2-13 夢の中、セルト神。
ユーリがサラレイン家の人たちから旅立つ事を許された夜、珍しく興奮して中々寝付けらなかった。
ウトウトして、いつの間にか寝ていたのだが・・・。
「ユーリ。ユーリよ。」
ユーリは真っ暗なのは自分が目を閉じていた事に気づき、ゆっくりと目を開けた。
そこはどこかで見たことのある不思議な空間だったのだ。
「(ここは・・・どこだっけ・・・。あ、転生する前に神さまたちと話してた不思議空間だ・・・。)
えっと・・・・どちら様でしたっけ?
(てか、私眠いだけどな・・・。早くゆっくり寝かせろよ・・・。)」
「相変わらず、神に対して酷い事を思っているようだな・・・。
お主には信仰心のかけらも感じんわ・・・。
私は、ルージアさまの副神 セルト神だ。」
「あ、セルト神さま。お久しぶりです。
信仰心ですか・・・?以前いた世界の神があれだったんですよ?
神さま同士で酔っ払って殺されたのに、信仰心も失せますよ。」
ユーリの一言で、お互いに思い出しため息をついた。
「と、ところでユーリ。
ここはお主の夢で私が直接、お主の魂に話しかけておる。
よって、お主の体はぐっすり眠っておる状態だ。
明日の朝にはいつものように体の疲れも取れているハズだから安心するが良い。」
「ハズ?なんですか?」
「・・・・あぁ・・・。
本来、神と言えど、こうして生きているモノと魂を通して会話する事などあってはならないのだ。」
「・・・セルト神さまって、やってはいけない事をするような方ではなかった筈では?」
「う・・・。私とて、本当はする予定ではなかったのだ。
一つ、お主に謝っておかなければいけない事があってな・・・。」
「・・・あぁ~。もしかして、私の運命とか特殊スキルとか、ルージア神さまが弄った事ですか?」
「・・・私の言いにくい事をスラスラと・・・。
お主も気づいておったのか?」
「えぇ・・・。
だって、いくらなんでもおかしいぐらいに異世界転生であるあるのチートやハーレムフラグを回収していくんですもん・・・。
・・・ホント、怖いぐらいに・・・。」
「それに関しては本当に済まない事をしてしまった。
ユーリ。申し訳ない事をした。」
セルト神さまは土下座をし、頭を地面に当たるぐらいに深々と下げ謝った。
「ま・・・待ってください。
セルト神さま・・・。頭を上げてください・・・。
てか、土下座なんかどこで覚えたのですか!」
ユーリはセルト神さまの腕を持ち、セルト神さまを立たせた。
「以前、戦神からお主の前の世界の神から教わったという最上級の謝り方だと教わっていたのだ。」
「(謝り方の最上級が土下座かよ・・・。嘘、教えるなよ。嘘を・・・。
土下座はごく一部の地域にしかないぞ。)」
セルト神さまはショックを受けたようだが、小さく咳払いをして話を進めた。
「お主の魂をここに留まらせておくのにも時間の制限があるのだ。
要件は、さっさと済ませるぞ。
お主が転生してしばらく・・・二週間ぐらいか。
私は一応マメにお主の様子を見ておったのだが、他の仕事やらが忙しくて手が離せなくなったのだ。
その間に、ルージアさまがお主の様子を覗いて主神が自ら加護を与えたり・・・運命を少し弄ったり・・・していたようだ。
それに気付いたのはここ半年ほどで・・・。
私が出来る範囲で運命を出来うる限り、元に戻しておいた。
さすがに主神の加護や祝福は外せないし、すでに生まれてしまった出会いなどは消せない。
が、以前からお主が望んでいた、あまり目立たず生きると言う事も選択次第で可能な筈だ。」
「可能ですか・・・。
あ、周りがいやに押しが強かったり、私が流されやすかったり・・・。」
「お主が流されやすいのは神のせいではない。
お主の性格だ。」
「・・・そうですか・・・。」
ユーリは足をついてうなだれていた。
その後、セルト神さまとユーリは少し話してユーリは目を覚ました。
ユーリは軽く背伸びをして、夢の中でセルト神さまが言っていた通り熟睡した後の気怠さを感じつつ、着替えを済ますのだった。
今日は久しぶりに町に出るという事で、朝のリュウのブラッシングはいつもより丁寧にした。
ユーリは、アクアの事を思い出したが、その姿はエドワードと一緒にお昼寝をしている様子で、アクアとエドワードならこれからもうまくいくと信じる事が出来たのだ。
部屋の外からサムが声をかけてくれ、朝食に向かう事にした。
「さあ!ユーリ嬢ちゃん。
町へ買い物に行こう!」
レオンがユーリを抱き上げようとしたのをユーリは断り、手を握って屋敷を出たのだ。
シンとメモを持ちながらブツブツ言っているサムも一緒に同行するようだ。
「ユーリさんの旅に必要な道具のリストアップは昨夜のうちにしてある。
これで買い忘れなどしないようにしなければ・・・。」
サムの監視のもとしっかりと買い忘れや買い過ぎ、また値段交渉までしそうになっていたが、さすがにユーリは値段交渉までしなくて構わないと断った。
でも、店主は気前がいい人が多かったり、レオンたち領主関係者だと分かるとオマケが付いたり少し安くしてくれたのだ。
「えっと・・・野宿用の鍋に食器類、魔獣除けの草・・・。着替えに・・・・。」
ユーリとサムは、サムが用意してくれたメモに印をして確認していく。
午前中で買い物のほとんどは買い終わり、あとは残りの財産で防具と武器を新調するかどうかを確認するだけだ。
「まぁ、防具も武器もそのままでも良いがサイズを合わせて貰ったり、研ぎ直して貰っといた方がいいぞ。
少しでも違和感があるようなら、旅の間にちょくちょく町で調整して貰うといいぞ。
有料だが、専門家に見てもらうのが一番だ。
俺たちも冒険者の時はよくお世話になったからな・・・。
成長期の時なんか、二・三ヵ月で一回りもデカくなって、そのたびに買い直している余裕もなかったしな・・・。」
「へぇ・・・・。
フィルさんもレオンさんもそういう時期があったんだ・・・。」
「おうよ。一番ひどい時期なんか関節が痛くて、少し町に留まったからな・・・。」
「成長痛ですね。
ユーリさんには関係ないかもしれませんよ?
成長痛とは急激な体の成長による痛みで、主に男の子に起こりやすいと聞きますし。」
「そうなんだ・・・。(知ってるけどね・・・。)
あれ?シンさんは?」
「さあ?そのうち、戻ってくるさ。」
「そうですね。
もう少し待って戻って来ないようでしたら、私が探してきます。」
三十分ほど食後のお茶を楽しんでいた三人の元にシンが戻って来たのだ。
「シン。いつも言っているでしょう。
どこかに行くのなら一言、声をかけなさいと・・・。」
サムはシンを叱ると、シンは頷くだけで返事をしなかったのだ。
「サムさんって・・・シンさんのお兄さんみたいだよね?レオンさん。」
「そうか?兄貴っていうか母親だな・・・。」
ユーリとレオンはサムとシンの様子を見ながら笑い合ったら、二人もサムに怒られたのだった。
その後、先に武器屋に行って、王都で買ったショートソードとナイフを研ぎ直して貰った。
武器屋の店主が丁寧に使っていると褒めてもらい、普段の武器の手入れ方法を教えて貰った。
武器の手入れ方法を一つ一つ教わっている間に、夕日が近付いてきた。
「今日はここまでです。さあ、屋敷に戻りましょう。
レオン様、ユーリさん、シン。」
「あれ?またシンのヤツがどこかに行ったぞ?」
「またですか・・・。
まぁ、あの子も十六になるんですから、少しぐらい大目に見ましょう。」
「はいはい!」
「なんですか?ユーリさん。」
「私と二歳半しか違わないんだったら私ももう少し町の中を見て行っていい?」
ユーリが元気にサムにそう言うと、サムはレオンを見た。
レオンは頷き、ユーリも持ち上げようとしたのだ。
さすがに、抱きかかえられるのは嫌だったユーリは素直にサムとレオンに謝ったのだった。
武器を買ったのは屋敷のある町でなく、王都でした・・・。
すいません。




