3-2 シンの苦悩 その1
ユーリは翌朝、目が覚めさっさと朝食を済ませ、罠や焚き火のあとなどを片付けた。
リュウと一緒に森の中で果物や薬草などを採取しながら、小さな町を目指した。
小さな町に着く前に、ユーリはリュウに『ウインド』をかけ土埃などを落としてから門番に話しかけた。
「お。嬢ちゃんは一人かい?」
「一人じゃないよ?
この子。リュウと一緒だよ。」
「へぇ・・・。シアウルフを従魔にするなんて・・・。
念のため、セルト石の確認をさせてもらうよ。」
ユーリの隣で大人しくおすわりをしているリュウの首輪についているセルト石の色を確認した。
「うん。綺麗な緑色だな。
嬢ちゃん。冒険者なんだよな?
この町は初めてかい?」
「はい。初めてです。」
「そうか。この町は小さいから冒険者ギルドとテイマーギルドは同じ建物だ。
従魔契約も更新しておくと良いよ。」
門番のおじさんが町の紹介をしてくれた通り、ユーリとリュウは町中を歩いていくと三階建ての建物に着いた。
ユーリは冒険者ギルドとテイマーギルドのマークがついた看板があるのを確認したので、中へ入って行った。
「ようこそ。いらっしゃいました。
あら。小さなお客さまね。」
「こんにちは。従魔契約の更新と素材の買い取りをお願いします。」
ユーリに声をかけた職員のお姉さんはユーリをカウンターへ連れて行ってくれた。
そして、一人のおじさんが従魔契約を更新して、その隣にいた筋肉質のおじさんが素材の買い取りをしてくれた。
最初に案内してくれたお姉さんがもう一度、話しかけてくれた。
「宿の手配とかもう決まってる?」
「いえ・・・。出来れば、リュウ・・・従魔と一緒に泊まれる宿が嬉しいんですけど・・・。」
「この上に宿があるから、テイマーギルドの上だから従魔と一緒でも大丈夫よ。
ちゃんと、専門家がいるからね・・・。
逆に、ここ以外の個人でやってる宿だと下手したら断られるわ。
長期滞在とか安いんだけどね・・・。
あ、一泊二食付きで銅八枚だけど大丈夫かしら?」
「はい。お金なら大丈夫です。
二泊お願いしてもいいですか?」
「えぇ。もちろんよ。
従魔も綺麗だし、大人しそうだしね。」
ユーリは受付のお姉さんが渡してくれた部屋の鍵を受け取り、二階へと向かったのだ。
ユーリが借りた部屋についた頃には夕暮れになっていたので町を歩くのはやめ、夕食までリュウのブラッシングや荷物の整理などをした。
翌日も部屋の下の受付近くのテーブルで朝食を食べる。
受付のお姉さんが「女の子の一人旅は何かとあぶないから。」と気を利かせてくれた為、昨晩も今朝も同じ席に座った。
ユーリは料理を作ってくれたおばさんに食器を戻し、「ご馳走様でした。」と言う。
おばさんはユーリの頭を撫で、「お粗末様でした。」と笑ってくれた。
ついでに、おばさんは旅の消耗品や簡易食材などを取り扱っているお店をユーリに紹介してくれて割引券までくれたのだった。
ユーリは昨夜、アイテムボックスの中を整理して薬草など取り出し、カウンターで買い取りお願いしたあとに、リュウと一緒に向かったのだ。
ユーリは紹介された店で必要な雑貨や食料品を購入したら、一割安くしてくれたのだ。
そして、本屋に立ち寄ったり薬屋に寄ったりして宿に戻って来たのだ。
お姉さんが「夜はお酒を出すから早めに夕食を食べた方が良い」と教えてくれていたので、ユーリは帰ったらすぐに夕飯を食べ、部屋に戻った。
翌朝、ユーリは受付のお姉さんにお礼を言って、その町を出たのだった。
ユーリが出て行った日の夜、シンは町にたどり着きユーリと同じギルドの上の宿に部屋を取り夕飯を取るとそのまま眠ったのだ。
シンが起きたのは、もう昼前で朝・昼食の二食分である事とまともな料理であった事もあり、シンは一食で三人分を頼んだのだった。
シンが半分以上食べた頃、ギルド職員と受付のお姉さんが女の子の冒険者が来ていた話をしていたのを耳にしたのだった。
シンは三人分の料理を平らげた後、受付のお姉さんに昨日旅立っていた少女の話を聞き、必要最低限の食料を急いで買い、その間に少女の情報を聞いた。
町を出る前にシンは、最後に門番に少女が向かったとされる方向を目指したのだった。
シンが町を出た半月ほど経った頃、ユーリは町を目指しつつ森で薬草を採ったり、現れた魔獣を倒して、町にたどり着いた。
ユーリは前の町と同じようにリュウの契約更新したり、寄り道した森でとったモノを冒険者ギルドで買い取って貰い、リュウと一緒に泊まれる宿を教えて貰ったら上の部屋を使うように言われたのでそのまま部屋を借りたのだった。
翌日、ユーリは食材など買いに出かけたが、日暮れ前には戻り早めの夕飯を取り、そのまま部屋から出なかったのだ。
その夜、シンはようやくユーリと同じ町に着いて、冒険者ギルドの宿を借り倒れるように眠ったのだった。
ユーリは準備をして軽く朝食を食べ、そのまま町に出た。
ユーリが町を出た一時間後にシンがやっと起きて、朝食を食べていた時にギルド職員たちが喋っていた内容を耳にする乱暴に男の襟を掴み聞くと、慌てて残った食事を口に入れそのまま町の外へと急いだ。
あれから半年後、ユーリはシンが追いかけてきている事にも気付かずにマイペースに旅を続けている。
少し大きめの町にシンがたどり着き、夕飯を頼んで近くにいた冒険者ギルド職員の男に自分より少し幼い少女が来ていないか尋ねた。
しかし、職員はそんな少女は見ていないと言われ、詳しく聞こうとした所に夕食が運ばれてきた。
シンは食べた後に聞こうとしたが、その頃には客が増えシンが話しかける暇もなかったのでそのまま自分の部屋へ戻ったのだ。
翌日、シンが町でユーリの情報を日暮れまで探し回ったが一度も出てこなかったのだ。
一方、ユーリはシンと同じ町に着いて二つのギルドに行き、いつも通り冒険者ギルドの上の宿を一部屋借り、早めの夕飯を取るとさっさと自分の部屋へと戻ったのだった。
シンは町中でユーリの情報を聞き回っていたら冒険者ギルドでは酒が提供され始めていたのだった。
馴染みの客と飲んでいた職員がうっかり少女の情報を聞き回っていることを話すと、一緒に飲んでいた冒険者たちがシンに絡み始め、シンは面倒そうだが連日ユーリと会えずにいる苛立ちからテーブルに置かれたビールを一気に飲み干したのだった。
翌日、ユーリは何事もなかったかのように減った食料品だけ購入するとそのまま町を出て行ったのだった。
シンは初めて飲んだアルコールとあの後、何杯か他の客が奢ってくれてビールを飲んでそのまま自分の部屋で寝て、起きたと共に頭痛と吐き気で苦しみながら昼過ぎにはようやく町を後にしたのだった。




