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鮮血のダンジョンマスター──彼が史上最悪の魔王と号されるに至るまで──  作者: 想いの力のその先へ


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奇襲

 リィナとルゥの逃避行を()()()()()()()で確認して、ホッと一息つく。


「ふぅ、なんとか問題なく進んだようだな……」


 なぜ、俺がそんな確認をできるのか。それはあの姉妹が逃げ回っていた森がダンジョンの一部だったからだ。今回、俺が二人へ頼んだのは、囮として兵士たちをダンジョンへ誘き出すこと。理由はいくつかある。


 1つは今のように俺が、というよりこちらが敵の場所を完全に把握できるようするため。敵の場所を把握できる、というのはかなりのアドバンテージとなる。

 1つはダンジョン内で仕留めることでDPを確保するため。今後のダンジョン拡張、整備のことを考えればDPはいくらあっても困らない。むしろほしいのが本音だ。

 そして、もう1つ。これが本命だが……。


「ルード、聞こえるな? ()()()()()()()()、囮が網に掛かったぞ」

『へい、よく聞こえやす! それじゃあ、あっしらは()()()()()――』

「あぁ、頼む」


 俺と配下の間で通信ができる、ということ。すなわち、迅速に情報の伝達ができる。ということであり、それだけでこちらからすればありがたい話だ。なにせ、敵はこちらについて分からないのに、こちら側からすれば筒抜け。敵からすればクソゲーもかくや、という状態だろう。

 一応、場合によってはやつらを開拓村へ誘き寄せる手も打っていたが……。


「これなら必要ない、か……?」


 どうにも兵士たちはリィナたちの尻を追いかけるのに夢中で、そこまで士気も高くない。あるいは本来指示された命令に消極的なのかもしれない。

 桶狭間の伝承よろしく、村長やファラに酒などの献上品を預け、やつらに渡し足止め、ならびに酒盛りでもさせて油断させよう、と思っていたのだが……。


「それに、やつらの鎧。小綺麗に感じる、新兵なようだな」


 もちろん、経験のある兵士が鎧を新調した。という可能性もある。しかし、それにしては兵士たちの空気が弛緩しすぎだ。部隊長らしき男が指揮を取っているが、完全な手綱を握り切れていない。

 どこかの小部隊の暴走か、もしくは以前のルードよろしく功を逸ったか。まぁ、なんにしても……。


「こちらからすれば、好都合か」


 今頃、セラがエィル側と交渉し援軍を引き出している頃合いだろう。ならば、こちらがやることは精々やつらを引っ掻き回し、混乱させること。そのためにも――。


「精々上手くやれよ。ルード」


 賽は投げられた、というやつだ。ルードならきっと、上手くやってくれるだろう。そう信じて俺は監視を続けるのだった。







 マスターから連絡を受けた場所にあっしらは急行しやす。そこには、確かに王国の兵士たちらしき姿。そして、それに追われているエルフの姉妹方の姿も見えやした。

 ですが、姉妹方は既にマスターが召喚したモンスター。トロイホースへ跨がり、いつでも逃げられる体勢。

 対して、王国兵どもはまだ諦めきれないご様子。


「……チャンス! お前ら、いくぜっ!」


 あっしは、()へ向かって語りかけやした。

 あっしの声が聞こえた王国兵どもはこちらへ振り返りやすが……。


「な、なんだ――。がっ……!」

「うぎっ……! 矢、矢がどこか――あがぁ!」


 突如として降り注いだ矢に、ドス、ドス、とその身を貫かれやす。突然の奇襲でやっこさん、完全に混乱してやすね。どこから矢を射たれているかすら分かってない様子。

 それも仕方ないのかもしれやせん。人間たちからすると、予想外の位置から射たれてるんでやすから。

 その、予想外の位置、とは――。


 ――ガサガサ。


 木の上から聞こえた、葉っぱが擦れあう音。

 そう、今回。ゴブリンアーチャーたちは木の上から、しかも身体に木の葉を纏わせ、擬態してから放ってやす。

 マスターが言ってたカモフラージュ。そしてゲリラ戦、というやつです。これも、ゴブリンが小柄で身軽だからこそできる手段でやした。

 まぁ、もっとも。普通のゴブリンではこれをやれるほど、知能があるわけではなんでやすが……。

 そこら辺りは、マスターがあっしらに知恵をつけさせてくれて感謝。と、いったところでしょうか。

 もしも、あっしらだけでしたらここまで抵抗できなかったでしょうから。

 それはともかく。このまま、混乱が解けるまで釣瓶打ち。というのも悪かぁないですが……。


「このまま手柄を目の前に指を咥える、というのも芸がない。あっしらも行きますよ! マクス! ベルク! 続けぇ!」

「「おうっ!」」


 あっしはゴブリンライダーの部下。マクスとベルクへ突撃の指示を出しやす。

 ちなみに、マクスは作戦前にマスターへ報告に来た愛妻家のゴブリンライダー。ベルクは3人目、最後のゴブリンライダーの部下になりやす。

 まぁ、そんなこんなで敵に突撃したあっしら3人。もちろん、あっしらだけではたかが知れてるので無理はしやせん。というより、特にマクス。あいつに無理させて死なせると奥方に恨まれやすから。


「首筋だけを狙え! 無理をするな!」


 そう指示を出しながらザシュ、と首筋を切り裂きます。それだけで人間たちはごぼごぼ、と血の泡を吐いて動かなくなりやす。そのまま、敵の隊列を切り抜け反転。今一度、敵へ突入しよう。と考えてやしたが……。

 とある予想外の光景に、数瞬。頭の中が真っ白になりやす。その光景とは……。


「行くよ、シュンライ号!」


 なぜか王国兵へ突撃をかまそうとしているエルフ姉妹の妹。ルゥ殿の姿でやした。

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