8話 彼は教えを受ける。そして、魔法を理解する。
遅れましたごめんなさい。
では、よろしくお願いします。
そんな事があった翌日。
「さてと、昨日はあんなことになったけど、今日は魔法の授業だから、大丈夫かな」
流石に昨日の暴走はやり過ぎと思ったのか、反省の弁を述べるクリフ。その顔は全く反省しているようには見えなかったが。
「そうです。クリフ様、家族ではないんですから、そこのところをきちんとしてください」
「分かってるよ、リア」
「分かっているなら、その悪戯心に満ちた笑顔を止めてください」
んんー? と首を傾げるクリフ。
わざとらしい、その演技にリアは見惚れてしまいそうで、困った。
「で、来たのが、アイヴィーと」
本人、目の前にして、そんなことを言う。
「よ、よろしく……」
流石に昨日、泣かされた相手ではやりずらいのか微妙な顔をしていた。
「クリフ様、そんなことを言ってはいけませんよ。先生なんですから」
「……リア、知ってたね?」
「……お答え致しかねます」
リアのことを白い目で見ていたクリフを何ということもなく、黙秘権を行使した。
「ふへええ……」
アイヴィーは密かな争いが勃発している状況に戸惑う。
「さて、始めましょうか、アイヴィーさん」
「あ、はい」
リアは手を叩いて、場の空気を変える。
それに連れられて、アイヴィーも返事をした。
魔法の授業の開始である。
「クリフちゃんは、魔力ってどのように考えていますか?」
「体の中にある、なんだかよくわからないもの?」
「じゃあ、魔法って魔力をどのように使っているの?」
「うんと、体の中にある魔力を精霊に渡して、その精霊がいろんなことを起こす?」
アイヴィーの質問にあの悪書から必死こいて学んだことを言ってみた。
「うん、その認識を持っているのなら、大丈夫ですね。体が小さいから、魔力も大きくないけど、大きくなったら、大きな魔法も打てるようになるよ」
合っていたようだ。
(ん? 体が小さいから、魔力が小さい。で、大きくなったら、魔力が大きくなる?)
霞を掴む様な漠然とした疑問が出たクリフはアイヴィーに訊いた。
「ねえ、アイヴィー」
「ん? 何ですか?」
「体が小さいから、魔力が小さいってどういうこと?」
訊きながら、その漠然とした疑問が晴れてきた。
そう、クリフは一度も魔力の最大値を測ったことがないのだ。
なのに、魔力の最大値が分かるってどういうことだ? と言うことなのだ。
「……? クリフちゃん。クリフちゃんが魔法の勉強をするときに何の本を使っていたの?」
言われたので、あの悪書を見せる。
と、突如、大袈裟ではないけれど、横を向いて吹いた。
「……ごめんね。その本、魔法界からも、評判の悪い本なんだよ。更に言えば、今、定説とされている説が書いていないんだよ。何でも、その著者が、そんな曖昧なもの信じないとか言ったそうで」
(……アインシュタインの量子力学嫌いと似たようなものかな?)
「それで、その定説って何ー?」
「魔力の最大値は体が大きくなると、魔力も大きくなるんだよ――
掻い摘んで説明すると、魔力最大値は体の体積に比例していて、体の小さな子供じゃ、魔力も小さいということ。
それで、魔力はそこらへんにたくさんあって、魔法を使うと、体の中の魔力が減るのだけれど、その直後にその減った分を補おうとして、大気から魔力を補充する。その補充するとき、その補充速度によって、体に負荷を掛ける。掛け過ぎると、死に至る。又、大きな魔力を補充するとき、魔力を補充するスピード――魔力補充速度が速くなる。
結果として、魔法師の使用可能魔力が決定する。
だから、成人した魔法師は身体の耐久性や魔力の補充速度を調節したりして、使用可能魔力を大きくしていく。又、体の耐久性は天性のものが関わってくるが、魔力の補充速度は老成した魔法師ほど、調節が上手い。
(くそ、そうだったのか。やはり、悪書は悪書か……)
これは大きな情報である。
何故なら、相手の魔法師が自爆覚悟の大きな魔法を使っても、失敗しないということである。
実際、戦争のときでも自爆覚悟の魔法を放ってきたこともあるらしい。
随分、長く説明をしていたアイヴィーは何だか満足そうである。
「あ、もうこんな時間なんですね。クリフちゃん、外に出て、魔法の練習をしましょう?」
「やったー。じゃあ、お外いこ。お外!」
若干、うんざり聞いていたのは内緒である。
玄関とは裏側の庭にやってきた。リアも一緒についてきた。
「じゃあ、魔法を打ってみようか」
「はーい!」
クリフは手を挙げて元気な振りをする。
(何の魔法がいいかな? うーん、今日は雅な感じのやつやってみよ)
手を翳し、想像する。
やりたいことを明確に、はっきりと。
(フィギュア―アイス!)
そして、掌にひんやりとしたものが。
開くと、鳥の氷像が出来ていた。
「……」
アイヴィーは地味ながらも、要求されるレベルの高さに唖然としていた。
「クリフちゃん……無詠唱できるの?」
顔を青くしながら、恐る恐る聞くアイヴィー。
「うん! できるよ」
「……それじゃあ、次やってみて」
(フレアダンス!)
目の前には赤青緑の三原色の炎。
その炎が躍るように揺らめいていた。
この三原色の炎は、花火でおなじみの炎色反応なのだが、科学レベルがとことん低いこの世界ではそんなことは露知らず、アイヴィーは現実逃避してしまった。
アイヴィーは打ちのめされて、ゆらゆらと外壁の隅に寄って、ぶつぶつと呪詛を唱え始めた。
「私だって、無詠唱一個しか出来ないのに……それに、あの炎何?……もしかして、私っていらない?」
とんでもない思考の飛躍が見えたので、その前に、クリフは彼女の傍まで行って、慰めた。
(……何で、俺がこんなことをしなくちゃならん)
内心、面倒臭がっていたが。
落ち着いてきたら、もう、授業の終わりだった。
「あううぅ……今回もごめんなさい。こんなことになってしまって」
アイヴィーはバツが悪そうな表情を見せる。
「いえ、あれはキチンとアイヴィーさんに彼の異常性を伝えておかなかった私たちが悪いんです」
リアが無表情の顔で、謝罪した。
若干、場がクリフの所為と言うことになりつつあったので、無理やり話しの骨を折った。
「ねえねえ、アイヴィー。何で、私のところに来たの? アイヴィーぐらいの歳なら、もう結婚してるはずでしょ? 何で、何で、……何で?」
アイヴィーにクリティカルダメージ!
アイヴィーは涙目になって、
「私はどうせ、行き遅れですよ――――――!!!!」
走って帰って行った。
二日連続の泣き落ちだった。
その後、一週間近くにわたって、ぎくしゃくした関係だったのは仕方ないと諦めるべきだろう。
ここから、後書きと言う名の言い訳
一回分投稿を飛ばしました。
理由としては、大学の課題が終わらなかったから、としか言いようがありませんね。
もう少し、pdfに書いてほしかった。ソースコードの内容を……。
後は、11話がちょっと完成しなかったもので……。
と言うことで、ごめんなさい。
と言う訳で、やっぱり泣き落ちで終わった今回。
次回は、遂にアイヴィーがやり返す!
と言うことで、次回もできたらいいな……。