わたしの青春
わたしは、自分のことが嫌いだ。
熱中できるほど、好きなものがないのだ。青春だって、したいのに。中学生になって、新しくなると思った日々も、今までと同じように過ぎていく。部活には入ったものの、熱中できているか。と聞かれても、答えられない。
ぼーとしていると声をかけられた。
「おおい。聞いてるか。部活行くぞ。」
さばさばとした性格の、わたしの親友だ。性格も、全然違うから、なんで親友になれたのか、いまだによくわからない。考えていると、肩を軽く叩いてきた。
「ごめんごめん。」
わたしは笑って、教室を出た。
わたしが入っているのは、バドミントン部だ。先輩は、優しくて面白い。部も、それなりに強く、都大会は毎回行っている。ただ、部員が多く、新入生は、基礎練しかさせてもらえない。うまくなりたいとは思うけど、正直めんどくさい。何度もサボろうかと思った。
「それが青春というものだよ。」
親友に愚痴ったら、そういわれた。
「わかるよ。私もそう思うし。でも、やらなきゃ、うまくなる日は来ないし、頑張ったすべての日が、青春だし、きっと、宝物になるよ。」
それを聞いて、いまは、サボろうとは思わない。めんどくさいとは思うけど、それも青春の一貫だ。いずれ、宝物になる日々だ。
でもわたしは時々不安になる。
自分の選択は正しかったのか。大事なものを忘れているのではないか。
物語の主人公みたいになりたい。と何度も思う。きっと、熱中できるものがあるだろう。毎日が楽しいだろう。でもこのままじゃなれないとはわかっている。それだけであきらめてしまう。努力もしないで。そんな自分が、嫌いだ。
いつのまにか、みんな素振りを始めていて、私も慌てて始める。わたしだけ、形が違う。自分の姿が見えなくても、何となく、わかるものだ。ほら。筋がいいねって、みんな先輩に褒められている。わたしは、アドバイスだ。それも、いいんだろう。もっとうまくなれる。と、言ってもらってるようなものなのだから。でも、焦ってしまう。わたしだけって。思ってしまう。そんな自分が嫌いだ。
わたしだけ。わたしだけ。でも、諦めなければ。きっと・・・あああ。悔しい。悔しい、くやしい!
なんであんなに、うまくできるんだろう。ああ。ほら、みんなつぎつぎと、新しい段階に、進んでいる。
わたしだけ、おいて行かれている。
「まーた、考え込んでいるのか。」
声をかけられて、顔を上げる。親友だ。少し、気分が楽になった。
「うん」
うなずく。そしたら、いいたいことが、ずらずらでてきて、とめられなくなった。
「あのね。わたしだけ、おいて行かれてるの。見てたら、わかるよね。そりゃあさ、みんなほど、わたし、全力じゃないんだろうな。努力が足りないんだろうな。と思うよ。でも、でもさ、わたしだって、できる限りやってる。なのに、追いつけない。追いつけないの。うらやましいの。みんなが。妬ましいの。みんなが。そんな自分が、嫌なの。」
言い終えて、はっとする。自分が、なにを言ったのか。なんて甘ったれた考えだろう。たんに、努力が足りないのだ。熱量が足りないのだ。慌ててあやまろうとするわたしを、彼女は制止した。
「そっかぁ。でも、普通にうまくない?素振りのかたち、綺麗だし。って、そういうことじゃないよね。
私ね、ちょっと、安心した。きみさ、ずっと熱中できたもの、なかったじゃん。うらやましいって、思うのも、当たり前だ。妬ましいって思うのも、裏を返せば、バドミントンがじょうずになりたいからだ。大丈夫。嫌になるとこなんてない。むしろ、愛してもいいくらいだ。きみは、誰よりもずっと努力してる。一番最後まで練習してるし、途中で諦めたりしないだろ?」
ストン。と、言葉が胸に落ちた。そうか。と素直に思えた。わたし以上に、わたしのことを、わかっている。思っているとおずおずと先輩が声をかけてきた。
「あのね、普通に、上手だよ。今までずっと、アドバイスしかしてなかったのは、言えば、どんどんうまくなると思ったからなの。実際、そうだったし。自信もって、いいからね。いっそ、愛しちゃう?」
その言葉に、わたしは笑ってしまった。さっきの言葉とあいまって、すこし、自分を愛せる気がした。
もうすぐ、夏がやってくる。初めての大会の日も、もうすぐだ。あれから、まえよりも、さらにさらに努力して、一年生の、二枠しかない、大会出場を勝ち取った。もうひとりは、親友だ。
きっと忘れない。あの、くやしくも、楽しくもあった日々を。とても、きつかった。今日は、その努力は、報われないかもしれない。でも、わたしは信じている。いつかは報われると。いつかはわからないからいいと、わたしは思う。そんな考え方ができるわたしを、いまは、愛していると思う。
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