表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/246

伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その弐陸

「これでわかったと思う。アーティネスは最低な奴なんだ」

 レイカーは顔を下に向けながら、そう言った。

 前世で神話として美化された神様達が異常だっただけで、実際の神様なんてこんなもんだ。だから、大したショックでもない。

「レイカーを信じよう」

「ありがとう」

 俺はレイカーと再度握手をしてから、会議を再開させた。まずは年明けに、反伊達政宗派の近隣(きんりん)の大名と戦ったりして暴れ回ることまではまとまった。ただ、どうやって輝宗を助けるかが問題となる。

 ホームズの世界は輝宗の危険が(ともな)うし、いったいどんな作戦が良いのだろうか。

 俺は会議を切り上げると、仁和がクリスマスパーティー用の料理を作っている調理場まで戻った。

 仁和は拍手(はくしゅ)をした。「まさか政宗殿が自発的に料理しに戻ってくるとは。賞賛(しょうさん)(あたい)します」

「そんなんじゃねーよ。あ、そうそう。クリスマスパーティーの参加者は登場人物全員にしろよ!」

「登場人物? あなたは何を言っているんですか?」

「んー、今までに会ってきた奴らを呼べってことだ。わかったか?」

「ええ、わかりました。家臣全員と真壁河親(かわちか)殿、でよろしいですね?」

「家臣全員の中に虎哉(こさい)宗乙(そういつ)も入っているか?」

「はい」

「ならそれで大丈夫だ!」

「では料理を始めましょう」

「えぇっ!!」

 それから日が(しず)むまで料理は続いた。地獄だった。俺は火で熱せられた鉄板に指を突っ込んで火傷(やけど)し、包丁で間違えて指を切り、()()料理が下手(へた)で腹をくだした。そのせいで、試食を食べた家臣は、ほぼ例外なくトイレに向かっていった。これは確かに悪いことをしたと反省している。


 そんな嵐が過ぎ去り、そうして十二月。クリスマスパーティーを(もよお)すことになった。

 虎哉は俺と仁和で作った伊達巻き(に近い食べ物)を(しょく)して、体が後方(こうほう)()()った。「これは素晴らしい食べ物ですね! 平玉子焼きとは似ていますが、味は平玉子焼き以上の絶品! これは若様考案の食べ物なのですか?」

「それは伊達巻きと名付けました。師匠の口に合って良かったです。伊達巻きは軍配士である仁和凪という家臣が考案し、私と一緒に作り上げました」

「ほお、仁和寺と同じ名前ですね。それは縁起(えんぎ)が良い」

「頭のキレた軍配士です。ここに呼びましょうか?」

「死ぬ前に若様の軍配士をお目に掛かりたい(ゆえ)、わしの前に連れてきてください」

「わかりました」

 俺は仁和がいる場所まで行って、仁和を探した。すると仁和は調理場で調理の指導をしていた。

「おい、仁和」

「今はクリスマスパーティー中では? 私に何かご用で?」

「師匠が仁和と会いたいと言ったんだ。伊達巻きをいたく気に入ったようで、考案者とお会いしたいようだ」

「師匠とは、虎哉殿のことですか?」

「ああ、その通りだ」

「そうですか。気に入ったのですね」

「そうらしい。んじゃ、着いてきてくれ」

「はい」

 仁和は俺を追うようにして着いてきた。俺は虎哉がいるところまで行くと、仁和を虎哉の前に立たせた。

「こちらが軍配士の仁和凪です」

「どうも、仁和です」

「わしは虎哉宗乙。幼き若様の教育係を務めておりました者です」

 虎哉は仁和と両手で握手をした。

「虎哉殿は伊達巻きを気に入ったと政宗殿から(うかが)いましたが、美味しかったですか?」

「それはもちろん! あんな美味(びみ)は久しく食べていませんでした。平玉子焼きのあのアレンジはよく考えつきましたね!」

「ええ。政宗殿にも手伝ってもらって少しずつ改良をし、今虎哉殿が食べているような伊達巻きに仕上がりました。美味しかったのなら光栄(こうえい)です」

「次に新たな料理が完成しましたら、是非(ぜひ)このわしを呼んでくださいね」

「はい。次は試食に呼ばせていただきます」

 俺は日本酒をたしなみながら、二人の会話を聞いていた。仁和はいつも無愛想(ぶあいそう)だが、こういう外交には意外と向いているんだな。愛想が良くなっている。いずれ外交を仁和にやらせてみるか。

「若様!」息を切らせながら、小十郎が走り寄ってきた。「泥酔(でいすい)者がご乱心(らんしん)を」

「ご乱心......酒に酔って家臣が暴れているってことか!?」

「さようです」

 アルコール度数の高い日本酒を家臣に振る舞ったのが失敗だったか。

 小十郎が案内した場所では、家臣二人が顔を真っ赤に染めながら服をつかみ合っていた。

「下がれ、お前ら!」

 俺が一声掛けるが、なかなか喧嘩をやめない。ついに泥酔者の片方が発狂し始めた。

 その発狂した声を聞いたのか、駆けつけた輝宗が声を張り上げた。「貴様ら何をやっておる! やめんかっ!」

 輝宗がそう言うと、両家臣は離れてひざまづいた。さすが輝宗だ。隠居(いんきょ)をしてもなお、俺より家臣から(あが)められているとはな。

「いいか? 今は政宗が当主だ。たとえ俺が言ったことに反していても、政宗の言ったことを優先するんだ!」

「「わ、わかりました!」」

「お前らは一ヶ月は酒を飲むな! 禁酒をしろよ!」

 驚くほど輝宗に素直(すなお)な家臣どもだ。本っ当に政宗派の家臣は少ないな。輝宗の統率力は仁和の統率力より見習いたいものだ。

「政宗。後処理は任せるぞ」

「ありがとうございます、父上」

「うむ。困ったことがあったら、いつでも頼るのだぞ」

「はい!」

 輝宗は両手を背に回して、腰を押さえながら廊下へと歩みを進めていた。

 昨日は投稿出来ず、すみませんでした。諸事情があって投稿出来なかっただけで、エタってはいないので安心してください(安心する人がいるかどうかはわかりません)!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ