2 噂の令息
どうぞよろしくお願いします。
「『ギルティなギルロッテ様』と婚約?!」
エドワードは友人のルーベルトの口から出た言葉に驚いて叫んだ。
エドワードはここではエドワード・ミンツ子爵令息と名乗っている。
ルーベルトは同い年の友人である。
金髪に緑の瞳。なかなかの美男子であるがわざと髪を整えずぼさぼさにしている。
ルーベルトが冷静で常にポーカーフェイスを崩さず、女性に対しても動じない姿や行動を取るため、彼の態度にプライドを傷つけられた令嬢達と、容姿も良く頭もよいルーベルトを嫉妬してその令嬢達の言動に乗り煽った周囲の令息達から『母の胎内に感情を置き忘れてきた男』『冷酷メガネ』と陰口を叩かれているのをよく知っている。
「ああ、父から言われた。
噂により周囲と縁遠くなったふたりだから、お互いに何か通じるものがあるに違いないと」
ルーベルトは淡々と話す。
エドワードはその様子を見て、眉を寄せた。
「ルーは嫌なんだろ?」
「いや、別に……」
「えっ?
あの『ギルロッテ』だぞ!!」
「父が言うには、彼女はそんな子ではないらしい。
私と同じで、周囲が勝手に噂を膨らませているという話だ……」
「うーん、それはあり得るかもしれないが……」
エドワードは考え込んでから、髪を右手でかいた。
「よし、ギ……いや、あだ名で呼ぶのは失礼だな。
シャルロッテ嬢と顔合わせの時、俺を連れて行け!
本当に噂とは違うのか。
本当はどんな令嬢なのか?
俺も一緒に確かめてやる!!」
「……エド、ありがとう!
私ひとりじゃ、心配だったんだ……」
「いいってことよ。
お前はバカ正直で素直で、その感情を隠すためにわざと無表情、ポーカーフェイスを貫き通しているんだもんな。
そんなことは俺とお前の両親ぐらいしか知らないことだろ!
それに、ルー、お前じゃ、女性の気持ちもよくわかんないところがありそうだし……」
「そうなんだよ!
私は、女性を前にすると、本当にどうしていいかわからない……」
「だから、戸惑っているだけなのに、無表情で拒絶しているって思われるんだよな……」
エドワードはため息をついた。
「俺はそんなお前の不器用さが、好きだけどな」
「で、早速なんだが……。今日、ヒュバート伯爵がうちに来る」
「えっ? もう婚約者殿と顔合わせか?!」
「いや、まだ正式に婚約はしていない……。
それに今日、伯爵と来るのは、彼女の専属メイドをしている幼馴染……らしい」
「? なんで? 幼馴染のメイド?」
ルーベルトは困ったような表情で話を続ける。
「そのリアーナというメイドが……、もうメイドではなくて友人と考えた方がいいな。
シャルロッテと大変親しく、彼女が納得しないと話が進まないそうなんだ……。
伯爵が彼女に話をしたところ、自分が知らないものを薦めることはできない! とこう言われたそうで……」
「へえ、面白いな。
確かにそうだな。
自分の知らないものを大切な友人や主人に薦めることはできないか……」
エドワードは真剣な顔で考えながら言った。
「そうだよな。
それで、先にそのリアーナと私が会ってみることになったわけだ……。
どうしたらいい?」
「どうしたらって。
シャルロッテと婚約したいのか?」
「うう、わからない」
「……いやなら、いつものように無表情の仮面を被ればいいし、もし先に進みたい気持ちがあるなら……、本当のルーの姿をそのメイドに見せるしかないだろうな」
「そうだよな……。本当の姿か……。
わかった。やってみる」
「ま、俺も同席するから、無理すんな」
「ありがとう、エド!!」
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