2-15 ディオンとお茶。
ユーリたちは屋敷に戻って来たのは午後二時ぐらいで、エドワードはお昼寝中でセシルも一緒に部屋で過ごしているようだ。
フィリウスは仕事中だそうだ。
サムは「父上の手伝いをして来ます。」と言って、三人から離れて行った。
レオンもシンも特にやる事がないので、ユーリと一緒に過ごすようだ。
「ユーリ嬢ちゃん。
これからどうするんだ?」
「うぅ~ん・・・。どうしよう・・・。
レオンさん、シンさん。何かする事ないの?」
シンは黙って首を振り、レオンは「特にないさ。」と言われた。
「じゃ~、昨日も今日もあまりリュウと遊べてないから、中庭で遊ぶ?」
ユーリはリュウの前に座り込み、話しかけたらリュウは短く「ワン!」と吠え、尻尾を嬉しそうに振っていた。
三人はそのまま中庭に向かおうとしたら、階段からディオンが降りてきたのだ。
「ユーリちゃん、レオン、シン。おかえり。
もう買い物は終わったのかの?」
「あ、ディオンおじいちゃん。ただいま。
買い物はさっき終わったの。
これから中庭でリュウと遊ぼうかと思うんだけど、一緒に行かない?」
「そうじゃの。
たまには、庭でのんびりするのも良いじゃろ~。」
ディオンはユーリの提案に乗り、四人で一緒に中庭へと向かった。
よくセシルと話をする席で、ディオンとユーリが座り、シンはそばで立っている。
レオンは現在、リュウと追いかけっこの最中である。
しばらくして、サムがお茶を人数分用意して持ってきたのだ。
「はい。どうぞ。
お熱いのでお気を付けください。」
「あぁ。ありがとう。サムや。」
ディオンはサムからお茶を受け取り、一口飲んでからテーブルに置いた。
「ユーリちゃん。
久しぶりの町はどうだったかの?」
「楽しかったよ。
みんながオマケしてくれたり、安くしてくれたりして思った以上にお金が余ったから、お菓子を買ってきたの。
あ、お茶うけにどうぞ。」
ユーリはそう言うとカバンの中から小さな包みを一つ出し、リボンを外してテーブルの上に置いた。
「おぉ。美味しそうなクッキーじゃな?
ユーリちゃん。頂いても良いのかの?」
「うん。ディオンおじいちゃん。
食べて。食べて。
まだみんなの分もいっぱいあるから大丈夫。」
ユーリが買ってきたクッキーをディオンは一つ取って食べた。
「これはあの店のクッキーじゃな?
果物の味が効いて甘さが控えめじゃが、上品でお茶に合うのぉ。」
「ディオンおじいちゃんに気に入って貰えて良かった~。
あ、サムさんもシンさんも食べてね?」
ユーリは立っているサムとシンに声をかけると、シンは無言で一つ食べたが、サムは首を振り断ったのだ。
「サムさん。お腹いっぱい?
レオンさんが来たら、きっと全部食べちゃうよ?」
「あはは。それもそうですね。
では、遠慮なく頂きますね。」
サムは笑いながら一つ手に取って食べた。
ユーリは昨日と今日の事をディオンに話した。
今までは他の人が準備してくれたのをただ受け取っていたり、サムの買い物に付き添ったりする事は合っても、自分のお金で購入する事、手に取って品定めをする事が初めてで楽しかった。
特に、昨日の午前中は見たことのない道具なんかも多かった為、レオンにどのようにして、どう使うかまで教えられながら、買うかどうかも決めたりしたのだ。
ユーリは次々と楽しそうに話しているのを、ディオンは時折「ほぉ~。」など言いながら目を細めて聞いてくれるのだ。
ユーリは昨日の武器屋の話が終わりかけると、一つだけ気になっていた事を聞いたのだ。
「ディオンおじいちゃん。サムさん。シンさん。」
「うん?どうしたのじゃ?」
「あのね。今日行ったお菓子屋さんがね。
私の事を『冒険者の姫』って言ってたんだけど、どういう意味なの?」
ユーリがディオンに聞いてみた所、ディオンとサムが目を合わせサムがゆっくりと口を開いたのだ。
「ユーリさん。この町に来た頃の事は覚えていますか?」
「うん。覚えてるよ。」
「ユーリさんがこの屋敷に来て、早二年。
もうそんなに経ってしまったのですね・・・。
初めて会った時からユーリさんも十五センチほど成長されましたね・・・。
レオンさまと屋敷を抜け出し、ギルド登録されましたよね。」
「・・・うん。」
「まだ小さな女の子が冒険者登録するなんて滅多にない事ですし、元Bランク冒険者のレオンさまからの紹介でしたし、当初からユーリさんはこの町で有名だったんです。
それから、クロード坊ちゃんたちの入学後に屋敷に戻ってから半年ほど、レオンさまたちと一緒に町で依頼を受けたりしていたじゃないですか?」
「・・・そうだったね・・・。
(でも、レオンさんと一緒だったし、薬草採取だけだったけどね・・・。)」
「あの頃から、冒険者たちから町民たちへと知名度が広がり、いつの間にか『冒険者の姫』という通り名が定着していたようです。
ユーリさんの愛らしさと、いつもレオンさまは付いていましたしね。」
「・・・レオンさんが一緒だったのは、フィルさん達が一人じゃ危ないからだったよね?」
「まぁ、それもそうじゃな。
でも、あの頃も今もユーリちゃんの可愛らしさでは人攫いに会ってもおかしくはないからの~。
フィリウスたちが心配するのも分からんでもないわ。」
サムがユーリに説明し、最後では冷たい目でサムを見ていたが、ディオンはそっとユーリの頭を撫でサムに助け船を出したのだった。
ユーリはディオンになだめられた後、後ろから少し息を切らしたレオンがやって来たのだ。
「何、楽しそうに話してるんだ?ユーリ嬢ちゃん。
サム、このお茶飲んでいいか?」
レオンはサムが短く「どうぞ。」と言うと、まだ口の付けられていない冷めたお茶を一気に飲み干した。
そして、テーブルにまだ半分ほど残っていたクッキーを一掴みして口いっぱいに頬張ったのだ。
その様子を見ていたシンを除いた三人が目を合わせて笑ったのだ。
その後、ユーリは武器屋で手入れ方法を丁寧に教わった事や防具屋でワックスを貰ったことをディオンに話した。
「あれ?
そういえば、レオンさん?」
「なんだい?ユーリ嬢ちゃん。」
「あの鎧って王都じゃなくてこの町で買ったの?」
「?あぁ・・・。あの鎧か?
ユーリ嬢ちゃんがギルドに登録した後、時間を見て買いに行ってたんだ。
森で使っていた鎧は・・・あまりにも酷かったから・・・。
この町の防具屋は王都と比べても質も品もそんな変わらんし、あのオヤジには俺も昔から世話になってたしな。
体のサイズもライとそう変わらないしな。
・・・そうだ。森で使ってた鎧はどこで手に入れたんだ。」
「アレ?
私が作ったの!頑張ったんだよ!!」
ユーリは胸を張って言ったら、実物を見ているレオンと見たことがないサムは呆れ果て、ディオンは抑えきれず笑っていた。
「が・・・頑張った・・・だと??」
「うん!!
森で拾ったり木から剥がしたりして、ヒモは木に絡まってたツルで全体の形を整えたり、柔らかくなるようにしたんだよ!」
「・・・通りで・・・。」
「ユーリちゃんや。
作った鎧はまだあるかの?」
ディオンに言われて、ユーリは『アイテムボックス』の中をガサゴソと探って引っ張り出したのだ。
引っ張り出してすぐにヒモは切れて、ただの木の革にツルが絡まった状態のモノが出てきた。
ユーリが自信作だと思っていた鎧を見た瞬間、レオンは大笑いしサムとディオンは顔を背けながら笑いを堪えていたが、サムは耐え切れず涙目になりながら笑った。
シンは手に取りながら、「薪にでもしましょうか。」と言って拾い集めた。
レオンはまだ笑いながら、「薪にしろ。薪にしろ。」と勝手に言った。
ユーリは膨れながら、「笑い過ぎ!!」とレオンを叩いたのだった。




