3-4 ブロンドの盾
ユーリを乗せた荷馬車は気まずい空気の中、町へと進んだ。
あれから一時間ほど経ち、『ブロンドの盾』のリーダーが目を覚まし、カイがリーダーにユーリの紹介をした。
「そうか。盗賊から俺たちを助けてくれたのか。
ありがとうな。ユーリ。
オレは『ブロンドの盾』のリーダー、ルイスって言うんだ。
よろしくな。」
ルイスはユーリに握手を求めて来ていたので、ユーリもルイスの手を取った。
「さっきはごめんなさい。
その…盗賊かと思って……石を投げてごめんなさい。」
「あはは…。
あれは、リーダーが悪いさ。な? カイ。」
「あ~そうだな。あれはルイスの顔が怖いから、しょうがない。」
「なんだと~!! お前ら!」
ルイスはカイの首に腕を回し、笑っていた。もちろん首を絞められてるカイや仲間たち、商人の親子も笑っていた。
ルイスはユーリに町に着くまでの間に、『ブロンドの盾』の事を軽く教えてくれたのだ。
彼ら『ブロンドの盾』は冒険をしない冒険者パーティで冒険者の一割ぐらいは存在するが、あまり珍しくもないらしい。
元々、町の生まれのルイスは両親が病で倒れ、兄弟を育てていくために冒険者になった。
カイも鍛冶職人の次男生まれだが、兄貴が跡取りになったから冒険者になったと言うが、ルイス曰く、昔から家の手伝いもせずに木の剣を振り回して遊んでいたせいでもあるらしい。
他のメンバーも孤児だったり、レオンに憧れて冒険者になったが町を出る勇気が出なかった為、幼馴染である彼らはパーティを組んだそうだ。
彼らは町を中心とした村々の用心棒になったり、農繁期になったら人手が足りない時に手伝いに行ったりもする。
今回のように買い出しに出る商人の護衛を引き受けたり、薬師に頼まれれば薬草採取もするらしい。
『ブロンドの盾』は冒険者というより周辺の人たちから『何でも屋』として親しまれている商人のおじさんがユーリに教えてくれたのだ。
荷馬車に揺られながら夕方になる頃、目的地である町に到着した一行。
『ブロンドの盾』のおかげでユーリとリュウは、町の衛兵たちから色々と聞かれずにすんなりと町に入る事が出来た。
しかし、盗賊に襲われ森に逃がした事をルイスが衛兵に話したら、他のメンバーが衛兵たちに詳しく状況を説明すると共に、討伐もしくは捕まえに行く手筈を整える為、ルイスとカイ以外のメンバー二人とはここで別れることになった。
そのまま、荷馬車は町の中を進み、ある建物の前で止まった。
「おっさん。ありがとう。オレたちはここで降りるよ。
後日、礼金とか受け取りに行くからさ。」
「あぁ。ありがとな。」
「ユーリ。お前も降りろよ。
ギルドに用事があるんだろ?」
「あ。はい。おじさんもここまで乗せてくれて、ありがとうございました。
リュウ。降りるよ。」
ユーリはルイスに言われ、『ブロンドの盾』の三人と荷馬車を見送った。
「さてと、ギルドに報告ついでに、お前たちをギルドに紹介するぞ。」
ルイスたちはユーリとリュウを連れて、建物の中に入って行った。
「あ、『ブロンドの盾』の皆さん。おかえりなさい。」
「ただいま。っと、途中で一緒になったコイツを紹介させてくれ。」
中にいた女性がルイスたちに声をかけると、ルイスは挨拶を返し、カイはユーリを自分の前に出した。
「まぁ、可愛らしい女の子ね。
カイったら、もう妻子がいるのにこんな若い子にまで手を出すなんて…。」
「ちげーよ。そんなじゃねぇ~よ。」
カイと最初に声を掛けてきた女性とやり取りしていると、他のメンバーや職員らしき人たちから笑い声が聞こえた。
「ったく。ユーリ、あっちにいるにいちゃんがテイマーギルドの職員で、そっちにいる禿げたおっさんが冒険者ギルドの職員だ。で、さっき話しかけてきた女が受付だ。」
「禿げたは、余計だ。ルイス。」
「カイさん、結婚してるの?」
「あぁ、まぁな。」
「何をあっけなく言ってるんだよ。カイ。
小さい時から惚れてた道具屋のマリアちゃんとラブラブな癖によ~。」
「な!! うるせぇ~。何、子供にバラしてんだよ!」
「カイさん…。耳まで真っ赤だよ?」
同じ『ブロンドの盾』のメンバーに暴露され、ユーリにも弄られたカイは真っ赤になりながら、ルイスと共にユーリを冒険者ギルドのカウンターへ連れて行った。
「おっさん。途中の森付近の街道で盗賊に襲われた所をこの子が助けてくれたんだ。
ギルドで噂になってた少女じゃねぇか?」
「噂? 私、何かしましたか?」
「悪い噂じゃねぇよ。あのレオンさんに鍛えられたシアウルフを連れた少女。
その少女がまだEランクのままって事でギルド側がDランクに昇格させねぇ~と。と言う事が冒険者ギルド内で持ち切りでな。
嬢ちゃん。念のため聞くが、名前はユーリで間違いないな。
冒険者の登録カードを出してくれないか?」
冒険者ギルドの職員がユーリの顔を見て言ったので、ユーリは自分のカバンの中から自分の登録ガードを出した。
「おう。間違えねぇな。」
冒険者ギルドの職員がユーリのカードを確認すると、いつもだったらすぐに返してくれるカードをカウンターの引き出しにしまった。
代わりに、紙を出して何やら書き込んでいた。
「ユーリ。悪いが、カードはこのままこちらで預からせて貰う。
Dランク用の登録カードは明後日の夕方には出来るから、すまないがそれまでこの町で過ごしてくれないか?
あ、金はあるか? ないのなら、こいつら『ブロンドの盾』に宿代ぐらい出させるぜ。」
「あぁ。もちろんだ。
オレたちの命を助けてくれたんだ。そのぐらい安いもんだ。」
「大丈夫です。お金ならあるよ。
あ、そうだ。ここでも素材や薬草の買い取りをお願いしても良いですか?」
「おう。喜んで。ギルド内でもお前さんの素材はキレイだと評判は良いし、な。
拝んでみたかったんだ。」
ユーリは『アイテムカバン』から移動中に襲ってきた魔獣から剥いだ皮やツノ、薬草などを取り出し、カウンターに置いた。
「おぉ…。これは噂以上に丁寧かつ、無駄のない皮だ。
ルイスたちとは全然違う。
こいつらと来たら、初めの頃よりはマシだが、肉が付いてたり破れてたりするからな。」
「悪かったな!! 不器用で…。」
冒険者ギルドのおじさんはルイスたちを親指で指差し、二人をおちょくるとユーリが持ち込んだ素材などを一つ一つ確認ながら紙に書き出した。
しばらくすると、冒険者ギルドの職員が金貨七枚と銀貨三枚をユーリに手渡した。
「そうそう。登録カードが出来るまでの三日分の宿代は引かせて貰ってるから、そのまま受付のねえちゃんから部屋の鍵を貰ってくれ。」
冒険者ギルドの職員がそういうとユーリが持ってきた素材を奥の部屋に片付け始めたのだ。ルイスとカイは顔を合わせて頷くと、ユーリをテイマーギルドのカウンターの前まで連れて行った。
テイマーギルドの職員はリュウのセルト石の色を確認して、すぐに書類を取り出しユーリに見えるように書類を広げた。
「ユーリさんで間違いないようですね。
そちらのシアウルフ、『リュウ』くんですよね?」
「はい。そうですけど……。」
「書類によると、シアウルフが生後間もない時から、ユーリさんと従魔契約をし、もう二年ほど一緒にいらっしゃるそうですね。
そして、一度も人に危害を与えたことがありませんね。」
「生後二ヵ月の時に保護してから、ずっと家族みたいに暮らしてました。
人に危害? それなら、今回みたいに盗賊とかに噛みついたりしてましたよ?」
「悪党相手に危害を与えただけなら問題ありません。
従魔ですから、主人を守ろうとするのは当然の事ですから。」
「そういう事でしたら、一度もありません。」
「分かりました。
では、今付けていらっしゃる『セルト石』を外し、こちらをお付けください。」
テイマーギルドの職員が後ろの棚から小さな箱を取って、ユーリに見せるように開けた。
箱の中には『セルト石』の下に銀色に光る雫の形のアクセサリーが付いていた。
「こちらの石は、テイマーギルドが認めた従魔にしか付ける事を許されていないモノです。
これを付けていれば、どこの店にも入れますし、一緒に食事を食べる事も出来ます。
もう二つ、お渡しするモノがあるのですが、そちらは明日の夕方以降でなければ、お渡しすることができませんので、そちらは後ほどお持ちします。」
それを聞いたユーリはリュウに付いていた『セルト石』を外し、テイマーギルドの職員から新しい『セルト石』をリュウに付けたのだ。
ユーリに新しく付け替えて貰ったリュウは、誇らしげに座って尻尾を振っている。




