表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/246

伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その弐漆

 輝宗は腰を押さえていた。こっちの世界では父親である輝宗を殺すことは、俺には出来ない。......心が痛くなる。ちゃんと助けなければいけないな。

 俺は虎哉と仁和、小十郎の元へ戻った。皆黙々と食べていた。仁和と小十郎に関しては、もうすぐ戦を始めるってのに呑気(のんき)な奴だ。

「師匠。少々用事がありますので失礼します」

「ええ、わかりました」

「小十郎、着いてきてくれ」

 小十郎は一度だけうなずき、俺のあとを着いてきた。俺はクリスマスパーティーに使っている会場を出て、廊下を進みながら口を開く。

「年明けから戦を開始する」

「らしいな」

「そのことについて、くわしく神辺に説明をする。部屋に入れ」

「わかった。久々の戦だけど、万人(ばんにん)をなり振り構わず殺す、と聞いたけど本当か?」

「部屋で説明をしよう」

 部屋に入ると、俺は神辺を見ながら扉を閉めた。

 神辺は眼を鋭く光らせた。「万人をなり振り構わず殺すって本当なのか?」

「史実ではそういうことになっている」

「それを実際に実行するつもりか?」

「そんな酷いことはしないから安心してくれ。これからくわしく説明する」

「頼むよ」

 俺は小十郎に、井原とレイカーと俺の三人で話し合った結果を丁寧に伝えた。それを真面目に聞いていた小十郎は、眉毛をハの字にさせた。

「年明けから戦をすることはわかった。ただ、輝宗をどうやって助けるかがまだ決まってないじゃないか。どのようにして輝宗を助け出すつもりなんだ?」

「三人で話し合ったものの、結論は出なかった......」

「まずいじゃないか。行き当たりばったりで戦を開始するっつのかよ」

「そういうことになる。ただ、レイカーいわく、何とかなるそうだ。もう時間もないし、行き当たりばったりでやってみないか?」

「それしか、もう時間はないな」

「やるしかないんだ」

 小十郎はギリギリまで悩んだ。どうすればいいのか、自問自答した。頭を掻きむしって、うなった。それでも俺に(したが)うのが最善と考えたのか、最後には『うん』とだけ口からもらした。

「よし、それで良いんだ。早速だが、もうすぐ年が明ける。今日中に隊を編成しろ。指揮権の一部を小十郎に渡す」

「わかった。今日中に編成すれば良いんだろ?」

「そうだ」

「よし! 行ってくる!」

 小十郎は腕をまくり上げて、部屋を飛び出していった。


 年が明けた。正月である。

 俺は早朝に飛び起きて、事前に小十郎が編成した隊を見回す。

「仁和と小十郎に前方の隊の指揮を一任! 景頼と成実は前方警戒! 忠義と二階堂は仁和の隊から独立して後方を警戒! 仁和の目下の隊は、仁和の指揮に従って四方を警戒! 井原は中央部で隊とともに進行! 総員、前進だ!」

「「はっ!」」

 馬にまたがった皆は、俺のあとに続いてきた。もっと加速させ、反伊達政宗派の近隣大名の領地まで向かった。俺は視野(しや)を広げ、警戒を(おこた)らない。

 それから、出会いざまに蘆名(あしな)氏に繫がっていると思われる軍隊を攻撃した。そして、そいつらから逃げるように馬を走らせた。

──小浜城。

「ここは定綱の小浜城だ! 攻め入れ!」

 俺の掛け声とともに、小浜城の門を破るために突進(とっしん)を始めた。何千人が束となってようやく門を破ると、定綱の配下の奴らが武装して待ち構えていた。

「忠義率いる遠距離射手部隊! 矢を矢を放てぇ!」

 俺の後方から何千という矢が前へと繰り出された。その矢の一部は数百人に刺さり、落馬する者もいた。俺は絶好のチャンスと見た。

「仁和! 指揮をして突撃しろ!」

「人使いが荒いですね!」

 仁和は馬を進めて、未来人衆を前進させた。速攻部隊は速攻で定綱の軍を()っていった。さすがは未来人衆だ。仁和によって戦での戦い方が身に染みているじゃないか。俺も負けてはいられないな。

「成実と景頼は俺に着いてこい!」

 俺は鞘から刀を抜いた。前に進むと、定綱の配下はニヤニヤと笑い出した。多分、俺が直々に進んできたから、首が取れるとでも思って喜んでいるんだろう。戦国時代は手柄を立てた奴が勝ちって世界だからな。

「テメェら、俺を舐めてんじゃねぇぞ!」

 俺には奥の手があるんだ。仁和のお陰で取得して、それからたびたび助けてくれる秘技だ。

「防御壁展開!」

 これで俺は死ぬことはない。成実は戦に強く、景頼も負けることはない。これで押し切る。

 刀にも、いつも通り防御壁を展開。馬で走り回りながら人を斬っていく。そして敵の鎧を貫こうと刀を当てた時だった。防御壁の防御力が高すぎて、刀の耐久力が届かなかったようだ。刀は真ん中から折れた。

「あっ!? 折れた!? マジかよ!」

 余分に刀を持ってきていればと後悔をした。ただ、これでも攻撃出来ないだけで防御壁はあるから死にはしない。

「成実! 刀、持ってるか!」

「すみません、この一本しか持ち合わせていません」

「ああ。──景頼は持ってるか?」

「いえ」

 まいった。どうやって攻撃をしようものか。この中でチート級能力を持っているのは俺だけだし、俺が攻撃した方が一番手っ取り早く敵を殲滅(せんめつ)出来る。

 俺は鞘を掴んで、何とか防御力を高めて攻撃出来るくらいにこしらえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ