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鮮血のダンジョンマスター──彼が史上最悪の魔王と号されるに至るまで──  作者: 想いの力のその先へ


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コアとマスターの関係性

「ふ、ふふっ。正直、驚きました。そこまでたどり着けるなんて……」


 くすくす、と目の前でナオと名付けたモノが笑っている。どうやら、本当にただのダンジョンコア、と呼ばれる存在ではなかったらしい。


「しかし、あらためて何者か、と問われると少し難しいものがありますね」


 笑いが苦笑に変わるナオ。


「なにが、どう難しいんだ?」

「そうですね、ではマスター。あなたは魔王、とよばれる存在がいる。と、言われて信じられますか?」


 にこやかに笑いながら問いかけてくるナオ。それについて、俺の答えは――。


「そうだな、お前が言うんなら実際にいるんだろう。信じるさ」

「あら、意外……」


 俺の答えに、手で口許を隠して驚いている。……まぁ、これに関してはそれを話したのがナオだから信用した、というのが正確だ。もし、これがどこの誰とも知れぬ者が言ったら、こちらは確実に無視しただろう。

 ともかく、俺が信用すると言って驚いていたナオだが、気持ちの整理をつけると、話が早いとばかりに軽い笑みを浮かべた。


「ならば、改めまして。わたくしたち、ダンジョンコアは総じて、魔界を統べる魔王陛下。かの御方の子供、と言っても良い立ち位置です」

「魔王の、子供……?」


 唐突な、本当に唐突なナオの暴露に今度はこちらの頭が真っ白になる。魔王の子、ということは王位継承権とかそんなものがあったりするのだろうか?

 というより、ナオは本来、ダンジョンコアNo.70だった筈。つまり、それはナオの前に最低69の子供がいるということになるわけで……。


「わぁ、子沢山。……なんて、ボケてる場合でもないな。しかし、魔王の子だというのなら、なぜ人間の世界へ送られているんだ?」


 俺が疑問に思ったことを口にすると、ナオは困ったような苦笑いになった。そして、彼女の口から、なぜここへ送られたのか、その訳について語られる。


「あ、うん。その、ですね。あくまでわたくしたちコアが魔王陛下の子供、というのは比喩表現で、実際は特殊な宝玉に陛下の権能をコピーしたのがわたくしたちです。ここまでは良いですか?」


 大丈夫ですか。理解できましたか、と言わんばかりに問いかけてくる。こちらとしても、そのことについては問題ない。頷くことで肯定すると、ホッとした様子で続きの話をする。


「そして、わたくしたちがここへ送られている理由ですが、簡単に言えば、陛下の代理です」

「魔王の代理……?」


 どういうことだろうか、と首をかしげているとナオは補足説明を始めた。


「陛下は魔物、モンスターを強化すること。自らの陣地を強化することに特化した権能を持たれる悪魔です。もちろん、それは陛下が魔物使いの隠れ里出身というのもありますが、それ以上にあの方の才覚ゆえの力です」

「つまり、単独でダンジョンを生み出すことが可能、と?」

「ええ、そうです」


 満足そうに首肯するナオ。口調こそ平素のものだが、どことなく誇らしげに見える。産みの親である魔王の偉大さを喧伝できて嬉しいのかもしれない。


「それで、詳しくは話せませんがとある契約により、陛下は複数のダンジョンを生み出すことを望まれています。しかし、いかに陛下が希代の才覚を持つといっても身体は一つしかない以上、まったく別の場所にあるダンジョンを運営するのは厳しい」

「だから、代理としてダンジョンコアを、ということで良いのか?」

「はい。ですが、やはり陛下の権能を完全再現するのは不可能に近く……」


 どこか残念そうに呟くナオ。あるいは己の不甲斐なさを嘆いているのかも知れなかった。


「なので、権能を簡略化するとともに一種の法則性を持たせることで対応することになりました。それがDPシステムです」

「なるほど、DPという見える数値に変えることで管理しやすくした訳だ」

「ええ、それと同時にコアの制御者としてマスター。ダンジョンマスターという管理者を据えることも考えられました。これは管理、という面だけではなくダンジョンの単一化を避ける意味合いもあります」


 単一化を避ける? どういうことか、と一瞬考えたがすぐに理由に思い至った。


「ふむ、ダンジョンに個性。マスターごとの特色を出させることで攻略のルーチン化を避けようとしたんだな」

「その通りです。本来であればコアだけでもダンジョンの運用は可能ですが、そうなれば同じようなダンジョンばかりになって、指摘通りの結果になるという危惧がありましたので」

「そうか……」


 そこでふと、違和感を抱く。なにかを見落としている気がした。なにを見落としているのだろうか……?

 色々と過去のことを振り返る。そして見つけた、違和感のもとを。


「そうか、なるほど……」

「……なにか?」

「ずっと、なにか引っ掛かると思っていたが――」


 引っ掛かっていたのは、かつてナオに伝えられたダンジョンコアの肉体の獲得とチュートリアルの関係。そもそも、初期のナオは機械的なやり取りしか行えなかった。

 しかし、それがいつのまにかある程度普通のコミニュケーションを取れるようになり、その後、肉体も手に入れている。


「あのチュートリアルとかいうの、俺だけじゃなくナオも……。というより、ナオの方がメインだったんだな?」


 その指摘にナオは声を上げず、というより声がでない様子で、真ん丸に目を開いて驚きをあらわにしている。


「……よく、分かりましたね」

「もともと、コア単体でもダンジョン運営が可能と言ったからな。それならば、本来ダンジョンマスターなんて必要あるまい? それなのに、マスターを必要とする理由。それは、マスター自身にコアを教育させる。いわば情緒を育ませるため、違うか?」

「ええ、その通りです」

「そして、その結果。ダンジョンコアは悪魔、人造悪魔として自己を確立する、か」


 そこまで指摘すると、ナオはお手上げとばかりに両手をあげるのだった。

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