鰻釣り 其の壱。
儂は握津咲啼。
万神、ようするに天界の何でも屋といったところじゃ。自分で言うのもなんじゃが、腕はいいほうじゃ。最高位の神々の十黒神の一人、月恋様にも認められている。
今日はその月恋様から呼び出しがあった。
天界といえども、何も夢のような世界ではない。存在する命が魂であるというだけであって、普通に山や川の広がる田舎を想像してもらうといい。その山の一つ、『月見山』の山頂近くに位置する月恋挺に、月恋様は住んでおられる。
「今回は何の依頼かのう…」
呟きながら石造りの階段を登る。
最近は大事よりも雑用っぽい仕事が多い。今回もそんなところじゃろう…ハァ。
「ただいま参りました、咲啼にございます。」
「あーっ!待ってたのよ咲啼ちゃん!」
月恋様、いつも通りのテンション。
「申し訳ございません、遅れました」
「いいのいいの、そんなに待ってないわよ」
さっき待ってたって言ってなかったですか。
「で、本日の依頼は…?」
「えぇ、実は私ね…」
「はい」
お、真面目な依頼かの?
「私ね…」
月恋様、真面目な顔付き。久々に大事の依頼か、腕が鳴るのぅ!
「鰻が食べたいの」
「は…はぁ」
期待した儂が馬鹿じゃった。鰻って…。
「月見山の麓の月見川あるじゃない?そこに鰻がいるのは知ってるでしょ?」
「えぇ、あの鰻は美味だと有名にございます」
「でもね、その上流にある湖にもっと美味しい鰻がいるらしいの」
「それは初耳にございます」
月見川の上流に湖があるとは知らんかった。月見川は月見山山頂の水源から曲がりくねって流れている川じゃが、わざわざ山の中の川を遡ったことはなかった。
話によると、月見川の鰻の美味しさの秘密を探りにいった者がおって、川を遡ったところ、湖を発見し、そこにいた鰻を調べると旨味成分が凝縮されていたとか。暇な輩もおるもんじゃの。
「というわけで、その鰻を釣ってきて頂戴!」
「かしこまりました」
こうして鰻釣りが幕を上げた。
ギャグ重視でいこうと思ったんですがまだどうも慣れませんね…(笑)
もっと面白くなるよう考えていきたいと思います。
次回もお楽しみに!