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不注意で、生まれ変わりました。  作者: 水無月ツクナ
第三章 旅立つ者たち。
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3-6 シンの苦悩 その2


 その後、隊長とルイスから詳しい話を聞かれ、シンは淡々と答える。

 隊長が細かい話を二人から聞き、それを元に隊長とは別の衛兵が書類に記入していく。

 一通り会話が終わった所で、書類を書き込んでいた衛兵は清書をする為に部屋を後にした。それと同時に一人の男が小さな木の盆に乗った革袋を持ってきた。


「隊長。報奨金の用意が出来ました。」


「あぁ。分かった。」


 後から入って来た衛兵からそれを受け取った隊長は、そのままシンに差し出した。


「いえ。これは、私ではなくそちらの護衛の方にお渡し下さい。

 私は、ただ森に居た盗賊を捕まえただけですので。

 私が見つけた時には、すでに一人は片腕を骨折、二人は足を引きずっていました。

 なので、その金銭を受け取る資格は私にはありません。」


 シンは一度も腕を上げる事もなく、ただただ首を振っていた。

 仕方がないので、隊長はシンではなく護衛をしていたパーティのリーダーであるルイスに隊長の大きな手で鷲掴みされていた革袋を差し出して来たので、ルイスは慌てて顔を振る。


「オレだって受け取れねぇよ。

 オレたちだって、助けられたんだ。

 その上、逃げられたから後日改めてアイツらを捕まえに行く予定だったんだからよ。」


「誰が受け取ってもそう変わらねぇよ。

 どっちかが受け取ってくれねぇと、こっちだって困るんだ。」


 シンとルイスは一向に受け取る姿勢を崩さない様子に隊長は痺れを切らした。

 ルイスに無理やり革袋は握らせ、シンとルイスを町の中へと追い出す。


「あとはお前さん等で好きに揉めろ。

 衛兵の仕事も暇じゃねぇ。あとはルイス。今回の件はお前に任せたからな。」


 そう隊長が言うと、さっさと門の中へ入って行った。


 ルイスは困りつつシンを見る。

 だが、シンは一向に話す気配がない。ルイスは困った顔をした。


「ついてこい。」


 そう、ルイスが言うとシンは黙ってルイスの後を追う。

 ルイスは町を歩く途中、時折シンの様子を窺った。

 シンの様子は一向に変わらず、無表情。


(コイツ、ユーリちゃんに会わせても良いのか?

 ギルドのおっさんから『とある噂』を聞いてるんだがな……。)



 『とある噂』……〈冒険者ギルド内である噂が流れている。

 その噂とは元Bランク冒険者・レオン=バードが鍛えたと言う少女が旅立ったが、なぜか少し年上の男が追いかけて旅している。〉という噂。

 その噂には疑問が多いので、尾ひれ背びれ、足ひれまで付いているとか……。


 なぜ、少女と男は一緒に旅に出なかったのか?

 なぜ、少女と男が同じ方向に一人旅をしているのか?

 中には、少女が男の事が嫌いで逃げ回っている。もしくは、嫌われるような事をしたのではないかと勘繰る者もいるらしい。

 なぜ、男は少女を追いかけているのか?



 そんな事を思い出していたルイスはもう一度、シンの顔を見た。


(目付きも悪いし、無表情であのやつれた顔で怪しいと言えば怪しい…。

 ユーリにそんな怪しいヤツを近付かせたくはない…。

 だが、コイツはただやつれているだけで、悪そうには見えないんだよな…。

 大人しく言う事を聞いているし、それにしぐさとか見る限り育ちも良さそうだしな…。


 あの噂はおっさん曰く、分からない事が多すぎて周りが好き勝手に着色され、中には面白半分で色々設定を加えられているらしいしな…。


 どっかの貴族のお嬢様で命を狙われてるから逃げ回っているとか、追いかけてくる男に求婚を迫られ逃げ回っているとか……。


 二人の様子から見てもそんな物騒な話じゃなさそうだしな…。

 この金をどうするか当事者が揃って話さないかんしな…。)


 ルイスは報奨金の入った革袋を片手でジャラジャラと投げながら考えているうちに、ユーリがいるギルド前に着いた。

 ルイスは革袋をひと際大きく上に投げ、取るとシンの方を振り返った。


「この中に、オレたちを助けてくれた命の恩人がいる。行くか。」



 シンより先にルイスは建物に入って行った。が、中に入った瞬間、後ろから付いて来ていたはずのシンが素早くルイスの片手から革袋を抜き取り、隅に座っていた一人の少女の横に革袋を大きい音と共に叩きつけたのだった。


 ギルドの中は朝から活気に溢れ、冒険者たちが仕事を探していたり、各テーブルで朝食を食べている冒険者やしゃべっているパーティたちはシンが出した音に驚いて、一気に静かになりユーリと流れるようにユーリの前に座ったシンの方を向いて、驚きながら何事かと思い見守っていた。

 ユーリも最初は何事が起きたかと驚いていたが、周りの視線が自分たちに向けられる事に気付くと慌てていた。


「シンさん…。なんでここに……。

 てか、なんで皆こっち見てるの……。」


 ユーリの慌てようにルイスが大きく手を叩いた。


「(ユーリとシンって奴は、知り合いらしいな…。)

 ほら、関係ないヤツはさっさと仕事に行くにしろ。やる事やれ。

 散った。散った。」


 ルイスはギルドホールの隅にまで行き渡るように声を上げ、片手を振って周りを散らす。

 何気にユーリが座っているテーブルの隣は『ブロンドの盾』のメンバーが占領し、しっかりと周りに人が来ないようにしている。


「ユーリ。こいつと知り合いなのか?」


「おはようございます。ルイスさん。

 うん。シンさんとはフィルさんの屋敷でお世話になり始めた時からの知り合いなの。」


「おはよう。そうか。

 シンとは仲良いのか?

(どうやら、ユーリの敵ではなさそうだな?)」


「仲…。良いのか?

 よく一緒に居る事はあるけど、あんまりシンさんについて知らない。

 と言うか、シンさんとあんまり喋った事ないな…。


 シンさん…。私たちって仲良いの?

 なんで、ここにいるの?」


 ユーリはルイスと話した後、ユーリはシンを見ながら不思議そうな顔をした。

 シンはテーブルの上に置いたままの両手を拳に握り、震え始めた。


「この半年、私がどんな思いで貴女を追いかけていたか分かりますか?

 野外だと一人なので夜はゆっくり休めないし、食事だって携帯食ばかり…。

 やっとの思いで町や村に着いたと思ったら、貴女はもう旅立った後で…。

 追いかけて、追いかけて……二つ前の町では貴女が旅立った日の夜に到着して、一つ前なんか……貴女より先に町へ着いたようなのですが、結局すれ違って会えず仕舞い……。


 やっとこの町で会えたと思ったのに…。

 貴女は私が追いかけてる事を知らなかった上、仲良いか聞かれるなんて…。


 貴女と出会って二年以上経ちますし、貴女の護衛としてずっと傍にいました。

 それに、半年ほど一緒にディオンさまの視察について行き、共にパーティを組みましたよね!!」


 シンは静かに怒って話し始めたが、途中から目に涙を溜め始めた。

 言い終わると、シンはボロボロと涙をこぼし、隣のテーブルで聞いていた『ブロンドの盾』のメンバーたちも共に涙を流し、ギルド内ではやたら鼻をすする音や目をこする人が多くみられた。


「え…。」


 ユーリはシンが初めて泣いている事に驚いたが、それに合わせて他の人も泣いているのにどうしたら良いかあたふたしていた。

 シンと隣に座っていたルイスはシンの背中をさすり、シンに励ます言葉をかけている。


「えっと…シンさん…。

 なんか、ごめんなさい……。」


 決して、悪くないユーリだがとりあえず、シンに謝る事にした。

 ついでに、リュウもシンの隣に行き、リュウはシンの頬を舐め始めた。



(あれ~……。

 私、何も悪い事してないよね…。

 なんか、いきなり私が悪者みたいな感じになってない?


 私、シンさんが付いて来てる事を知らなかったし、シンさんだっていつも何も話してくれなかったじゃん…。

 私がシンさんに話しかけても最低限の言葉で返事を返されたり、会話らしい会話もなかったよね…。

 挨拶程度の会話しかしてないよ!


 てか、リュウまでそっちの味方…。

 シンさんの態度はずっとリュウも見てたよね!

 私は、悪くない!!)


 ユーリはこの状況では天井を見上げる事しか出来かなった。



この物語のヒロインはユーリではなく、シンです。(嘘です。)

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