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不注意で、生まれ変わりました。  作者: 水無月ツクナ
第三章 旅立つ者たち。
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3-9 本登録と新たな男

 テイマーギルドのお兄さんはセルト石の下に新しく付いた雫型のアクセサリーを指刺した。


「昨日お渡ししたそのアクセサリーとタグプレート、そしてこのテイマーギルド登録カードの素材は特殊な鉱石が使われています。

 この銀に魔力を注いだらそれぞれ紋様が浮き上がります。

 アクセサリーはサラレイン領で登録したので、風の紋様が緑に光り浮かびます。

 タブプレートは主と従魔が同じ模様が浮かび出ます。

 そして、このカードにユーリさんの血を一滴だけで良いので落としてください。」


 ユーリはテイマーギルドの職員から受け取った針で親指を刺して、カードに血を落とした。

 カードは淡く光を発し、ユーリの血が見る見るうちに消えて行った。


「これで、カードの持ち主登録も完了しました。

 このカードはユーリさんの魔力にしか反応しませんが、貴女の魔力を注いだら先ほどの光のように淡く光ります。

 これらの金属への加工はテイマーギルド秘蔵の方法なので真偽はすぐに分かります。

 三つとも初回なので、無料提供となります。


 しかし、雫型のアクセサリーとタブプレートに関しては、再発行はすぐ出来ますが、手数料を頂きます。

 そして、この登録カードに関しては紛失された場合、再発行までの審査として半年以上もかかり、手数料も高額になります。

 なので、無くされないようにお気を付けください。


 ほとんどの契約した主人は王宮騎士だったり王都、もしくはその近くに住んでいますが、アクセサリーは町の中を歩く時だけ付けていたり、訓練中は外していたりして皆さん気を付けているようですよ。

 タグプレートは体毛で隠れる場合はそのままにしておくことが多いそうです。」


「色々教えてくれてありがとうございます。

 でも、初めてテイマーギルドで登録した時は二回目があるなんで言っていませんでした。

 どうしてなんですか?」


「あぁ。それは、従魔契約のほとんどが弱い魔獣なので二回も登録する必要がないので、若い職員は知らなかった事もありますし、本登録は言わばテイマーギルドからの試験みたいなモノなので外部には漏らさないようにしているんです。


 なので、ルイスくんとカイくんも内緒ですよ。」


「あぁ。」

「分かった。……なんで、俺たちだけなんだ? シンは良いの?」


「それは、お二人は口が軽いからですよ?

 何も言わなくても、そちらの方はお二人と違って余計な事は言わなさそうな顔なので。」


 テイマーギルドのお兄さんは意地悪っぽく微笑むと、ルイスは頷き、カイは納得できない顔でお兄さんに顔を近づけて文句を言っていた。

 だが、ルイスがカイを宥め、「そろそろ家に帰った方がいいんじゃないか?」というと、カイはギルド内の時計を見た。

 時間を確認したカイは急いで、ギルドの出入り口に向かい「アレを買いに行かないと…。」と言いながら走り去った。


ギルドのお兄さんとルイスはやれやれと言った顔でカイを見送った後、ルイスはシンとユーリを今朝も座っていたテーブルに連れて行った。



「なぁ。ユーリ。

 なんで、さっきの武器屋で迷わず、シルバーソードにしたんだ?

 ユーリならもっと耐久性も鋭利さも上の武器を買う事も出来たのに…。」


「え?」


 ユーリはルイスの顔とシンの顔を交互に見て、困った顔をした。


「それはきっと、レオンさまからの助言を覚えていたからだと思います。」


「助言?しかも、レオンさまからの…。」


「はい。あまり耐久性はありませんが、比較的安価です。

 しかし、アンデッドの魔獣にも効果があり、付与魔法とも相性が良い。

 魔法を得意とするユーリさんと相性が良い金属なのです。


 私も魔法はそれほど得意ではないのですが、アンデッド対策にナイフを一本所持しています。」


「うん。それに銀製品はあんまり重くないから初めて持つ大きさの武器なら慣れない内は銀にしとけってレオンさんから言われてた。」


「ユーリさん。随分前の事なのによく覚えていたのですね。」


 ユーリは少しシンが柔らかに微笑んだように見えた。


「…。オレもナイフの一本ぐらい銀のヤツを買っておくか。」


 ルイスはボソッと呟いたが、周りの雑音で誰にも聞こえなかった。


「二人とも、そろそろメシを食べて、部屋に戻った方が良いんじゃないのか?

 そろそろ仕事終わりの野郎が戻ってきて、酔っ払いが増えてくるぞ。

 ユーリはともかく、シンもろくに寝てねぇんだろ。

 今日は早めに寝ろ。」


 そうルイスが言うと、受付のお姉さん・リタがやって来て、夕飯の献立や、おすすめを教えてくれた。

 リタと母・アンナが二人分の夕飯をリュウ用のご飯を持ってきてくれた。


 ユーリがアンナからリュウ専用の器を受け取り、リュウの前に置いて「よし。」と声をかけると少しよだれを垂らしながら齧り付くように食べ始めた。

 ユーリはそれを確認し、リュウを軽く撫でてから自分のご飯を食べ始めた。


 ルイスは二人が食べ始めたのを確認すると、軽く咳払いをした。


「二人とも、食べながらで良いからオレの話を聞いてくれないか?」


「う?」


 ユーリは片方の頬を膨らませながら短く返事をし、シンは口の中のモノを飲み込んだ後、真剣な眼差しでルイスを見た。


「シン。そんな顔をすんな…。軽く聞いてくれれば良い。

 近くの町にワイルドボアの群れが出て、討伐依頼がオレたち七人に来てるんだ…。」


「七人?」

「群れって事はボスもいると考えた方が良いんでしょうか?」


「七人はオレたち『ブロンドの盾』四人とユーリ、シン。

 そして、もう一人はこの町で神父見習いをしているオレたちの幼馴染の一人だ。

 そいつ、昔は一緒に仕事をしていたんだが、今でもたまにオレたちの仕事を手伝って貰ってるんだ。


 あと、ワイルドボア五・六匹とボスが一匹。ブラックボアがいるそうだ。


 オレたちだけではどう考えてもワイルドボアを狩れても、ブラックボアをやるのは難しい…。

 だから、二人にも手伝って欲しい…。

 頼めねぇか?」


 シンはユーリを見た。ユーリは口の中にある肉を飲み込んで、ニカッと笑った。


「良いよ。そのぐらい。

 ね? シンさん。良いよね?」


 シンは軽く頷くとユーリはシンとルイスの顔を見て明るく笑った。


「いつ、出発するの? 明日?」


 ユーリはちょっとピクニックに出掛けるような感じで、嬉しそうに言った。


「ユーリ、明日の夕方まで出発できねぇだろ?」


「?」


「お前の冒険者カードは今、手元にねぇだろ?」


「あ、そうだった…。」


「なぜ、持ってないのですか?」


「なぜって、Dランクに昇格させるために冒険者ギルドに預けてるんだよ。」


「まだ、Dランクにも昇格していなかったのですか?」


「え?」


「ユーリさんでしたら、もうとっくにCランクぐらいまで上がってるものだと思っていたのですが?」


「え? なんで? 私が強いわけにないじゃん。」


 ユーリはシンの背中をベシベシ叩きながら、照れた。


「本人の希望があれば、ギルドの試練代わりの依頼をいくつか受けたらユーリの腕前なら上がれるぞ。

 もちろん、無事に依頼をこなせたらの話だがな…。


 確か、シンもDランクだろ?

 二人で一緒に試練を受けたら、Cランクになれるかもしれねぇーぞ。」


 シンは何やら嬉しそうに花を飛ばしていたが、ユーリはそっぽを向いた。


「なんか面倒くさい…。」


 そうユーリが呟くと、無表情なシンだが背後から暗くなった。


「…。まぁまぁ。

 話はこれぐらいで、二人とも、そろそろ部屋に戻って寝る準備をしたらどうだ?」


 ルイスは空になった二人の前の皿を見て、さっさと二人を部屋に戻るように促した。


「やれやれ。ユーリの鈍感とシンの感情の薄さが問題か?」



 その夜、一階の食堂にはギルドに似つかわしくない薄い緑のローブを来た男がルイスたちと一緒に座っていた。


「久しぶりだな。ニコ。」


「元気そうじゃないか。ルイス。」


「神父見習いはこんな所で酒を飲んでていいのか?」


「呼び出しのはお前だろ。それに、教会では飲酒できないだ。

 たまには、いいだろ?」


「やれやれ。よくそれで次期神父さまだな。」


「仕方がないだろ。自分たちを育ててくれた神父さまがご高齢なんだ。

 あの方は子供も居ないから、自分が後を継がないと町の外から新しい神父が来る。

 神父にも色々いるから、ろくでもないヤツが来たらどうする?


 それに飲酒は宗教的には問題ない。

 今日は、お前たちの家に泊めてくれるんだろ?」


「あぁ。もちろんだ。」


「ところで、ブラックボア退治なんかお前たちで出来るのか?

 お前たちが無理そうなら、自分一人でも逃げるぞ?」


「神父見習いがオレたちを見捨てて逃げるのかよ…。」


「お前たちと心中する気はない。」


「問題ないさ。オレたちだけじゃ無理だが、町に来てる冒険者が二人、手伝ってくれる約束も取り付けたさ。」


「冒険者と言ってもまだ成人していないそうじゃないか…。

 本当に大丈夫か?」


「大丈夫。お前は相変わらずの心配性だな。

 明日、新しい剣を買ったから肩慣らしに手合わせすると言ってたから、それを見てから心配しろ。」


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