19 ローエングリンの思惑
異世界ですが魔法はなく、何となくイギリスのヴィクトリア時代後期の世界観で書いています。
恋愛&ちょこっとミステリーな話になればいいなと思います。
お付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
カッシーナ公爵邸に着くとすぐに客間に通され、挨拶や紹介もそこそこにすぐに話が始まった。
リアーナだけはドアの近くの壁際に立って様子を見ている。
エドワードも立ち上がり、リアーナのそばに行く。
「ローエングリンの話は聞いた。
婚約の意思が固まった直後の申し込みだったと聞いている。
なら、こちらは気にせず婚約を進めよう。
ローエングリンには両家連名で『申し訳ないが、もう正式に婚約しました』と返事をする」
ルーベルトとシャルロッテがカッシーナ公爵の話を聞いて、顔を見合わせ頷いた。
次男であるルーベルトがヒューバート伯爵家に入る形での結婚を前提とした婚約であることのみ約束し、結婚時の細かい約束や条件はこれからということにし、ふたりの父親は慌てて王城へ届けを出しに行ってしまった。
「ルーベルトのお父様ってかなり豪快な方なのね……」
シャルロッテの言葉にルーベルトは苦笑いする。
「ああ、性格は……似てないかもね」
これからのことを客間に残った4人で話す。
シャルロッテにはルーベルトができるだけ付き添うが、仕事もあるのでその時はエドワードが動くということを確認する。
リアーナが不思議そうな表情で言った。
「前から不思議だったんですけど……、ルーベルト様は治安警備局のお仕事をされていて、エドワード様は何をされているんですか? そんなに時間に自由があるお仕事って?」
エドワードは一瞬言葉に詰まったようにルーベルトを見てから、話し出した。
「俺は……、国の外交に関わる仕事をしてるんだ。
他国の使節団が来るとか……、予定がはっきりしているから、今は忙しくない。
まあ、治安警備局とも関係があるから、何かあったらルーベルトとすぐ連携できるから大丈夫」
「外交……、それは大変難しそうなお仕事ですね」
リアーナが頷いた。
☆ ☆ ☆
ローエングリン家ではロバートが苦虫を嚙み潰したような顔をして父の部屋から出てきた。
正式にルーベルトとシャルロッテの婚約が決まったことにより、婚約申し入れは両家より丁重に謝られつつ断られたことを知らされたのだ。
長男のトーマスがそんなロバートの顔を見て言った。
「だから、3年前にアンドリューじゃなくて最初からロバートが申し入れていたら話が違っていたろうに……」
「兄様、あの時はまだ格下の伯爵家に入るなんて決心できなかったから……」
「ああ、うちの弟と妹達の行く末がここまで決まらないのは……、どういうことだろうな?
変な噂を流したりして、敵を作るからだよ」
「私はそんなことをしていない!」
「……止めなければ、流したということだよ、ロバート」
トーマスは今度のお茶会の招待客リストを眺めて言った。
「まあ、ヒューバート伯爵令嬢とカッシーナ公爵令息に婚約のお祝いを伝える場になりそうだな。
他に……、まあ子爵家や男爵家の令嬢も来るし、いざとなれば身内の子爵家の入り婿になる手もまだ残っているしな」
ロバートはトーマスの見ているリストを奪い取るとざっと眺める。
「ミンツ子爵令息も呼ぶのですね」
「ああ、彼の立場は微妙だからな。
どちらに転んでもいいようにという配慮だろう」
ロバートの不思議そうな顔を見てトーマスが笑う。
「なんだ、知らないのか?
彼は現在、仮だが王位継承順位1位の人物だぞ。
一度辞退したんだが、王の子ども達がまだ小さいので、王に何かあった場合、その子達が大きくなるまでという約束で繋ぎの王子として籍だけはまだ王室に残している」
「えっ?」
「今の王が次男だったのに、何故、王になったのかを深掘りすれば推察できることだぞ。
まあ、父上の年齢の人でも、王と今の王妃の間にジェームズ王子とキャサリン王女が生まれてから、前王子妃であった子爵令嬢との子であるエドワード王子の存在をすっかり失念している人もいるがな」
「それではエドワードは……?」
「今は母方の子爵家を名乗っているが、この先、王にも、または子爵以上の爵位を授かる可能性もあるな」
「何で、そんな人物をそのまま放って……」
「ミンツ子爵家はカッシーナ公爵と親戚関係にあり、こちらが近づこうとすると警戒されるからな」
「でも、エミリアやロザリーとちょうど釣り合ういい年齢ではありませんか?」
「親友のカッシーナ公爵令息がお前やエミリア達に攻撃されているのに?
変なことは考えるな。
ヒューバートのこともカッシーナのことも余裕を持って静観しろ。
ミンツにも手は出すなよ。
エミリア達にも言っておけ。
これ以上、父と兄の邪魔はするなと!」
トーマスは面倒くさそうに言い捨てると客間から出て行く。
ロバートはリストを見ながら考え、そしてニヤリと笑った。
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