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パーティ結成

 周りからどんなに嫌われようと、仕事はしなければならない。

 冒険者ギルドで仕事の依頼を聞き、現場に向かう。

 いつものことだが、今回もマスタは一人だ。

 今回ギルドに出されていた依頼は、街の外にある森に出現したダンジョンを消すこと。

 ダンジョンとはたまにどこからともなく出現する迷宮だ。詳細は不明だが、どうやら、生き物が持つ魔力に反応して生まれるらしい。

 中では魔物が随時生み出され、かつ、放っておくとどんどん規模が拡大していくという危険な存在である。

 但し、最深部にあるそのダンジョンの核を外に持ち出せば消滅する。

 核の形状は様々で、剣や杖の形をしている場合もあるが、珠や箱の場合もある。売るとかなり高額だ。

 要するに今回の依頼は、ダンジョンを放置するとずっと存在するので、増えすぎる前に消して欲しい、ということである。

 このようにダンジョンはまるで雑草のような扱いを受けているが、難易度は草むしりより当然高い。

 マスタはダンジョンを目指して森の中を進む。

 生き物の魔力から生まれるだけあって、ダンジョンは人里近くにも出来る。が、今回は野生動物の魔力から生まれたのか、街からやや離れた場所にあるという。

 ダンジョンに入る前に体力を落とすわけにはいかないので、マスタは途中で休憩することにした。近くに倒木があったのでそれに腰かける。

 仕事の一環とはいえ、街の外に出ると少しは気が紛れる。

 マスタとて、鋼で出来ているわけではない。人から嫌われて傷つかないわけではないのだ。

 こめかみを押さえて俯いていると、

「大丈夫?」

 頭の少し上から声がかかった。

 顔を上げると、いつの間にか少女が二人立っていた。

 一人は珍しいピンク色のショートカット。年は十八歳くらいか。動きやすそうな服から見える体の線はかなりスタイルが良い、と言うとセクハラになるだろうか。

 もう一人は十五、六歳のほっそりとした少女で、黒い三つ編みを花の形をした髪留めでまとめている。華やかな印象のあるピンク髪の少女よりおとなしそうに見えるが、妖精のように可愛らしい。

 タイプは違うが、どちらも綺麗な娘だ。

「日射病にでもなった?」

 ピンク髪の方が聞いてくる。黒髪の方も顔を覗き込んできた。

 二人ともマスタを心配してくれているらしい。久しぶりの人からの親切が沁みる。

「大丈夫。少し休んでただけだ」

 マスタは安心させるように立ち上がった。

「そう。良かった」

 二人はにこりと笑う。

「心配をかけて悪かった。俺は···」

「知ってる。有名だもの

 マスタさんよね」

 ピンク髪の方があっさりそう言った。

 マスタは心が重くなる。マスタを知っているということは街の人間だということで、当然あの噂も聞いているだろう。

 しかし、二人のマスタを見る目に、侮蔑や嫌悪の感情は見られない。

 マスタは思わず尋ねた。

「俺の噂、聞いてないのか?」

「ああ、あれね。知ってるけど

 噂は噂だしね」

 ピンク髪がさらっと言う。黒髪の方もにこにこしているだけで、気にしている様子は全くない。

「あたしはセキ」

 と、ピンク髪。

「ユサだよ」

 こちらは黒髪。

「二人とも魔道士

 ギルドの依頼を受けて、この先のダンジョンに行くつもり」

 ダンジョン関連の依頼は、引き受けた者の中から先に依頼を完遂した者が報酬を受けとる。要は早い者勝ちである。

「マスタも、この先のダンジョンに行く気?」

「ああ」

「じゃ、一緒に行く?」

 意外な申し出をしてくる。先述の通り、ダンジョンの依頼は早いもの勝ちであり、それを巡って冒険者同士で足の引っ張り合いが起こることも珍しくない。

「でも聞いているだろう?俺は拷問士で···」

「だから何!?あたしだって魅了士だけど、誰彼構わず魅了なんてしないわよ!!」

 セキが突然怒り出した。

 魅了士。文字通り、魅了魔法に特化した魔道士のことである。

 ここまで過剰に反応するということは、彼女もマスタと同じように偏見に苦しんでいるのかもしれない。

 セキはぜえぜえと呼吸を落ち着かせてから、

「それに、マスタ、呼び捨てで良い?良いわよね。マスタってかなりベテランでしょ。一緒だとかなり心強いし、駆け出しの身としては勉強したいわけよ」

 そういう言い方をするということは、セキはあまり報酬や面子にこだわりはないらしい。

「ユサも良いわよね?」

「セキが良いなら良いよ~」

 そんなわけで、なし崩しに三人パーティになった。


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