3-8 リュウとの絆
シン同様、ユーリも旅に出てから移動中の事を話した。
「いつだったかな?
お香と鳴子を仕掛けの時に見たワイルドディア(鹿系)とは別で、この二つ前の町に着く前に目が覚めたら、まだツノが生え切っていないワイルドディアの死骸があってビックリした事があったな~。
首元に噛み痕があったから、きっと夜中にリュウが退治してくれたんだと思う。」
「…。リュウって確か『シアウルフ』だったよな?」
ルイスがそう呟いて隣の仲間たちを見たら、仲間たちはウンウンと頷いた。
「そうです。リュウの種族は『シアウルフ』です。
けど、まだ一人前ではなかったはずです。
リュウは怪我などしていなかったのですか?」
シンは後ろを振り返り、リュウを見ながら話す。
ユーリは自分とシンの間に割り込んできているリュウの頭を撫でた。
「リュウに怪我はなかったし、返り血も浴びてなかったよ。
あ、そういえば、その前の晩に『そろそろ肉が切れそう。』ってリュウに言ったかも…。
まだ朝食分はあったんだけど、おかげで町まで魔獣を狩る必要なかったな~。
あ、そうだ。『ブロンドの盾』と出会う四日ぐらい前にワイルドボアが深夜、近付いてきた時はリュウが起こしてくれたな~。」
「「「ワイルドボア??」」」
「ワイルドボアを知らないの?
猪系の魔獣で~。」
「「知ってる。」」
「知ってます。」
ユーリが魔獣の説明をしようとしたら、シンとルイス、カイが口を揃えて説明を止める。
「え…。じゃぁ、どうして?」
「ワイルドボアを一人…。いや、一人と一匹でも勝てるのか?」
ルイスはちゃんとリュウを数に入れた。
「えっと…。森の中で少し開けた場所までワイルドボアを誘い込んで、地面を魔法で泥にして足止めした。
そしたら、リュウがワイルドボアの首元に噛みついてくれたから動きが悪くなったし、リュウから逃げるのに必死だった。
だから、私は不意を突いて、背中に飛び乗ってショートソードで一突きしたら仕留められたよ。
まぁ、代わりにショートソードが折れちゃったけどね。」
リュウがユーリの膝に前足を乗せて来たので、ユーリが横に体を向けて全身でリュウを可愛がりながら軽く話す。
その様子を見ながら聞いていたルイスやカイたちは開いた口が閉じず、シンは「さすが…。ユーリさん。」と呟いていた。
が、ユーリはリュウに構っていたので、ルイスたちの様子の変化に気付かない。
「あ、そうだ。剣を買いに行かないとな…。
ショートソードよりも普通の剣の方がそろそろ良いかな…。」
などとユーリが呟いていた時に、冒険者ギルドの職員が大きな声でルイスを呼んだので、ルイスは渋々席を立ち、冒険者ギルドのカウンターに向かった。
カイは、「ユーリにどんな剣が良いか良いのか? あとで武器屋を連れて行く。」などと話していた。
「オイ。ルイス…。」
「なんだよ。おっさん。今。ユーリから色々興味深い話を聞いていたのに…。」
ルイスは少し機嫌が悪そうに話していたが、おっさんはルイスの耳元で何やら話していた。
「おい…。っそれ、本当なのか?」
「あぁ、本当だ。
実は今朝、村人から報告を受けてこれから掲示板に張り出そうとしていたんだ。」
「それが本当ならオレたちじゃぁ、敵わないじゃねぇかよ。」
「いや、ユーリとシンを含めた六人じゃ、どうだ?」
「あ? あの二人と一緒にか?」
冒険者ギルドのおっさんとルイスは何やら話していて、内容は詳しく聞き取れなかったが、カイとシンには途切れ途切れであるがしっかりと耳に届いていた。
ルイスがカウンターからユーリたちのテーブルに戻って、カイの顔を見る。
カイはルイスに軽く頷き、ユーリに笑いかけた。
「ユーリ。これから武器を見に行くんだろ?」
「うん。そのつもりだけど?」
「だったら、部屋に戻って準備してこい。
あと、シンもついでに部屋を取って来いよ。」
ユーリとリュウは元気に二階に向かい、シンは何かを言いたげだったが受付から部屋の鍵を渡され、ルイスたちの方を振り返ったがカイたちが手を振って見送るので渋々、階段を登って行った。
ルイスたちはシンが二階に上がったのを見送ったら、すぐに一つのテーブルに集まるように座り直した。
「で、リーダー。新しい任務は?」
「そう焦るなよ。カイ。
ここから少し南の方に行った森の近くの村があるだろ?」
「確か。この辺りでも麦作りが有名で、美味いエールを作っているあの村だろ?」
「あぁ。そうだ。
あの村の近くの森でブラックボアが現れ始めたそうだ。」
「「「な!!」」」
ルイス以外の三人は驚きのあまり声を失い、一人は椅子から転げ落ちそうになっていた。
「ブラックボアだと…。
ワイルドボアだけなら群れでも討伐出来るが、ブラックボアっていえばボスだろ?
俺たち四人だと危なくないか…?」
「あぁ、分かってる。
ギルドのおっさんも分かって、オレたちに依頼したんだ。」
「な…んだと…。」
「オレたち四人だけなら断っていたが、今ならユーリとシンがいるだろ?
それにもう一人、この町ならアイツもいるだろ?
この七人ならブラックボアとその群れのワイルドボアが相手でもなんとかなるだろ?」
カイはルイスの言葉を聞き、冒険者ギルドのカウンターに立つおっさんを見る。
すると、おっさんは親指を立て、歯を見せながらニカッと笑ったのだった。
「おい。お前ら、教会に行ってアイツに声をかけてくれないか?」
ルイスは目の前に座る同じパーティメンバーの二人に声を掛けると、二人は静かに席を
立ち、ギルドを出て行った。
しばらくすると、ユーリとシン、リュウは一階に降りてきた。
「あれ? あと二人はどうしたの?」
ユーリはルイスとカイ以外のメンバーがいない事に気付き、ルイスたちに聞いた。
「さぁな? まぁ、そんな事はどうでもいいじゃないか?
さっさとユーリの新しい剣を買いに行こうじゃないか。」
カイは席を立つと、ユーリとシンの背中を半ば強引に押して、ギルドの外へ出て行った。
夕方、ユーリたち三人と一匹はギルドに戻って来た。カイはユーリの剣を買った後、自分の家に帰宅。
ユーリがギルドに入ると、テイマーギルドのおにいさんに呼ばれたので、ユーリはリュウと一緒にテイマーギルドのカウンターへ向かった。
シンとルイスも後ろから付いて来ていた。
「別にルイスくんたちは呼んでないですよ?」
「まぁ、いいじゃないか。
従魔を連れている奴なんか、滅多にいねぇーんだから気になるじゃねぇか。」
「ったく。まぁ、ユーリさんが良いというなら構いませんし、どう頑張ってもルイスくんには関係ない話ですしね。」
「私なら構わないよ?」
「ユーリがそう言うんだ。いいだろ?」
ルイスはニカッと歯を見せ笑い、シンの背中を叩いた。
テイマーギルドの職員は二枚のタグプレートを取り出した。
「こちらのタグプレートを一枚は主であるユーリさんが肌身離さず身に着けて頂き、もう一枚は従魔であるリュウさんの首輪の後ろに取り付けてください。
大抵はチェーンやヒモなどにつけて首から下げる方が多いですよ。
もし、ユーリさんもネックレスにするのでしたら、こちらのチェーンをお使いください。」
「貰っていいんですか?」
「はい。構いませんよ。
こちらは私からのプレゼントですが、宜しければお使いください。」
「え…。タダで貰う訳には…。」
「いえいえ。大した品でもないですし、こんな町に従魔を連れてくる人など滅多にいません。
私が初めて本契約したお客様がユーリさんなので、お礼の品ですよ。」
「本契約?」
「はい。
この町でもスライムやトビーラビットのような魔獣ランクの下位の従魔契約をする方がそれなりにいますが、ほとんどがペット代わり、愛玩用なので従魔登録も一度で終わる事が多いのです。
しかし、『シアウルフ』となれば別です。
魔獣ランクは中位クラスですし、力も知能もあり、一匹でも小さな村を脅かす存在。
テイマーギルドとしても注意深く観察をしなければいけない案件です。
しかし、主人であるユーリさんは生まれたてのシアウルフを育て上げ、従魔との絆もしっかりと築き上げ、頻繁にテイマーギルドまで来てくださってくれます。
これから先もきっと周りの人間に危害を与えないと信用できる主と、その証が必要な魔獣ランクの従魔には、テイマーギルドに登録して一年から二年ぐらいかけて主人と従魔を見極める必要があります。
ユーリさんとリュウさんはこのたび、私たちテイマーギルドから信用できる絆で結ばれている証として認証タグです。」
「ありがとうございます。」
ユーリはチェーンが付いたタグプレートを受け取り、その場で自分の首に付け、もう一つのタグプレートはリュウの首輪の後ろの金具に付けたのだった。




