いんてり!
このお話はフィクションです
向井の修似が目の前にいる。本人ではない。
私はマッチングアプリで初めて、実際に人と会っていた。
マッチングアプリにもそれなりに慣れてきた頃、向井の修似の人からいいねされた。
塩顔の清潔感のある大人の雰囲気。
高知生まれで文旦が好きなのに、皮を剥くのが不器用でうまくいなかいという。隠れてあざとい。
大学で研究をしているらしく、年収もそこそこ。
好きな漫画には。ピュ〜と吹くやつが他の王道漫画にまぎれて入っている。確実に信用できる。
私は食い気味にいいねを返した。
チャットのやり取りも居心地良く進め、電話もした。
そしてカフェでお茶をすることになった。トントン拍子だ。
実際にお話ししてみると、とても面白かった。彼は研究の話を一般ピーポーの私にもわかりやすく説明してくれた。一つのことにずっと向き合える人って素敵だ。
一般の人から、その研究分野全体に関する質問をされると、自分のしている研究領域のことしかわからなくて困ることがある、という話があった。
なるほど。非オタクから質問されたときに、オタクの中でもジャンルが細分化されてるから、自分の推し以外はわかんねえよって話と同じだ。
しかも、彼はチェッカーズではなかった。
チェッカーズとは、Tシャツにチェックの服見に纏う男性たちのことである。特に理系男子に多いとされている(私調べ)。
彼との時間はとても充実していた。最後に
また逢おうと彼は言った。
私は悩んでいた。
彼は研究者という職業柄、海外の研究機関へ就職するつもりだという。
私の英語レベルが残念なこともさることなごら、私のオタ活への影響は計り知れないのである。
夏と冬のビックなサイトはどうするのか?
家にある薄い本はどこに保管するのか?
最新アニメはどうやって録りためするのか?
不安がたくさん押し寄せた。
まさか、こんな重要な人生の決断を迫られることになるとは…
悩みに悩んだ私は、やっぱり今の生活(オタ活含む)をとった。
そりゃあただのOLが海外に行く機会なんてもうないかもしれないし、もしかしたら、ひとまずお付き合いしてから決めるという選択肢もあったのかもしれない。
でも、これ以上時間をかけても、今の生活(オタ活含む)を変える選択はない。摂取し続けないとしょぼしょぼになる。
彼の研究の成功を祈って、海の藻屑箱へ。
きっと遠くで未来の誰かを幸せにしてくれることだろう。
次の人で、この婚活は終わりを迎えます。