3-7 二人の比較
シンが落ち着いて来た時、ギルドの扉が勢いよく開いた。
「よう、ユーリ。昨日はよく寝れたか?
リーダーたちも朝から揃ってどうかした?」
ギルドに入って来たのはカイだったが、何か起こっているのが分からない顔をしていた。
カイは新顔のシンを見つけると泣いている事に驚いた様子。
「どうした。お前。
リーダー、またそのイカつい顔で見ず知らずの若い奴を怯えさせたのか?
泣いて、可哀そうに…。なんか飲むか? ここはお兄さんが奢ってやろう。
お姉さん、なんか落ち着くお茶か何か出してやれ。もちろん、茶菓子も忘れるなよー。」
受付のお姉さんが六人分のお茶と二つに分けた茶菓子を持ってきた。
カイはユーリの隣にシンを座らせ、シンが座っていた席にカイが座る。
「で、コイツ誰だ?」
カイは隣のルイスに新顔の男の正体を聞いた。
「お前は…。相変わらず間が悪いと言うか空気を読まなねぇな…。
コイツはシンだ。半年間、ずっとユーリの後を追いかけて来てたらしい。」
「半年間も…か。危ない奴か…?」
「お前、本人を前に聞くなよ…。ったく、しょうがない奴だ…。」
ルイスは軽くカイの頭に拳を落とし、カイは冗談まじりに痛そうにしていた。
それをルイスや他の『ブロンズの盾』のメンバーがため息を吐いたり、呆れている。
「え…っと…。ところで、シンさんとルイスさん。
この革袋には何か入ってるの?」
ユーリはいつの間にかシンとユーリの間に移動した革袋を指している。
「あ…それは、ユーリが助けてくれたあの盗賊たちの褒賞金だ。
シンが受け取りを拒否したからどうしようかと思ってな……。」
「なんで? シンさんが捕まえてこの町まで連れて来たんでしょ?
受け取れば良いのに……。」
「私が捕まえたと言っても、五人中、三人も手負いだったのですよ?
私は連れてきただけに過ぎず、これを受け取る資格は私にはありません。
襲われたこちらの方々が受け取るのが筋ではありませんか?」
「シンって言うのか…。真面目な奴だな……。
黙って貰っておけば、丸々お前の儲けになるのに…。」
「いえ。そのような事は出来ません。
労力に合わない報酬は受け取る訳には参りません。」
「と言っても、俺たちもユーリに助けられたしな…。
取り逃したとはいえ、俺たちだけじゃ無傷で勝てたとは思えんからな……。
向こうさんの方が数多かったし、実力も俺たちより強かったらしいからな。」
「だよな…。
あの時、ユーリが助けてくれなければ、オレたちの誰かは怪我していたか、怪我だけじゃ済まなかっただろうな……。
なら、ユーリに貰ってもらわねぇか?」
「へ? なんで私? 私は何もしてないよ?」
「何もしてなくはないさ。オレたちを助けてくれたじゃねぇか。」
ユーリは急に話を振られ、飲んでいたお茶を置いて何やら思案した。
「じゃあ、六人分に分けようよ。」
「「はぁ?」」
「ユーリ。一応聞くが、六人っていうのはどういう事だ?」
「え? だって、ルイスさんたち四人パーティと私とシンさんでしょ?
だから、六人じゃないの?」
「あ…。俺たち『ブロンドの盾』は四人で一人前みたいな所があるし、今回俺たちは全然役に立ててねぇからそんなに貰う訳にはいかんよ。
なぁ? カイ。」
「あぁ。そうだな。オレたち四人で一人分だから、三等分でも貰い過ぎなぐらいだよな。」
カイは、隣のテーブルに座っている残りのメンバーにも声をかけた所、二人とも口々にカイに賛同していていた。
ユーリは何だか煮え切らないような顔で他にいい方法がないか考えていた。
「あ、そうだ。
今回の報奨金は金貨八十枚だよね?
私とシンさんが金貨二十枚ずつ貰って、残りの金貨四十枚をルイスさんたち『ブロンドの盾』のメンバーに渡すっていうのはどうかな?
『ブロンドの盾』のメンバーは四人だから、一人に金貨十枚ずつという事になるけど良い?
人数分で分けたり三等分にするとキリが悪いけど、これならキリ良く分けれるよ?
ルイスさんたちの取り分少なくなるけど、大丈夫?」
「大丈夫。大丈夫だ。むしろ、オレたちまで金を分けてくれるとは思わなかったぜ。
なぁ? ルイス。」
「あぁ…。ユーリとシンの二人で分けてくれても構わないのに…。
本当にこれでいいのか?」
ルイスはユーリとシンの顔を見ながら驚きつつ言う。
シンは黙って首を縦に振り、ユーリはニコニコしながら「大丈夫。」と言った。
ルイスは報奨金の入った革袋から金貨を取り出し、皆に見えるように分けていく。
そして、ユーリとシンの前に二十枚ずつ渡し、残りをメンバー分に分けていく。
それぞれが金貨を受け取った後、ルイスは自分の取り分から金貨を二枚取って、ユーリの前に置いた。
「ルイスさん? これは何?」
「あぁ、これは俺たちメンバーを助けてくれた分と一緒に護衛をしてくれたお礼だ。」
そうルイスが言うと、他の三人も同じように自分たちの取り分から各二枚ずつ、ユーリの前に置いた。
「え……。」
「良いんだ。ユーリ。これはオレたちからのほんの礼だ。
それに、これ以外にも護衛をした商人から礼金を貰うしさ。」
「あぁ。」
ユーリはどうにか『ブロンドの盾』のメンバーに金貨を返そうとするが、四人とも受け取ってくれない。
「男が一度出したものを引っ込めるワケにはいかない。」とか、「子供が遠慮なんかするな。」と言われ、シンにも受け取るように首を横に振ったり、ユーリの手を押さえられたのだ。
一人、納得できないユーリだったが、ルイスやカイがシンに話しかけたりして、どうやらこの話はカタを付けるつもりらしい。
ユーリは渋々、受け取った金貨を自分の財布に片付けたのだ。
会話はカイが来るまで話していたシンの一人旅での体験談である。
ルイスや他の『ブロンドの盾』のメンバーからカイにイチから判るようにかみ砕いて、メンバーたちの着色付きで話していた。
メンバーたちが泣きながら説明をし、カイは目から涙を流し、鼻をすすりながらシンの肩をバシバシと叩いて「頑張った。よく頑張ったな。シン。」とカイはシンを励ました。
『ブロンドの盾』のメンバーはそのままの勢いで、その場にいる六人分の昼食を受付のお姉さんに注文した。
食事を運んで来てくれたのはお姉さんの両親だった。ちなみに料理を作ったのは、父親と町に住んでいるおばさんだそうだ。
ギルドの宿の切り盛りは、一番に最初出会ったお姉さん『リタ』さんで、そのご両親はゲイルさんとアンナさん、あと兄も昔は手伝っていたそうだが冒険者になったそうだ。
「町のおばさんが数人手伝ってくれる。」と、ルイスが教えてくれた。
会話はシンの一人旅での出来事から、ユーリの旅の様子の事に変わっていた。
「ユーリはどうやって過ごしていたんだ?」
「どうって? 夕方になる前に野宿する場所を決めて、魔獣除けのお香と鳴子を仕込んでから夕飯を作って食べるの。
寝る時もリュウと一緒で、特に魔獣とか警戒しなくてもリュウが気付いてくれるから助かるの。
罠を仕掛けてる時に一度、ワイルドディアと出会ったけど、向こうも気付いて森の中に逃げちゃった。」
ユーリは、あっけらかんとした顔で話した。
それを聞いたシンと『ブロンドの盾』のメンバーは固まっていた。
「あれ? なんか言った?」
ユーリはきょとんとした顔で皆を見ていたら、後ろからユーリの腕に顔をすり寄せてきた。




