2-9 クロードとライ。そして、ディオン。
フィリウスたちはオズワードと和解し、今では仲の良い兄弟となっていた。
ちょっとフィリウスとイアンがオズワードの扱いが雑だが・・・。
翌日、クロードとライが宿に来た。
オズワードの家でも良かったのが、人数も多いのでこのまま宿に泊まる事になったのだ。
久しぶりに再会したクロードとライは身長が伸び、心も成長した様子だった。
一年近く、親元を離れ寮生活、もちろん専属の使用人は就くのだが自分たちで考え、行動するため、自立心が伸びるようだ。
一日中、クロードとライが学園生活の事を話し、クロードは特に勉学と剣術を頑張り、ライは勉学と調合や魔法の勉強を頑張ったそうだ。
その上、クロードは勉学ではトップクラスで学年の代表となっていたのだ。
本来では、長期休暇は一ヵ月ほどなのだが、クロードは学年の代表として役割がある為、一週間も早く学園に戻らないといけないようだ。
その後、オズワードも合流してみんなで夕食を食べた。
セシルさんは空間魔法であるワープが使えるみたいだが、全員を屋敷まで移動させるのはさすがに難しいと話していたら、オズワードが王都にいる魔法使いを雇えば大丈夫と言っていたので、次の日みんなでワープをさせてもらう事になった。
ディオンたちは王都から屋敷に戻り、以前と同じような生活を過ごしたのだ。
クロードはレオン相手に剣の練習をしたり、ライとユーリはヘレナから薬作りを教わったり、クロードがシンに挑んでみたり・・・。
(シンさんも成長したんだな・・・。
クロードくん相手にちゃんと手加減が出来るようになってる・・・。
相変わらずの無表情だけど・・・。)
そんなある日、クロードはユーリが住んでいた森の家に行きたいと言い出したのだが、時間的に難しいので、屋敷の近い森にある見張り小屋でレオンとサム、シンが付き添いでユーリとクロード、ライが三日間泊まったのだ。
クロードとライはトビーラビットなどを二人だけで初めて狩りをし、ユーリがそれらを捌き、料理はサムがしているのをユーリが手伝った。
個室は一つしかなかったので、ユーリが一人使わせてもらう事になった。
(あのクロード君もあっさり、私が使う事を許したな・・・。
学園に入る前だったら、自分が使うとか言いそうだったのに・・・。)
野外合宿も終わり、そろそろクロードとライが学園に戻る頃になった。
子供二人ぐらいなら、セシルの魔法で移動できるので早めに王都に行き、準備をしに行ったのだ。
フィリウスとレオンはセシルのお迎えと王都での仕事の為、二人も馬車で王都に向かった。
エドワードは執事長ご夫婦であるアンディーとヘレナが面倒を見てくれるようだ。
昼間はユーリとリュウ、アクアがいるから寂しくもない。
特にエドワードはアクアをぬいぐるみのように抱きしめ、夜も一緒に寝るようになった。
ちなみに、以前はリュウがその役目だったのだが、さすがに大きく成長した為、抱きしめながら移動したり出来ず、エドワードはリュウよりアクアの大きさの方を好んだ。
人数が減り、食事も三人だけで食べる事になった。
ある夕飯のあと、エドワードはもう寝てしまったあと、ユーリはヘレナに声をかけられたのだった。
「ユーリさん。ディオンさまからお話があるそうなので、ディオンさまのお部屋にお越しください。」
「分かりました。
(話?なんだろう?
もしかして、まだ養女にする事を諦めてないとか・・・。)」
「ディオンさん。
ユーリさんをお連れしました。」
ヘレナがディオンに挨拶してから返事が返って来たので、そのままユーリを部屋に入れたのだ。
「夜遅くに呼び出して悪かったの。ユーリちゃん。」
ディオンは窓辺に立って振り返って、いつもの笑顔で出迎えた。
部屋の中にはディオンとアンディー、ヘレナ。そして、ユーリがいる。
サムとシンは寝ているエドワードを見守っているそうだ。
「ユーリちゃんがこの屋敷に来て、もう一年以上経つのじゃなぁ・・・。
レオンと出会って、流れでこの屋敷まで連れて来てしまって、そのまま一年もユーリちゃんを留めてしまったの~。
ユーリちゃん。
ユーリちゃんはこれからどうしたいのじゃ?
もちろん、このままこの屋敷で暮らしても構わん。
じゃが、ユーリちゃんはここでの生活ではちと狭い気がしての・・・。
なぁに、ユーリちゃんがしたい事があるのなら儂は止めん。
フィリウスたちにも儂からちゃんと言い聞かせる。」
ディオンは思い出しながらゆっくりと話した。
愛おしそうに目を細めたりしながら、強い信念を感じるその瞳に目を逸らさずにユーリは聞いていたのだ。
「なぁに。今すぐ答えを出せとは言わんよ。
フィリウスたちが王都から戻ってくるまでの間に答えを出してくれたら良いのじゃ。」
「ディオンおじいさ・・・ディオンさま。
今までディオンさま、フィリウスさま、セシルさま、他の方にもいっぱいお世話になりました。
私、みんなにお返しが全然出来てないです。
何か恩返しを・・・。」
「恩返しとな・・・。
ユーリちゃんは儂らに色々と恩返して貰ったのだぞ。」
ユーリはディオンの言葉に驚いた。
ディオンはたまに見せる子供っぽさの残る笑顔でユーリを見た。
「いつもフィリウスから冒険の話を聞いていて、儂が冒険したくなったのは以前にも話したじゃろ?
儂はな。フィリウスに領主を渡してからあまり屋敷の外には出ることがなかったのじゃ。
跡継ぎとしてオズワードを育てていたが、側近として王都で働くことになり、次男であるフィリウスを領主として働いてもらう事にずっと後ろめたさを感じておったのじゃ。
一年に一度、視察でレオンと二人で領内を回っていたのを許していたのはそのためじゃ。
今回、ユーリちゃんに領内を見てもらいたかったのと儂が冒険をしたいからゆっくり半年かけて色々見せて貰った。
儂が屋敷を半年も空けたがフィリウスは領主として役目をこなしていた。
儂の子離れも、フィリウスの親離れもこれで大丈夫じゃ。
それに、王都におるオズワードとイアン、それにフィリウスは子供の頃のように仲の良い兄弟に戻ったしな。
オズワードの意外な一面が見えたのは思わなかったがな・・・。
クロードはユーリちゃんと会うまでは少しワガママな所が気になっていたが、ユーリちゃんと出会ってあまり言わなくなったし、学園生活でも問題なく過ごせている。
ライもそうじゃな。
レオンが子離れ出来てなかったし、ライも少し気が弱い所があったが立派に成長した。
レオンもいつもライを心配していたが、もうあまり心配なんかしなくなって子離れも出来た。
ユーリちゃんのおかげで皆が成長できたのじゃ。
ユーリちゃんにしか出来ない、儂らの方こそ返しても返しきれないぐらいの恩が出来たぐらいじゃ。」
ディオンはユーリの元にやって来て、優しく頭を撫でてくれたのだ。
ユーリはそんな優しいディオンの言葉を聞いて、涙を流したのだ・・・。
翌朝、いつもより早めに目が覚めたユーリ。
目を覚まし、ベッドの上で昨日の事を思い出したのだ。
どうやら、ユーリはあのままディオンの前で泣き続け、気付いたら寝てしまったので、アンディーかサム、シンかがユーリの部屋まで連れて来てくれたのだろう・・・。
(私のしたい事かぁ・・・。
このまま、この屋敷にいるのも悪くないとは思うけど・・・。
いつか大人になったらそれはそれで大変な事になりそう・・・。
セシルさんも悪い人じゃないけど、何度かドレスを着たけど慣れないというか高級過ぎて汚しそうで怖いんだよな・・・。
私もリュウも屋敷暮らしより森みたいな広い場所で駆け回る方が似合ってるし・・・。
特にサムさんが行動の範囲を狭めてるような・・・。
悪意はない。悪意はないけど・・・ちょっと過保護なんだよね・・・。
何かするときはいつもレオンさんがいるけど・・・
結構好きに行動させてくれるし、シンさんは・・・見てるだけなんだよな・・・。
多分、二人とも特に何も言わないからサムさんが張り切っちゃってる感じかな・・・。
ディオンさんがフィルさんやセシルさんを言い聞かせてくれるとは言ったって・・・。
意味もなく旅がしたいとか言っても聞いてもらえなさそうだしな・・・。
あ!おじいちゃん。
人嫌いのおじいちゃんがいた設定になってたな!
とりあえず、探しに行くことにしてみようかな・・・?
忘れてた・・・。
ホントはいないおじいちゃんだから、忘れてたよ・・・。)
ユーリは新たに決意を固めたのだ。




