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ギルティなギルロッテ様  作者: 月迎 百
求めるもの
28/34

28 あなたのことを

異世界ですが魔法はなく、何となくイギリスのヴィクトリア時代後期の世界観で書いています。

恋愛&ちょこっとミステリーな話になればいいなと思います。

お付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

「リアは俺のことが嫌い?」

「言えません。

 それはメイドの身では考えても言ってもいけないことだから」

 

 涙を流しながらそう言い切るリアーナに途方に暮れるエドワード。


「リア、あと半年待って。

 本当に俺、身分を捨てるから」

「何で捨てるんですか?!

 やめて下さいよ!!

 それを私のせいにしないで下さい!

 本当に……、エドワード様の邪魔はしたくないんです!」

「邪魔なんて……。

 本当に愛している女性のことを邪魔だなんて思うわけないだろ?!」

「私は……」

「リア、好きだ。愛してる。

 俺が……、リアがいなくちゃダメなんだ。

 俺のためでもそばにはいてくれない?」

「それは……」


 エドワードはため息をつくと「わかった」と言った。


 リアーナがほっとして「わかって下さった……。良かった……」とエドワードの胸を押して離れようとする。

 エドワードがよろける。

 リアーナは慌ててエドワードに抱きつき支えて、ふたりで座りこんだ。

「人を呼んできます」

 立ち上がろうとするリアーナの手を掴むと強引に引っ張って押し倒す。

「エドワード様?」

 リアーナに覆い被さり、見下ろすエドワード。

「最終手段だ。

 リアはそういうの嫌だと思うからしなかったけど……。

 俺のものにする。

 それならメイドとして、文句ないだろ」


 ルーベルトが飛び出してきて、エドワードを後ろから羽交い絞めのようにしてリアーナから引き離す。


「ルーベルト様?!」

「リア、本当にエドはリアのことを愛しているんだよ。

 君を得るためにこんなことをしてしまうくらいにね。

 君の、本当の気持ちを聞かせてやってくれないか?!」

 リアーナは怯えたような表情でエドワードを見た。

 エドワードはルーベルトともみ合いになり、本棚に頭をぶつけ、気を失った。

「エド?!」

「エドワード様!!」




   ☆ ☆ ☆




 エドワードが痛む頭に手をやって呻くと優しい手がその手を止めるように握り、声が聞こえた。

「傷になってますから、触らないで下さい」


「!! リ、リア!」


 リアーナの顔が目の前にあり、エドワードは赤くなる。

「その、さっきは、ごめん。

 その、本気、では、あったんだけど、その、ごめん」

 リアーナはエドワードの手を胸の方へ引き戻すと微笑んだ。


「……私も、あの時、頑固になりすぎてました。

 ごめんなさい」


 リアーナがあの後のことを話してくれた。

 気絶したエドワードの頭に傷ができ、出血。

 リアーナが慌ててハンカチで止血し、ルーベルトが助けを求め……。


 怪我の手当てをされて、ゲストルームに寝かされていて、リアーナがずっと付き添っていたのだ。


「……らしくないことをなさるからですよ」

 リアーナがぽつりと言った。


「リア、君が話を聞いてくれないからだ」

 エドワードは頭にまた手をやろうとし、リアーナの心配そうな視線に気がついて、その手を自分の額に当て、目をつぶると話を続ける。


「はあ、全くその通り。

 リアがいなくなってから……、心配でゆっくり眠れないし、いらいらするし、食欲もなくなるし……。

 やっと、居所を突き止めたら、汽車で3日だよ。

 疲れた……。

 でも、リアにやっと会って話ができると思ったのに、あんなに拒絶されて……。 

 もうどうにでもなれと……、自分の気持ちばかり押しつけた……。

 申し訳ない」

「いえ、私の方こそ。

 お嬢様の手紙で、少し誤解してました。

 お嬢様が教えたんじゃないかと……。

 ルーベルト様から話を聞いて、私が怒っていたのが間違っていたことを知りました……。

 エドワード様は本当に私を探し出して下さったんですね……」

「……ルーベルトがだいぶ手伝ってくれたけどな……」


「ふふっ。それはそうでしょうね!」

 リアーナが笑い、エドワードは眩しそうにその笑顔を見ている。


「笑っているリアが一番好きだ」

「……ありがとうございます。

 私も、笑っているエドワード様が一番好きですよ」

「!! えっ?」


 リアーナは俯くと、震える声で言った。

「だから……、私は……エドワード様のことが好きです。

 これが本心。

 だから、エドワード様に私のせいで何かを失わせることには、なって欲しくなかった」


「失うんじゃないよ。

 元からなかったものなんだよ。

 父は第2王子だった。

 だから、比較的自由に許されて、ミンツ子爵令嬢と結婚して、俺が生まれた。

 第1王子、つまり俺の伯父はまだ結婚してなくてね。

 いろいろ噂がある華やかな人だったらしいけど……。

 バイエルン王国の王女と婚約し先代の王から王位を譲られることが決まって……、急死した」

「本当のことなんですか?」

「ああ、噂通りだ。

 伯父には恋人がいて、心中事件を起こし、亡くなった。

 相手の男爵令嬢は生き残って修道院に行ったとか?

 それで、父が繰り上がったわけだが、もう結婚していたから、一度は辞退したらしい。

 でもバイエルン王国との約束などもあり……、当時のロンディノス王国はあまり政情が安定してなかったらしく……。

 結局、父は母と離婚し、父はバイエルンの王女と結婚し王に即位した。

 俺はまだ6歳で……。

 新しい王と王妃の間に子ができるまでは……という約束で王家に残ったんだ。

 母はミンツ子爵家に戻って……、国内にはいたくなかったんだろうな。

 ちょくちょくグリース公国に行って過ごすことが多くなって、今ではほとんど向こうにいるよ。


 父はなかなか子に恵まれず、俺が13歳の時にジェームズが、やっと生まれて、それからは彼が10歳になるまでという約束で残っていただけなんだ。

 それももうそろそろ約束の期限だ。

 でも、他国との絆を強めたいやからには王室に適齢期の者がいるというのはなかなか便利らしく、俺に王室から抜けさせまいと縁談がいくつか持ち上がってという訳。

 でも、断ってる。

 王室から抜けることは前から決めてたし、今、俺の心にはもうリアがいるからね」


 リアーナは頷いた。

「わかりました……。

 本当に、こんな私で、いいんですか?!

 貴族でもないし、ただのメイドで、しかも……、生意気なところもあるし……」


「そうだな」

 エドワードの言葉にリアーナは笑う。

「ふふ、否定してくれないんだ」

「だってそのままだろ。

 後、けっこう毒舌だよな。

 思っていることもけっこう言っちゃうし、それが生意気ってことか?」


「はい、それだけ私のことをわかってくれていて、望んでくれているなら……。

 大丈夫かな?」

「大丈夫だよ。

 リア。

 これからは俺のそばにいて欲しい。

 離れないで、ずっと一緒にいてくれ」

 

 リアーナは頷いた。

「わかりました。

 エドワード様のそばに私も、いたいです……」

読んで下さりありがとうございます。

わー、評価して下さった方、ありがとうございます!

すごくうれしいです!

今、最終話を書いています。

無事に完結できそうです。

次から最終章になり、6話で完結予定。

後もう少しですがお付き合いよろしくお願いします。

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