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幼き子の願い


「お前は王にはなれない」


その子供は国で一番の占い師にそう告げられた。その老婆の名はいわい。代々シエンの国を支える先見の者。


悪しき未来を防ぎ、良き未来を呼ぶ。


「私が王にならないで、誰が王になる!」


幼い子供は白髪の老婆にくってかかる。


と言っても、子供はその老婆が好きだったので、怪我をさせるようなことはできない。


老婆の服の裾にしがみつきゆらゆらと揺するだけ。小さな子供の抵抗は老婆にはくすぐったいほど愛らしかった。


「ほほほっ。どれ見てみようか」


しわしわの顔で笑うと、老婆は膝元にあるつぼの中に手を入れ、きれいな砂利を握る。それを手の中で拍子をつけ、じゃらじゃらと鳴らした。老婆は耳を澄ますため、目をつぶる。


その音が子供は大好きだった。老婆と一緒になってその音を聞く。それだけで、この老婆は何でも言い当てる。未来に起こること全て。それが本当に不思議ですごいと子供は思っている。


「お前は王にはなれないが、お前の子は里を統べる」


老婆は真っ白な目を見開いて子供に告げる。


「本当だな、私の子が王になるんだな。じゃぁ仕方ないなぁ」


少し拗ねたような顔をした後、子供はストンと座布団に腰を落とす。


「ねぇ、いわいのばあ。私は王になれなくとも父の助けになるか?」


子供は真っ直ぐな瞳で老婆の白い瞳を見る。祝の者はいつも変わった姿をしているらしい。この老婆は生まれつき目も髪も白かったという。


子供の父は王だった。幼いながらに子供は父の助けになりたいと願っていた。


「修行に励み、勉学に勤しめ。それがきっとお前の助けとなってくれるさ」


祝は優しい笑みを浮かべて子供の頭をなでる。真っ直ぐな黒い髪が子供の肩から流れ落ちる。大きな黒い瞳は嬉しそうに輝いていた。


―――― それは、遠き日。


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