私の身を守るためにそんなことを言ってくれるのはすごく嬉しかったのです。

 私は悩む必要がありませんでした。

「はい、喜んで!」

 そうして、私はメイドになりました。

 家族も信頼のおける客であるスコット様の申し出を袖にはしませんでした。

 この話は、特におじいちゃんが喜んでました。

 理由を聞くと、私が凍結魔法が使えないことで気に病んでいるから、と言われました。

 流石にお父さんはすごく寂しそうでしたけど。


 それから七年が経ちました。

 五年のうちにいろいろなことが変わっていきました。

 一番はクリフ様の誕生です。

 あの日、私たちはすごく慌ただしい日でした。それもご飯を抜かねばならない程に。

 こうして生まれた赤ちゃんはとても可愛らしい男の子でした。

 魔法が使えるようになったとか、さまざまな事件はありましたが、それもいい思い出です。

 そして、クリフ様はかわいい男の娘になりました。

 ……したのは私ですが。

 このネーミングは、クリフ様が何気なく呟いた言葉から取りました。

 最初の頃はクリフ様も嫌がっていたのですが、そのうち、憑き物が落ちたように積極的……とはいきませんが、嫌がる素振りはしなくなりました。

 最近は小さなメイド服を仕立てて、クリフ様に着させています。勿論、そう言うことを意外に面白がるスコット様はともかく、メイド長をはじめとした面々には隠れてやっていますが。

 今日、着させているのはフリルの付いた装飾過多なメイド服ではなく、シンプルなロングスカートのメイド服です。まあ、流石にそのままと言うのは芸がなさすぎるので、袖口とスカートをフレアにしてみたり、モノトーンに鮮やかな青を少し混ぜてみたりと、いろいろとアレンジは加えさせていただいてますが。

 着させてみて分かったのですが、同じ服でも、人によって全く印象が違うということに気付きました。

 私が着ても、ただの出来るメイドとしか見えないのですが、クリフ様が着ると、そこから滲み出るオーラと言うものなのかな、そう言うものがメイド服をメイド服ではない何かに昇華してしまうのです。

 つまり、何を言いたいかと言うとですね……


 クリフ様かわいい!


 と言うことです。

 あっ、明日、家庭教師が来るのでした。今日は気合を入れて掃除をしますか。

 となれば、箒です。さて、箒はどこかな?

前回、最後の方、リアが微妙な顔をしたのはそういう理由があったからと言うことで。

やっとこさ、クリフの容姿の描写が出来た……。

お気づきの通り、クリフは全編通して、男の娘です。


さて、今回、一日ずれました。

(期待してるかどうかはともかく)遅れてすみません。

言い訳だけさせていただくと、テストの勉強が……と言うことで。


では、次回は、クリフは5歳になって、新キャラ登場!

少々お待ちください……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ