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13 お茶会の誘い

ここから第3章です。

どうぞよろしくお願いします。

 シャルロッテ・ヒューバート伯爵令嬢はお茶会の出席について思いを巡らしていた。


 王立植物園の池で、メイドのリアーナがバスク王国の6歳の王子を救った縁で知り合ったメリメ伯爵家のお茶会に招待されたのだ。


 リアーナにも正式に招待状が届いたこともあり、父であるヒューバート伯爵がふたりを着飾らせて参加させれば、ヒューバート商会のドレスのいい宣伝になるだろうと考えていることも、シャルロッテにはよくわかっている。


 メリメ伯爵家は外交に強い家門だ。

 国内外にかなり顔が広く、様々な人脈を持っている。

 たぶん、シャルロッテが会いたくない人達も参加することが十分考えられる。


 シャルロッテはかわいらしい淡いピンクのワンピースを着て、庭のテラスでじっと考え込んでいる。


「お嬢様、お茶のおかわりはいかがですか?」

 リアーナの声に我に返る。

「あ、リア。頂くわ」


 リアーナがてきぱきと用意し、こぽこぽというリズミカルな茶を注ぐ音が心地良く流れる。


「ありがとう」

 カップを運んでくれたリアを見上げてお礼を伝えてから、優雅に手に取る。


「うん、おいしい」

「……お嬢様、お茶会のことでお悩みですか?」

 リアーナが少し心配そうな表情をしている。


「ええ、招待を受けようとは思っているけれど、少しね。

 考えてしまうこともあって……。

 ルーベルトと……、エドワード様も招待されているのでしょう?」

「私に招待状が来ているということは、エドワード様にも届いていると思います。

 ……ローエングリン公爵家のことですか?

 お悩みどころは……」

「まあね。そんなところ……」

「もう気にされない方が……」

「うん、そうなんだけど、ね」

「ルーベルト様も……」


「うん、ルーベルト?」


「ルーベルト様の噂も、出所でどころはローエングリンだそうです」

「そうなの?!」

 カップを両手に抱えるように持ち、目を丸くするシャルロッテを見て、リアーナが吹き出す。


「お嬢様が慌てるなんて、ふふふっ。

 エドワード様にお聞きしたんで、確かな話ですよ」


 シャルロッテはカップをソーサーの上に戻し「詳しいことを聞かせてちょうだい」と微笑んだ。


 リアーナからローエングリン公爵家の姉妹が、数年前、カッシーナ公爵家の次男であるルーベルトを取り込もうとして相手にされず、同い年の次男が優秀なルーベルトを嫌い、貶めるような噂をその取り巻き達が流したことを聞いたシャルロッテは呻いた。


「それは……、ひどいわね」

「はい……。

 思い通りにならないからといって、手のひらを返すように攻撃するとは……。

 ……おふたりは同じローエングリン家との因縁があったのですね」

「まあ、私の方は最初から嫌がらせありきだったけどね……」

「でも、お嬢様も似たような感じだと思います。

 結局、相手にしなかったから、いろいろな噂をでっちあげられたわけですし……」


 シャルロッテは顔をしかめてから、うっすらと笑った。


「そうね。『母の胎内に感情を置き忘れてきた男』とどっちがひどいかしら?」

「『冷酷メガネ』と『ブラックウィドー』(黒い未亡人)もどっちもどっちですかね?」


 ふたりで顔を見合わせ吹き出す。


 リアーナはいたわるような表情を浮かべる。

「でも、女性同士の方が親の力とか相性とか………、自分自身がということも特に理由もなく、そんなものかもしれません」


「……リアもそんなことを言うようになったのね。

 誰の考え?」

「えっ、自分の考えですよ。

 誰のとか、何ですか?」


 リアーナが不思議そうな表情でシャルロッテを見る。

 シャルロッテは微笑んで言った。


「そうね。ごめん。

 考え過ぎた」


 気持ちいい風が爽やかに吹き抜ける。


 リアーナが風の行方を目で追い、空を見上げてからぽつりと言った。


「……いつ、ルーベルト様に黒い服以外のお姿をお見せするのですか?」


「……そうね。

 まだ、もう少しかな」


 リアーナはシャルロッテに視線を戻し、微笑んだ。


「早くその日が来るのを、楽しみにしています……」

「ありがとう」

読んで下さりありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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