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伊達政宗、殺生をするのは伊達じゃない その陸

 何はともあれ、景頼のお陰で転生者・転移者が他にいることもわかった。

 次は、現在調査中の事件についてもっとくわしく調べて推理しなくてはいけない。

 面倒くささにため息をもらすと、小十郎に後ろから呼び止められた。

「若様」

「小十郎!」

「蛇の処理は完了しました」

「よくやった、小十郎。時に、屋敷での殺人事件をそろそろ解決しようと考えている」

「それは誠に良い考えでございます」

「まずは、現場の屋敷に行こう」

 俺は小十郎とともに現場となった屋敷を訪ねた。遺体はすでに運び出されており、中は空っぽとなっている。

 現場が綺麗に掃除されていた理由に説明のいく殺され方など、前にも言った通りわかるわけがない。

 どうしたものか途方に暮れていた。この事件は自殺ってことでいいんじゃないか? 自殺だよ、きっと......。

「若様。見てください!」

 小十郎が大きな声で俺を呼んだ。気になるから駆け足で近づいていった。「どうした?」

「窓の(へり)に何かが付着しております」

 俺は目を凝らして、小十郎の言う窓の縁を見た。確かに、何かが少し付着している感じがあった。手で触って確認した。液体が固まって固体になったようだ。ペロッと舐めてみた。

「ん? これは酒じゃないか!」

「お酒ですか?」

「これはお酒だぞ。となると、この窓の向こうに何かあるはずだ!」

 俺は屋敷を飛び出して、窓の先に向かって走り出した。小十郎も身軽に着いてきた。俺は前世の歳を含めると50代なのだが、かなり楽に走ることが出来ている。体が10歳だからだろうか。走ることで転生したことを実感するな。転移だったらこの感覚は味わえないな。

 走り続けた末に見えてきた景色は、城下町。とんだ期待外れだった。肩を落とすと小十郎が、仕方ないです、と言って励ましてくれた。そう言われると頑張れる気になれるから、やっぱり10歳の体は良いな。余力もかなり残ってるし。

「うっしゃー! 行くぞ、再調査だ!」

「どこまでもお供いたします」

 やる気の回復した俺は、また現場に戻って、真相に直結しそうな証拠を探しまくった。だが、そんなものは一片も見つからなかった。

 頭をくしゃくしゃに掻いて考えを巡らせた。無理だ! 自殺で片をつけるしかない。爪をガリガリと噛み砕き、地団駄を踏む。やがて、ある答えを導き出した。

「小十郎。わかったぞ! 犯人も何もかも全てな」

「本当ですか!?」

「遺体の第一発見者を連れてきてくれ」

「わ、わかりました!」

 小十郎は走って、第一発見者を連れて戻ってきた。

「若様。私に何か用でございましょうか?」

「君は実に優しい友達だな」

「へ?」

「今回亡くなってしまった者は、蛇酒を作っていたようだ。といっても、君はそんなことは知らなかった。

 君は友の屋敷を訪ね、彼が亡くなっていることに気づく。辺り一面には酒が散乱していた。彼はまた、禁酒を言い渡されていた。亡くなった後で、禁酒をしていなかったことが知られたら大変だ。君は友の屋敷を丁寧に掃除して酒の痕跡を消し去った。そして、友の遺体のポーズを整えた。どうだい? 間違っているかな?」

「合っています」

「うん」

「それで、あいつの死因は何だったんですか?」

「死因は毒死。そして、事故死だ」

「どういうことですか?」

「彼は蛇酒を作っていた。だが、この時代の酒のアルコール度数は低いものばかり」俺が宴会で度の高い酒を呑んでいたが、あれは戦国時代では度の高い酒だが現代と比較すると度の低い酒というわけだ。「そんな度数の低い酒で蛇を酒に漬けても、なかなか死なないのが蛇だ。おそらく、彼は出来上がった蛇酒を呑もうとフタを開けたら蛇が飛び出して噛まれたのだろう。蛇酒は毒を持つ蛇に限るからな。

 蛇はそのまま窓から屋敷を脱走。窓の縁に付着していた酒は、蛇の体が触れたからだ。さすがの君でも、窓の縁までは掃除していなかったようだね。それで、城内でさきほど殺した蛇が、凶器だったということだ」

「では、なぜ蛇の噛んだ跡があいつの体からは見つからなかったのですか?」

「蛇の噛み跡はかなり小さな穴となる。肉眼で見つけ出すのは困難を極める」

「それで事故死だとわかったのですね......」

 現代でも蛇酒を作ったがアルコール度数が低いから蛇が生きて飛び出した事例がたくさんある。実際にあり得なくないことではあるが、そんなことはどうでもいい。

「そして、もっと重要なことを君には尋ねなくてはなるまい」

「何でしょうか?」

「今回亡くなってしまった者は、誰から蛇酒を聞いたんだ! 誰と親しく交流していたんだ! ちゃんと答えてもらうまではここから帰すわけにはいかない」

 その後もキツい口調で話し、城下町の『江渡弥平(えどやへい)』と親しかったことがわかった。

 蛇酒はこの頃の時代には無いはずだ。しかし、今回の奴は蛇酒を作ったから死んだ。やり方が甘かったから、蛇は生きていた。だから、この蛇酒は誰かから教わったばかりだということがわかる。そんなことを教えられる奴がこの時代にいたとすれば、現代人しかいない。

 江渡弥平は転生者または転移者の可能性が高い。もしかすると、景頼が大事に保管している予言の書『予言未来書 一之巻』の作者かもしれない。

 書く前に調べてはみたのですが、蛇酒がいつからあるのかはわかりませんでした。もし戦国時代に蛇酒があったのなら、この話しの部分は物語だと割り切ってください。

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