2-12 過保護な人たち
その後、フィリウスとセシルは一旦、「夫婦で話し合ってくる。」とフィリウスはセシルを連れて自分たちの部屋に戻って行った。
ディオンは孫のエドワードと一緒に中庭に出て、「遊ばせると来る」と言って、エドワードをサムが抱きかかえて連れて行った。
レオンとシン、ユーリが談話室に残ったのだ。
「ユーリ嬢ちゃん。
旅に出るっていうが、急にそう思ったんだ?」
レオンはユーリにそう話すと、近くにあった一人用の椅子に座り、シンも椅子に座るように合図をした。
「え・・っと。
屋敷の人たちにはお世話になりっ放しだし、みんなに守って貰いっ放しで・・・。
このまま、みんなに甘えてばかりいると一人前になれないって言うか・・・。
駄目な大人になりそうというか・・・。」
「まだ十三歳の子供だ。
まだまだ大人に甘えていてもいい年だと思うぞ?
それに、ユーリ嬢ちゃんは息子のライやクロード坊ちゃんなんかよりしっかりしている。
駄目な大人にはなりやしないさ。
まぁ、守られ過ぎでいるのは・・・あながち間違ってはないか・・・。
この前の視察の時なんか、ほとんど魔獣討伐なんか出来なかったもんな・・・。
フィルやサムが過保護気味だったしな・・・。
セシルさまに至っては・・・。」
レオンはユーリに優しく話しかけ、最後の方は苦いものを口にしたかのような顔をしていた。
「・・・。私より自立していると思います。」
シンが珍しく自分の意見を口にしたので、レオンとユーリは少し驚いていた。
その日の夕飯が始まるので一同は食堂に顔を出した。
セシルは一人暗い顔で落ち込んでいた。
「もう話し合ったじゃないか。
いつもの元気な笑顔を見せておくれ。」
「でも・・・。」
まだショックなセシルの背中をフィリウスが支えると、セシルは背筋を伸ばして前を向いて席に着いた。
「そうね・・・。
そうよ!ユーリちゃんの門出よ。
暗い顔をしていてもしょうがないわ!
ここはパッと明るくお祝いをしなきゃね。」
セシルがそういうと次々と食事が運ばれてくるのだった。
食事はいつも以上に豪華で、今まで屋敷では滅多に出されなかったワインも出され、大人たちは飲んだ。
しかも、今夜だけはアンディー、ヘレナ、サム、シンも一緒に食卓に座り共に食べた。
「ユーリちゃんと出会って、もう二年近く経つんだな・・・。
あの頃はまだ痩せてて小さかったのに、今ではシンが初めて屋敷に来た時よりもしっかりして立派になった。」
「そうね・・・。
あの頃はお人形さんみたいでちょっと危なっかしい所もあったけど、今ではすっかり一人前のレディですものね。」
「そうそう。
初めてあった頃のリュウなんか片手で持ち上げれるぐらいだったのに、こんなに大きくなりやがって・・・・。」
フィリウス、セシルはユーリを見たり昔を思い出しながら言い、レオンはリュウの頭を撫でながら話した。
「ほほ・・・。
子供の成長というのは早いもんじゃよ。
フィリウスたちもいつの間にか立派になって・・・。
気づいたら、こんな可愛い孫も出来ておるのじゃからな・・・。」
ディオンはフィリウスとエドワードを見ながら愛おしそうに言った。
「本当ですわ。ディオンさま。
フィリウスさまがまだエドワードさまと同じ頃なんかオズワードさまにくっついて離れなかったりイアンさまを抱き、そのままどこかにいってしまわれたり・・・。」
「へ・・・ヘレナ。私の子供の頃の話は・・・。」
「そのような事もありましたな~。」
ヘレナやアンディーが昔話をしているとフィリウスは慌てて止めようとした。
そんな楽しい賑やかな宴も終わり、各自部屋に戻ったのだ。
翌日、また談話室でみんなが集まっていたが、昨日とは打って変わって皆、笑顔で話をしている。
「で、ユーリちゃん。
君が旅に出るのは了承したが、どうしてそんなに旅に出たいんだい。
何か目的でもあるのかい?」
フィリウスは皆の代表でユーリに話しかけた。
「えっと・・・。まず、旅で色々な事を経験して、一人前の冒険者になりたいと思っています。
この前の視察の旅ではほとんどレオンさんが道中に出た盗賊とか魔獣を退治しちゃったし・・・。
自分の身を守れるぐらいは強くなりたいです。」
「でも、ユーリちゃん。
ユーリちゃんもレオンたちと一緒にゴブリン退治をしてそれなりの活躍はしたとレオンから報告を受けてるよ。」
「あぁ。ロード相手にしながら見てたが、中々の戦いぶりだったぞ。
あ、そうか。
俺と同じBランク冒険者でも目指すのか?」
「(ロードの相手をしながら見てたのか・・・・さすが、レオンさんだ・・・。)
えっと、そこまで強くなるつもりはないです。
とりあえず、おじいちゃん・・・育てのおじいちゃんを探そうと思います。」
「育て・・・。」
「育てのおじいさんって人嫌いでユーリを捨てた奴だろ。
いちいち探しに行く必要なんかないぞ。
こんな幼い可愛いユーリ嬢ちゃんを一人にしたんだ。」
「そうだよ。ユーリちゃんの記憶まで消して姿をくらませたんだ。
ロクなヤツじゃないさ。」
「レオンさん・・・。フィリウスさん・・・。
おじいちゃんはそんな悪い人じゃないと思うの。
何か事情があったんだと思うの。
(事情も何もいないんだけどね・・・。)」
「ふむ・・・・。
もしかしたら、もうこの世にはいないのかもしれないぞ?
村里から離れ、暮らしていたんだ。
己の死期を悟ってユーリちゃんを安全な森まで送ったのじゃろ・・・。」
「「父上。」」
「「「ディオンさま」」」
「えっと・・・。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないです。
おじいちゃんと暮らしていた森はたいだい覚えているので、そこまで行けば分かります。
それに、おじいちゃんの従魔たちの事も気になるし、一度は会いに行きたいと思ってました。」
「ふむ・・・。それもそうじゃなぁ・・・。
レオン、悪いが明日、ユーリちゃんと一緒に町に買い物に行ってくれないだろうか?」
「買い物ですか?ディオンさま。」
「あぁ。そうだ。
ユーリちゃんが一人旅すると言っても初めての事だ。
何が必要か、一緒に見て探してやってくれ。」
「それなら、このレオンにお任せ下さい。
ユーリ嬢ちゃん、明日は一緒に道具やら買いに行くか!」
「うん。ありがとう。レオンさん。」
「あ、お金なら私たちが用意しよう。
必要なものがあるなら、レオンにお金を渡しておくからそれで買ったらいいよ。」
レオンとユーリが話していると、フィリウスが口を挟んできた。
ディオンは咳払いをしてフィリウスに「余計な手出しも無用じゃ。」と叱ったのだ。
「フィリウスさん。たぶん大丈夫。
冒険者ギルドに登録した時に素材を売ったお金もあるし、視察旅行の時のお金も全部残ってるから、自分で払えるよ。
自分のモノは自分で出さないと、一人前の冒険者じゃないもん!」
そう自信満々にユーリがフィリウスに言うと、フィリウスは「そんな・・・。」と少し涙目になりながら呟いたのだ。
その晩、ディオンは王都にいるオズワードに手紙を書いていたのだった。
ユーリは自室で自分の全財産を確認していたのだ。
(このぐらいあれば、十分だよね・・・。)




