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誰もこの命題を証明できない。  作者: ignisruby
プロローグ
2/19

0話 彼は立ち止る。そして、また、歩き始める。

初めまして。

この作品が初めて掲載する作品です。

見苦しい点や読みづらい点などがありますが、そこのところはご容赦を。

因みに、これ、完全に見切り発車で、ゴール地点は見えてるけど、どのようにするのか全くの白紙です。

その点にも、ご容赦ください。

 今、思い返してみると、この始まりの日はただの記憶だったのだろう。


「齋藤君、ここの計算間違ってるから、計算し直しておいて」


 無慈悲な教授の訂正である。

 はっきり言って、めんどくせえ。

 この計算すんのに、何十分かかったと思ってるの?

 そうは思っていても、駄々こねても、何も変わらないから、やり直すか。


 誰しもが持っている劣等感。

 ある人は家に劣等感を覚え、また、ある人は才能に劣等感を覚える。

 そう言う俺も、劣等感の塊だ。

 他人の才能に、努力に、金に、物に、すべてにおいて羨望と嫉妬を覚えた。

 小さい頃から、お前は頭がいいねえ、と両親から言われながら育ってきた。

 でも、今、俺は頭がいいとは思ったことはないし、ましてや、天才なんて呼ばれるものじゃない。小さい頃は天狗になっていた時もあったが、その度に痛い目を見て、高い鼻はへし折られてきた。

 確かに、周りから見たら、すごいのかもしれないけれど、俺にとっては、俺より出来るやつがいることが正直に言って、気に食わない。

 天狗の鼻が折られる度に、心理学でいう合理化をしてばかりして、今まで、生きてきた。

 でも、そんな性格は嫌いじゃない。

 俺はナルシストになるほど、陶酔はしてはいないが、俺自身のことは月並みには好きだ。

 それでも、やっぱり劣等感を覚える。

 まあ、自分が劣等感の塊だということを自覚だけはあるのはましかと思い込む。

 多くの人は、自分が劣等感があることを自覚しない。

 いや、自覚しないのではなく、認めないと言った方が正しいのか?

 それは、自分が正義だと、聖人君子だと思っているからか、自分は善なる人間だと、だから、劣等感なんていう唾棄(だき)すべき悪な感情を持っていることを認めたくない。そんなところか。

 今日も、人間観察をして、哲学を考える。

 そんなことばかりやっていたら、他の努力をしていなかったら、希望の研究室には行けなかった。

 今やっている研究も、ぶっちゃけ、興味がないわけではない。

 ただ、一番ではない。

 結果、若干、人生に嫌気。大学に恨みを持つこの頃。

 ……まあ、結局のところ、自分が一番悪いんだけどね。

 ああ、つまんないなあ。やりたいことはあるけれど金も人も土地もないしなあ。毎日が同じことばかりで。面白いこと転がってないかなあ……。

 そんな訳あるか。

 つくづく、夢見がちな性格をどうにかしないとな……。

 そんなことを考えながら、帰る準備をしていく。それが最後になるとも知らず。


 大学から出て、電車に乗る。

 途中で別の電車に乗って、最寄りの駅に降りる。

 たかだか、30分ほどの道程。

 それでも、多くの人に、もみくちゃにされていたから、ものすごい疲労感。

 それで、駐輪場から、自転車を出してきて、警備員の人に挨拶をして車道に出る。

 空は真っ暗になっていた。

 いつもと同じ道。

 いつもと同じ町。

 変わらない街。

 それがいい、と言う人がいるかもしれないけれど、俺には退屈でつまらない。

 あ、信号が赤信号だ。

 自転車を止める。

 一応、自転車も軽車両だからな。誰も守っている奴なんかいないけど。

 空も暗いからか、道路もあまり大きくないからか、人も車も少なかった。

 青になった。

 行こう。


 と、俺の横から眩しいほどの光が。


 え、マジで……?


 避けられない。


 そう思ったとき、今までのことが思い出された。


 なんで、もっと真面目に生きなかったんだろう。


 まず、最初に思ったのは過去に対する後悔。


 死ぬ間際になってまで、後悔しているんだろう。


 次に、その後悔に対する悔恨。


 死ぬときは後悔しないと決めたはずなのに。


 何で?


 分からない。


 最後に、その悔恨に対する疑問だった。


 死ぬ直前に見た景色はトラックの運転手の顔だった。

 思い出しても、笑っているのか、怒っているのか、驚いているのか、分からない、のっぺりとした顔だった。


 そうして、俺は死んだ。




 次、気付いたとき、俺は虚空の中にいた。

 俺は死んだんだな。

 俺は死んだことに対しては受け入れた。

 理性で事実を呑み込んだとき、感情が暴走した。

 思ったのは、ただ一つ。


 ああ、なんて空虚な人生だったのだろう。と


 そう思ったとき、俺はなんだかやるせない気持ちになって、呆然と立ち尽くした。心の中では大雨が降っていた。


 泣きたくなんかないのに。


 何で、溢れ出るの?


 こんな空虚な人生を送ってきた何の意味もない人生だったのに。


 何が漏れ出ているの?


 死んだようなロポットみたいな空っぽの身体なのに。


 何で、何で、何で何で何で何で、何で?


 ぐるぐると螺旋を描くように、輪廻のように思考が堂々巡りになっていく。


「ほう、君もまだまだ人間だったということだね」


 誰だ?

 何か、若い女性の声が聞こえてきた。


「人間だったって……そんなの当り前じゃないか」


「そう言うことを言っているのではないの」


 困ったような、迷える羊を見つけた様な声。


「どういうことだ?」


「ここで君は泣いていただろう? その涙と言うのは、その泣くと言うのは、君が感情を持った人間だったということじゃないか。ん? どうだ?」


 なんだか、どこかでドヤ顔をしていそうな口調だった。

 別にドヤ顔するようなことでもないけれど。

 事実は事実だし。


「確かにそうかもしれない」


「だろう? じゃあ、人間だったということを確認したところで、君、また人生をやり直してみない?」


 ?

 ナニイッテンノ、コノヒト?

 そう思った。


「おやおや、ビックリしすぎて声も出ないってやつかな? ……んーその顔は馬鹿な子を見たって顔だね」


 声だけだけれども、俺にはにやにやしているのが想像できる。できてしまった。

 俺はあまり表情を変えずに、訊いた。


「どういうことですか?」


「どういうことってそういうことだけど?」


 何でもないかのように言う謎の声。


「いやだから……」


「あーんもうっ! 君は人生をやり直したいのか、したくないのか、イエス、ノーはっきりする!」


 ちょっと苛立ってきたようだ。

 でも、別に彼女を怒らせる必要はないし、俺はあまり怒っている人を見たくない。

 だから、もう些細なことは放り投げて、自分の思ったまま、感じままを言葉にした。


「俺はやり直したい、人生を、人間を、時間を」


「よろしい。じゃあ、何のために君は人生をやり直したいの?」


 俺の答えは彼女を十分、満足させられたようだ。

 そして、彼女の答えに俺は――


「この空虚な、虚ろな俺に中身を詰め直したいから」


「空虚って……君は何もない訳ではないよ。勉強したことも、今までの思い出も。君にはあるんだよ? それでも、やり直したいの?」


「ああ、俺には何かあると思っていた。他人にを誇れる何かを。確かに他人から見たら、あるのかもしれない。けれど、今、俺が持っている何かじゃあ、他人に誇れない。そう思う。だから、俺は欲しいんだ。自分を信じ切れる何かを。自分の存在意義を。自分が空っぽでない根拠を。欲しいんだ、手に入れたいんだ。俺は小さくて弱い人間だから……」


 吐き出した。

 すべての思いの丈を吐き出した。

 俺が今まで他人に言えずにいたことを吐き出した。


「うん、わかった。じゃあ、始めようか。君の新しい人生を。新しい門出を」


「ああ、頼んだ」


「そうそう、君が空っぽと言うのなら、君の記憶は消さないでおくね」


「……分かった」


 いつの間にか俺の目の前に大きな門が出てきた。

 俺は、もう驚かなかった。

 それを押し開いて、門の奥に体を入れていった。




 そして、一人の人生が終わり、一人の人間の魂は地球から消え去った。

 魂は別の世界――つまり、異世界に飛ばされた。


さて、異世界に飛ばされました。


この異世界の話は次回と言うことで。


次回は、異世界の設定にするか、誕生した話にするか、決まってないよ!

大丈夫か!? この連載。

知らねえよ、馬鹿ァ!


てなわけで、誤字脱字、アドバイス等お待ちしてます。

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