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17 呪いが解けて

異世界ですが魔法はなく、何となくイギリスのヴィクトリア時代後期の世界観で書いています。

恋愛&ちょこっとミステリーな話になればいいなと思います。

お付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

「今日、婚約、決めるのか?

 それにしてもその花束、ずいぶん派手じゃないか?」


 エドワードがヒューバード伯爵家の屋敷に到着した車の中で、ルーベルトが持つ花束を見ながら言った。


「ああ、この前のお茶会の時は頷いてくれたけれど、どさくさ紛れみたいになってしまったし。

 今日、しっかり伝えて、申し込む!!」


 気合いが入っているルーベルト。


 いつものように玄関エントランスに通され、メイド服のリアーナが笑顔で迎えてくれる。


「こちらです。

 お嬢様は客間でお待ちですよ! 

 エドワード様はこちらに!」


 庭への廊下を示されて怪訝そうなエドワード。

「え、なんで?」


「お嬢様からの伝言です。

 エドワード様は先に庭の席で待っていてくださいって!」


 リアーナが庭の方へとエドワードを連れて行く。

 ルーベルトは大きく深呼吸して客間のドアをノックし開けた。


「シャルロッテ!」

 いつものように呼びかけて、固まる。


 視線の先には鮮やかな青いドレスを着て恥ずかしそうに立っているシャルロッテがいた。


「あの……、青が好きだと仰ってくれたから……、その、どう……でしょうか……」

 いつもの余裕たっぷりの表情ではなく、恥ずかしそうに頬を赤らめ、小さな声のシャルロッテ。


「ああ! とても素敵です!」

 ルーベルトはシャルロッテに近づいた。

「私のために、青いドレスを?」


 頷くシャルロッテ。


「抱きしめても?」

「えっ、それはちょっと……、あの、そこまでは……」


 ルーベルトは残念そうにため息をついて花束を差し出す。

「シャルロッテ、どうか私と、正式に婚約して欲しい!!」


 シャルロッテは頷いて、小さな声で「はい……」と言って差し出されたカラフルな花束を受け取った。


 いろいろな色の花が集められたような賑やかでカラフルな花束……。


 シャルロッテはルーベルトの花束に込められた自分への気持ちに気がついたようで、うれしそうにその花束を優しく抱きしめた。


「やった!!」

 ルーベルトが大きな声で叫び、シャルロッテはびくっとした。


 自然にふたりの目が合い、お互いににっこりする。



 庭ではエドワードが心配そうにそわそわしていた。


「大丈夫かな、ルーベルト」

「大丈夫、きっと呪いは解けるわ」

 リアーナはうれしそうに微笑んだ。


 その時、ヒューバート伯爵が慌てたように庭へやってきて「リア! シャルロッテは?」と言った。


「お嬢様は客間でルーベルト様とお話しされています」

「わかった!」


 伯爵の後をエドワードとリアーナは不安気に見送ったが、エドワードが「追いかけよう」と言って客間に向かって歩き出す。


 リアーナもそれに続いた。


「ローエングリン家が?!」

 ルーベルトの大きな声が客間のドア越しに聞こえた。


 慌てたエドワードがノックをせずにドアを開けてしまい、シャルロッテの姿に目を留めて驚いた。


 シャルロッテがルーベルトの影に隠れる。

「えっ? シャルロッテがブラックドレスじゃない?!」


 リアーナがエドワードを背後から客間のドアを閉めるように促して引っ張る。


「いいわ、リア!

 エドワード様もリアも入って!」


 シャルロッテの声が響き、ふたりは客間におずおずと入ってきた。


「ふたりにも聞いて欲しいから……」

 シャルロッテがルーベルトと目を合わせて頷いた。

「ああ、ふたりにも聞いて欲しい……」

 ルーベルトの言葉にリアーナは期待に満ちた表情をシャルロッテに向ける。


「今、シャルロッテに婚約を正式に申し込んで、了承してもらった、んだが……」

 ルーベルトの言葉を伯爵が申し訳なさそうに引き取る。


「今日、ローエングリン公爵家からシャルロッテに婚約の申し込みがあって……。 

 実は前に三男のアンドリュー様でという申し込みはあったんだが、シャルロッテには伝えず断っていた」


 エドワードが苦笑する。

「アンドリューじゃな」


 伯爵も頷き言葉を続けた。

「それから、シャルロッテの噂が激しくなって……。

 たぶん気分を害したローエングリン家の差し金だとは思っていたが、商売柄、貴族社会で揉めるようなこともできなくてな。

 シャルロッテ、それは父の判断が悪かった、申し訳ない……。

 その後、カッシーナ公爵と親しくなり、御子息のルーベルトならシャルロッテを任せられると思っていたんだが……。

 すまん、またローエングリンから横槍が入ってきた」


「……ロバートですか?」

 エドワードがうんざりしたように言う。


「ああ、今度は次男のロバートではどうかと申し込みが……」

「どこまでルーベルトとシャルロッテをバカにしてくるんだ!

 ロバートがルーと張り合ってるだけ! だよな……」

 エドワードが怒っている。


「……ここで婚約発表を強行的に行うと、向こうがどう出てくるかわからない。

 私はカッシーナ公爵とも相談して、どのように対応するか考えるから、正式な婚約発表はもう少し待ってくれないか? 頼む!!」


 ヒューバート伯爵の弱り切った表情に、ルーベルトは頷いた。


「……はい、シャルロッテはもう承諾してくれているので。

 ふたりの気持ちは何があっても変わりません。

 障害が無くなるまで待つことは、できるよね?」

 シャルロッテにやさしく確認するルーベルト。


「ええ、私はルーベルトと婚約したい。

 その気持ちは変わりません」

 シャルロッテのはっきりとした言葉にリアーナはうれしそうにガッツポーズをして見せる。


 そんなリアーナを見て微笑むエドワード。


「ルーベルト、公爵は在宅だろうか?」

「午後には帰宅すると聞いています」

「わかった。これから伺ってみよう。

 ルーベルト、エドワード、君達は動くなよ」


「それは?

 今日のこと?

 これからのこと?」

 エドワードが不敵に笑いながら聞いた。


「どちらもだ! いいな!」

 ヒューバート伯爵はそう言い置いて客間を出て行った。


 残された4人は顔を見合わせて、笑った。


「さあ、庭で作戦会議しよう!」

 エドワードがニヤリと笑いながら言い、ルーベルトも頷いた。


「ローエングリン……、ぎゃふんと言わせてやって下さい!!」


 リアーナの言葉にシャルロッテはびっくりする。


「リア?」

「だって、腹が立ちませんか!!

 お嬢様の噂も、ルーベルト様の噂もあのローエングリンが言い出しですよ!」


「そうか、そうだよな!」

 エドワードが気がついたように言った。


 ルーベルトが困った表情でエドワードとリアーナに言い聞かせる。

「私はそれほど気にしていない。

 むしろ、あの噂のおかげでこうやってシャルロッテと知り合い、親しくなれたようなものだし……」


「いや、あいつら、何して来るかわからないからな!

 せめて、予防線を張るくらいはしておいた方がいい!!」

「ええ、その通りです!!」

 エドワードとリアーナが怪気炎を上げている。


 ルーベルトとシャルロッテは困ったように微笑み合いながら、そっと手を握り合い、庭へと移動を始めた。

書いてて、シャルロッテ、かわいい……と思いました。

これからもどうぞよろしくお願いします。


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