ヲタクに筋トレは難しい
このお話はフィクションです
「3キロ走った!」
「今日も走ってえらい!」
普通のやり取りの合間に、筋トレ報告が混じるマッチングアプリのチャット欄。
私は年下のジムトレーナーとマッチングしていた。もちろんトレーナーというのはポケットのモンではなく筋肉の方である。
彼のプロフィールには、「海外のお客さんと英語で話すのが楽しい」と書かれており、嫌味なくインテリジェンスを醸し出している。年収もgoodだ。
実際に会ってみると、
表立ってはいないが、確実に潜む鍛え上げられた筋肉。
ピシッとした美しい背筋。
裏表のなさそうな、はっきりとした物言い。
所々で感じる細やかな気遣い。
それはまさに、炎の君だった。
リングなフィットを1週間やってサボり続けた私が、この人とお付き合いしたら、心身共に健康になりそう。
そんな下心がありつつ、彼とチャットのやり取りを続けていた。
筋トレやランニングをすると、どんなにささやかでも必ず褒めてくれた。さすがトレーナーである。
彼との筋トレチャットも板についてきた頃、3度目のデートを迎えた。
ご存知の方も多いと思うが、3度目のデートは婚活において重要な意味を持つ。
ここでお付き合いを始めるか、それともお別れするかを決めるのが鉄板なのだ(私見)。
身体面では、食事の内容を見直し、体重に変化を見せていた。
メンタル面では、彼の超ポジティブ思考に惹かれていた。
色々な意味で、私にとって彼は特別な存在になっていたのだ。私の心は大いに燃えていた。
大事な3度目のデートには公園でピクニックを提案した。
手作りのお弁当を食べたり、サイクリングをしたり、(ネットで調べた)デートの定番をなぞるように楽しんだ。
お弁当を食べる時には「うまい!うまい!」と喜んでくれた。なんか見たことある。
秋の日差しが夕焼けに変わる頃、見晴らしの良い丘で彼は言った。
好きだ!付き合ってください。
ありがとう。私も大好きです。
こうして、波瀾万丈なことは一切起きずに、私の婚活は幕を下ろした。
これを読んでいる人の中には、もしかしたら婚活中という人もいるかもしれない。
もしそうなら、ぜひマッチングアプリを検討してみてはいかがだろうか。
海の藻屑箱へ送る日々は大変なこともあるかもしれないが、あなたの幸福な出会いを願っている。
2人のその後を書くかどうかは、彼の返答次第です。