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山田氏(仮名)は悪の科学者である

作者: ひろ

※本作はフィクションです。実在の法律・人物・団体とは一切関係ありません。

 山田氏(仮名)は悪の科学者である。


 今日も街なかの秘密の研究所で、人知れず悪いことの研究をしている。


 「あと少しだ。あと少しで核兵器をも凌駕する最強兵器の理論が完成する。

 世界中を恐怖のどん底に叩き落してやるぞ。

 そしてゆくゆくは悪の帝国を築き、世界を支配するのだ。」


 自分を悪と自認するこの男。

 屁理屈をこね、自分の行為を正当化するような小ずるい悪党の多いこの世の中で、それはそれは大層真面目な悪である。



 「世界を焼き尽くし、人々を絶望させてやる。そして俺は高々と宣言するのだ。この悪の科学者山田(仮名)こそがこの世界の支配者であると。

 人類よ、俺の前に跪くがいいわ!!フハハハハッ!!!」


 言い訳をしない潔さ。責任を一手に引き受ける覚悟。

 自己保身と責任転嫁に長けた小ずるい悪党の多いこの世の中で、それはそれは責任感のある悪である。

 


 因みに、この男を止めるべく立ち上がるはずのこの世界のヒーロー、お面ファイター•ホンゴウタケオは、先日日本征服を目論む悪の組織デスモアのアジトに単身乗り込み、これを壊滅。

 不法侵入、大量殺人、爆発物使用など、諸々の罪で現在服役中である。


 どうなる世界?

 どうなる未来?



「それにしても腹が減ったな。もう夜中の二時を過ぎていたか。もう少しで私の頭の中の理論が完成しそうなんだがな……。

 仕方がない、気分転換も兼ねて近くのコンビニにでも食料を買いに行こう。」


 割と庶民派な悪の科学者。ちなみにコンビニは◯ーソン派である。



 ポロロンポロロン…ポロロンポロロン

 「いらっしゃいませこんにちは~」

 ガサッ「お願いします」

 「ありがとうございままぁす」ピッ……ピッ

 「お弁当温めますか〜?」

 「お願いします」

 「かしこまりました〜」ガチャ、バタン……ヴーン

 「お箸おつけしますか〜?」

 「あ、要らないです」

 「かしこまりました〜。2038円になりまぁす。」

 「カードで」

 「かしこまりました〜。p◯ntaカードはお持ちですか〜?」

 「はいこれで。」

 「ポイントご利用になりますか〜?」

 「いえ、付けておいてください」

 「かしこまりました〜。ありがとうございました〜またお越しくださいませ〜」

 「どうも〜」




 「ククク…うっかりp◯ntaポイントを付けてもらってしまったが、もうこれを使うことも無いだろう。なぜならp◯ntaポイントもインフラごと私が破壊し尽くすのだからな…ククク。」


 日々の些細なことにも喜びを見つけられる前向きな悪である。



 「それにしても、こうやって弁当を手に静かな夜道を歩いていると頭が冴えてくるな…

 まてよ、アレを逆に考えれば……その手があったか!。やった、遂に理論が完成したぞ。これで世界は私のものだっ!!」




 ガサッ


 「!!だ、誰だっ!!?なっ、ぐああああっっ…」



 グガォ~




 熊である。いわゆるアーバンベアである。

 人を怖がらず、食料を求めて平気で街にやって来る。

 その熊が山田氏の持つ弁当の匂いに釣られて姿を現したのである。

 世界を滅ぼさんとする悪の科学者といえど所詮は人間。自然の脅威には無力であった。南無。

 しかし、かくして世界の平和は保たれた。

 サンキュー熊さん。



 なお、熊さんは次の日、一般市民を殺した害獣として駆除され、街の平和も守られた。


 フォーエバー熊さん。


 そしてサンキュー猟友会。



おしまい



【後日談】


 

 山田氏(仮名)は異世界転生者である。


 アーバンベアに敢え無く殺められ、死して赤ずきんちゃんの世界に狼として転生したのである。


 「知っている…知っているぞこの世界をっ。

 原作の狼のような下手は打たん。

 赤ずきんの小娘を恐怖に陥れてくれるわ。そしてそれを足がかりにこの世界を我が物にするのだ。」


 へこたれない男である。


 赤ずきんの祖母の家に押し込み、赤ずきんの祖母はとりあえず納屋に閉じ込めた山田氏。

 ターゲット以外をむやみに傷つけない。大変律儀な悪である。


 「さあ来い赤ずきんよ…お前の恐怖にひきつる顔を見るのが楽しみだ。」




 祖母の家に近づく足音…そして玄関の扉が開く。


 「ようこそ赤ずきんよ!!……ってまたお前かぁっっっつ!?」


 グガォ~




 アーバンベアもまた転生していたのである。


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