表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鮮血のダンジョンマスター──彼が史上最悪の魔王と号されるに至るまで──  作者: 想いの力のその先へ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/119

ダンジョンの利益のために

 ジャネットがダンジョンのことについて教えてくれる、というのは少し気になるが、今は援軍について優先しよう。

 先ほども言ったが、正味こちらの戦力を消耗させたくないのは事実。だからといって送らない、という選択肢もとれない。まぁ、それ以前に人間とモンスター。種族も違うし、なにより体格が違う以上まともな連携もとれないのは目に見えている。

 そう考えると歩兵扱いの召喚ゴブリンを出すのは論外だろう。と、なると候補は一応遠距離攻撃ができるゴブリンアーチャー、斥候役ができるゴブリンライダーが候補になる。

 あるいは、そうだな……。


「新しく召喚するのもあり、か? いや、なしだな」


 自身で思い付いていて即座に否定する。そもそも、召喚モンスターがこちらに従順なのは間違いないがルードの指揮下で上手く統制できるか、と問われると否、と答えるしかない。

 いくらルードが賢いとはいえ、もとは半野生のゴブリンの内の一体に過ぎなかった。それが色々と考えここまで出世したのも驚嘆すべきだが、さすがにそれ以上を求めるのは酷だろう。……まぁ、いずれは成し遂げてもらわないといけないが。いずれは、な。

 だが、それは今じゃない。なによりここは命の賭け処じゃない。無理する必要はないだろう。


「主さま。新しく召喚するって、あたくしだけじゃ不満?」


 後ろから囁かれる甘い声。そうだった、何だかんだで近くにまだジャネットがいるんだったな。

 しかし、こいつ。先ほどのことと言い、なにかこちらをからかうとこを優先しているような気がする。今の声にも不安など感じてないような音色だったし。


「まさか。ジャネットに不満があるわけじゃないよ。今後も頼る機会は多くあるだろうし、場合によっては代理を勤めてもらうこともあるだろう」

「…………本気?」


 ん? なぜかジャネットのやつ、ビックリしているようだ。なにかおかしなことでも言っただろうか?

 まぁ、良い。今は考えをまとめることの方が重要だ。

 まず、アレク皇女率いる公国解放軍。これの陣容は輜重隊を除いて歩兵系統で統一され、騎馬隊がいなかった。これはもともと公国での戦闘はほぼ野戦はなく攻城戦、籠城戦を想定しているためだと思う。

 そもそも騎馬とは馬自身の機動力、突撃の突破力を主軸としている。が、それは障害物などがある戦場とは相性が悪いことを意味する。そうでなければ、あちらの世界の史実で馬防柵などの防御陣地は作られなかっただろう。そして、それらの有用性は歴史が保証している。

 すなわち、それらの陣地よりはるかに多い障害物がある都市内部や、城壁がもともと文字通り壁になっている攻城戦では騎兵の真価を発揮できない。

 だからアレク皇女はあえて兵科を統一してきたのだろう。それにいざとなったら姫騎士という特記戦力、リーゼロッテを前面に押し出す、という鬼札がある。

 以前聞いた話では、あれは平地でこそ真の力を発揮できる、と言っていた。つまり、帝国に騎兵がいないからと野戦を仕掛けたら、最悪姫騎士に蹂躙されるわけだ。


 とどのつまり、アレク皇女は兵科の統一をしたことで攻城戦特化にしたのと同時に、己自身を含めて解放軍を巨大な囮に仕立て上げた、とも言える。ひどい詐欺もあったものだ。

 王国の援軍がどれ程入ったかは定かではないが、下手に籠城すれば攻城特化の軍に磨り潰され、野戦に持ち込もうものなら姫騎士に蹂躙される。敵を知り己を知れば、とは言うがそれを完全に実践した形だ。


 もちろん、アレク皇女が軍勢を準備したのは王国増援が入る前なのだから完璧だとは言えないだろう。しかし、それでも彼女の戦略が有用なのは間違いない。

 なのでこちらとしてはそれを補う形で兵力を派遣するべきだ。と、するならばやはり斥候、機動力のあるゴブリンライダーだろう。

 まぁ、それだけでも十分だろうが、せっかくならばこちらも利になる形にしたい。かといって、戦力として貢献するのは不可能である以上、戦訓を得たいといったところか。早い話がルードに指揮の経験をつんでもらいたい。

 そう考えると派遣する戦力はゴブリンアーチャー40とライダーを20。早い話が全軍と、それとは別に側周りとして召喚ゴブリンを30。こちらは言い方は悪いがルードの指揮の他に盾役。肉壁としてルードを生き残らせるために随伴させる。

 結果的に言えば、総勢90名と現状の軍勢の約3割を随伴させることになるか。それにライダーたちを斥候とするならその分の指揮官も用意しなければならないので、マクスかベルク。どちらかを分隊長として派遣しなければならない。

 もしも戦闘に巻き込まれて壊滅しようものなら大損害どころの話ではないな。それでも派遣しなければならない以上、こちらの利益を最大限追求しなければやってられない。


 とりあえずはこの方向で話を進めるとしよう。

 最低限、考えをまとめた俺は指示を伝えるため、ルードを部屋に呼び出すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ