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ギルティなギルロッテ様  作者: 月迎 百
過去の罪とこれからの私達
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29 お世話と援護射撃

異世界ですが魔法はなく、何となくイギリスのヴィクトリア時代後期の世界観で書いています。

恋愛&ちょこっとミステリーな話になればいいなと思います。

ここから始まる第6章で完結になります。

最後までお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 アルトール辺境伯爵は、リアーナとエドワードの気持ちが定まったことを聞くと、少しがっかりした表情をした。しかし、このまま辺境伯爵領でリアーナは仕事を続け、エドワードは静養したいという話を聞くとうれしそうに「ぜひ我が家でお過ごし下さい。リアーナ! 仕事が増えるがエドワード様のお世話も頼むよ」と言った。


「お世話って、そんな子どもみたいな?!

 そこまでの怪我じゃないし、病人というわけでもないですしっ!」

 リアーナが笑う。

「お世話してもらいたい……」

 エドワードが言って、それを聞いたリアーナが一瞬驚き固まってから真っ赤になった。


 こうしてエドワードとリアーナの心は通じ合った。


 ルーベルトだけが宿に帰ろうとすると、辺境伯爵が止めた。

「今、連絡があって、ヒューバート伯爵令嬢もこちらに向かっているそうですよ。

 これから駅に着くそうです。

 迎えに行かれますか?

 宿から君達の荷物も引きあげてくるといい」

「シャルロッテが?!」

「どうしても心配だったんだろう」

 辺境伯爵が面白そうに笑った。


 ルーベルトは待たせていた馬車に乗り、宿を引き払い、シャルロッテとメイドのミア、商会付きの従者を連れて辺境伯爵家に戻った。


 その日は泊めてもらうことになり、次の日、ルーベルトとリアーナとメイドのミアは王都に帰ることになった。


 シャルロッテ達と入れ違いのようにメリメ伯爵夫人とジョンが遊びに来ることになり、エドワードもリアーナも夏の終わりまで涼しい辺境伯爵領で過ごし、辺境伯爵家と伯爵家が王都に帰る時に一緒にという話になった。


 シャルロッテは商会のモーリスという男を従者として連れて来ていた。

 ルーベルトと合流できたので、モーリスはこのまま辺境伯爵領で仕事をするため残ることになった。

 

 夏のシーズンに貴族が家族連れで訪れる地ということで、長く逗留することを考え、子どもの遊び道具や、美しいレース素材の羽織り物など気候や避暑地ならではの品をいくつか用意してきており、それを辺境伯爵家の許可を得てから地元の商店に売り込むことになっている。


「ヒューバート商会が店を出してもいいのでは?」

 辺境伯爵に言われたがシャルロッテは答えた。

「それではこの地にお金が落ちません。

 商会と辺境伯爵家だけが潤うやり方ではなく、発展していける形を取らないと」

 辺境伯爵は頷き「ここは織物や木工が盛んだ。何かここで作れる商品などあれば共同で開発したい」と話した。


 シャルロッテとミアとルーベルトは汽車で3日間かけて帰ることになったが、このミアはベテランのメイドであり、ルーベルトとシャルロッテがふたりで過ごせるように気を遣ってくれた。

 おかげでふたりはこれから先のことをたくさん話すことができたのだった。


 王都に戻ってすぐ、シャルロッテはバイエルン王国から帰ってきたルーベルトの兄夫婦、カイゼンとジュノーに挨拶するためカッシーナ公爵家を訪れた。


 カイゼンも黒髪黒目でルーベルトと似ているが、外交官という職業柄か人当たりが良く会話も上手だった。

 ジュノーはグリース公国の出身だそうで銀髪に緑の瞳の、明るく快活な人だった。


「ルーベルトと話が合うなんて、よくこんな素晴らしい人を見つけたな!」

 カイゼンが言うと「私が見つけたんだよ」とカッシーナ公爵がニコニコと言った。


 シャルロッテはジュノーとお茶を飲みながら会話を楽しみ、グリース公国やバイエルン王国の話を興味深そうに聞いていた。


「シャルロッテはとても聞き上手ね!」

 ジュノーが褒めている。

「ルーベルトなんか、退屈でたまらないという顔をするのよ!」


「ルーベルトは仕事柄いろいろ知っていることも多いからかもしれません。

 私には知らないことばかりでとても楽しいです」


 シャルロッテも本や新聞で知識は得ている方だが、実際の話を聞くとより本物に近い感じで想像できたり、よくわからなかったことが納得できたようだ。

 特に商売関係の話は本などでは得られない貴重な情報だ。

 バイエルン王国の石炭王の話。

 夫人と話をしたところ、ロンディノス王国に興味があるようで話を聞きたがっていたこと。

 グリース公国の今一番勢いがある実業家は謎が多いが、ロンディノス王国出身らしいとか……。


「秋はこちらで過ごしますが、冬にはバスク王国へカイゼンの仕事で参ることが決まりましたの!」

「バスク王国は……、治安や政情は今はどうなのでしょう?」

 シャルロッテが心配そうにたずねる。

「そうね。今はかなり落ち着いてきているそうよ。

 国王陛下と王妃様もかなり自由に行動できるようになったと聞いているから、今度のジェームズ王子のお祝いにもいらっしゃれるかもしれないわ!」

「それは良かった!

 でも、お気をつけて! 何かご入用なものがあれば仰ってくださいね」

「ありがとう。

 そういえば……、エドワードの恋人って、元はシャルロッテのメイドだったんですって?」

「はい、ふたりとも私の大切な友人です」



 夏が終わり、エドワードとリアーナが王都に戻ってきた。

 リアーナはそのまま王都の辺境伯爵家の屋敷で働くことになった。

 ダイアナとマーク、そしてジョンも大喜びし、辺境伯爵家とメリメ伯爵家で一緒に遊ぶことが多くなった。


 シャルロッテもルーベルト、そしてエドワードもどちらの家にも招かれ、楽しい時間を過ごしていた。

 ルーベルトは仕事があるので、そんな時はシャルロッテとエドワードだけだが、エドワードはシャルロッテに以前の無礼をきちんと詫びてくれた。


「あの時は睨みつけたり『ギルロッテ』と悪態をついたりして申し訳なかった。

 今なら、シャルロッテがどういう気持ちで俺にリアのことを伝えようとしていたか、わかる。

 本当に申し訳なかった」

「いいんです。

 でも、あの時はなかなかリアを探し出せないエドワードに怒っていました、私。

 今度はきちんと相談して下さいね。

 エドワードが王籍を抜けるために交渉する場にもぜひお連れ下さい。

 効果的な援護射撃をご用意してますから……」

 シャルロッテが不敵に微笑んだ。

読んで下さりありがとうございます。

最後までどうぞよろしくお願いします。

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