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鮮血のダンジョンマスター──彼が史上最悪の魔王と号されるに至るまで──  作者: 想いの力のその先へ


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明日に至る一歩目を

 さて、リーゼロッテたちに約束した手前、さっさと行動に移さなければ。村長との会談を終えた俺は早速指示を出す。


「さて、ではルード」

「へいっ!」

「お前は先ほども言ったようにゴブリン部隊を率いて村の防衛だ。やれるな?」

「もちろん、任せてくだせぇ!」

「あぁ、任せる。ちゃんと女どもも守ってやれよ?」


 俺の指摘にルードの女たち、ファラとセラが頬を赤く染める。異種族とはいえ、愛しい男が己を守ろうというのだ。まさしく王子さまに守られるお姫さまの気分だろう。

 俺の揶揄いに女たちとは別の意味で顔を赤くするルード。だが、偶然とはいえお前が撒いた種なんだ。自らで刈り取ってみせろよ。


「そして次にセラ」

「はぁい」


 ぽわぽわとした返事をしてくる彼女。なんとなく気が削がれてしまうが……。まぁ、いい。今はそれよりも――。


「貴様には先ほども言ったように、城塞都市へ開拓村の村長の名代として交渉に向かって欲しい」

「ふふっ、わかりました。……それで、着地点は?」


 どことなくにやり、と黒い笑みを浮かべ、問いかけてくる。……可愛げのないことだ。分かっていて、敢えてこちらへ問いかけてきている。


「最悪、交渉失敗しても良い。こちらが交渉した、という事実。そして目眩ましが目的だからな」

「うふふっ、承知しました。でも――」


 同じくにやり、と笑いながらも先ほどとは違い、今度は好戦的な笑み。何を言ってくるのやら。


「――別に交渉を成功させても、何も問題ないのでしょう?」

「……あぁ、そちらに関しては問題ない。成功させられるなら、成功させてしまえ」


 意外と自信家なのか、それとも僧侶として独自の交渉網を持っているのか。ともかく、交渉が成功するならそれに越したことはない。

 まぁ、どちらにせよ彼女がこちらに協力的なのは良いことだ。それが例え愛しい人――というよりもゴブリンのルードに良いところをみせるためだったとしても、な。


「そしてファラ」

「ふぁ……? ひゃ、はいっ!」


 先ほど子供を産むのを優先しろ、と言ったからな。まさか呼ばれると思っていなかったのだろうな。素っ頓狂な声をあげている。……ちょっと悪いことしたか?


「貴様はその村で暮らしていたのだろう? ならば、村人とゴブリンたちとの橋渡しを頼む。……まぁ、必要ないかもしれないが」

「え、えっと……」


 まぁ、これがファラにとって酷な願いだというのは分かる。なにせ、一時期そのゴブリンたちに嬲られていたのだから。だが、必要なことでもある。


「村人とゴブリンの橋渡しが無事終われば、お前のため……。いや、子供たちのためになる。この意味、分かるな?」

「……っ、はいっ!」


 そう、ファラの子供たちもまたゴブリン。うまくすればこの村で一緒に暮らせる、ということなのだから。そう教えてやれば、ファラもやる気を出さざるを得ない。

 それに、それは言い方を変えればこの村でルードと愛し合うことができる。という意味にもなる。俄然、やる気が出るだろうよ。


 ……そのとなりで寒気を感じたのか、ルードはぶるり、と身体を震わせていたが。さっきも言ったように、お前が撒いた種なんだ。ちゃんと刈り取ってみせろよ。まぁ、刈り取るというよりも、またさらに胤を吐き出すのが仕事になるだろうが……。

 それにこいつ、人徳か知らないが何かしらの時、また女をひっかけそうな気がするんだよなぁ。そんなことが起きる前にルードのやつ、他のゴブリンを教育できると良いんだが。実際、こいつの部下につけたゴブリンライダーたち。人語を話せるようになったと同時に、ゴブリンとは思えないほど紳士的になったからな。

 同じようにルードの指揮下に入ったゴブリンたちも成長してくれれば、そう言った意味でも負担を軽減してくれるかもしれないし、なにより――。


「異種族交流、という意味でも期待できるんだがな」

「……マスター?」


 俺の呟きに、ルードは眉をひそめて怪訝そうな顔をする。別に悪し様に言ったわけじゃないんだがなぁ。


「いや、なに。ルード、お前が今後部下をどんな風に育てるか。それが楽しみになっただけだ」

「へ、へぇ……? そうでやすか……?」


 今度は意味が分からない、とばかりに困惑している。まぁ、急にこんなことを言われたら然もありなん、といったところだ。

 実際、俺のため。と、いう以上にルード自身のために部下育成をするのは急務と言える。なんと言ってもこのままだと、フィクションでは()()()()役回りが多いゴブリン。その最期が()()()というのはブラックジョーク過ぎるからな……。

 まぁ、女を増やさなければ大丈夫かもしれないが、ルードだし。どこかで困った女をダース単位で助けてきても驚かないぞ。本当に。


「あの、マスター……?」


 おっと、いかん。思わず哀れみの目でルードを見てしまっていた。当の本人も、俺の視線に不穏なものを感じたのか顔を青ざめ……。青ざめてるんだよな? もとの顔、と言うよりも肌の色が緑だからあまりよく分からないが。

 ともかく、また寒気を感じているのか、ぶるり、と身体を震わせている。

 それにファラとセラも、なにやら良からぬものを感じたのか、辺りをキョロキョロと見渡している。どこにルードを奪おうとする泥棒猫がいるのか、と警戒しているようだ。本当、女の勘というのは凄まじいな。いまのところ、ただの勘違いなんだが……。


 ともかく、いまはそんなことを考えていても仕方ない。俺は余分な考えを捨てるようにぶんぶん、と首を横に振ると改めて話を続ける。


「ともかく、だ。ルード、貴様には今後も色々と働いてもらわないといけないんでな。期待しているぞ」

「へ、へいっ! マスターの期待に応えてみせますとも!」


 俺の激励に、ルードはそうやって威勢の良い、ハリのある声で応えるのだった。

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