2-8 再び、王都
ディオンたちは再び王都に着いた。
フィリウスたちはもう王都に着いており、宿で待っているとディオンが言っていた。
「ユーリちゃん。久しぶり。
元気だったかい?
すっかり大きくなったな・・・。」
「本当に・・・。
すっかりレディっぽくなっちゃって・・・。
やっぱり、もう一人産もうかしら・・・。」
セシルはユーリを抱き着いて来て、後ろからゆっくりと近付いてきたフィリウスはセシルの声を聞いてむせていた。
アンディーの後ろに隠れていたエドワードはリュウの姿を見て走って抱きしめた。
ユーリがセシルから解放され、みんなでお茶を飲んでいたが・・・。
エドワードはリュウから離れなかった。
ユーリが話しかけようとすると、エドワードはリュウの影に隠れて中々目を合わせてくれない。
そんな様子をセシルとフィリウス達が見ながら微笑んでいた。
「?エドワード?
忘れちゃったのかな?ユーリだよ?」
「大丈夫よ。ユーリちゃん。
ただ、恥ずかしがってるだけよ。」
セシルがウィンクしながら話すとエドワードがセシルの元に行き、足を軽く叩いていた。
(あぁ・・・。久しぶりに会ったからかな・・・。
リュウにはすぐに馴染んだのに・・・。)
「ユーリちゃん王都に着いたばかりだろ?
クロードとライは明後日から長期休暇だし今夜は早くゆっくり寝た方が良い。」
ユーリはフィリウスに言われたように、部屋でゆっくり過ごしているとヘレナとマヤが部屋にやって来て、お風呂に入るように勧めたので入る事にした。
ヘレナが新しい赤い首輪を渡してくれたので、ユーリはリュウの首輪を付け替えた。
翌朝、食後からユーリはセシルに捕まったのだ。
もちろん、用意されていたドレスのサイズ直しから、セシルの話し相手だ。
午後からはユーリも共にみんなと応接室でお茶を飲んだ。
「ユーリちゃん。昨日も言ったが半年も会わなかった間に身長も伸びたね・・・。
私の胸ぐらいだったのに今では肩ぐらいあるよね?
髪も伸びてすっかりキレイのロングヘアだ・・・。
リュウのすっかり立派な成獣だ。
初めて会った時の姿からは考えられないぐらい大きく立派になった。」
「えぇ・・・。そうね。
私ね、ユーリちゃんに会えるのが楽しみで色々リボンを用意したのよ。
ユーリちゃんの髪には何色が似合うから・・・。
あ、このレースの付いたリボンとか、花びらのように細工しているリボンも良いわね。」
その後、ディオンの視察旅行の話をフィリウスとセシルが聞いて来たのだ。
「すごいね。ワーム退治からゴブリン退治か・・・。
我が領内の治安を守ってくれてありがとう。ユーリちゃん。」
「ゴブリンですって・・・。
ユーリちゃん、傷は大丈夫なの?
そのキレイな肌に傷でも残ったら・・・。」
フィリウスは感謝をしてくれ、セシルは心配をしてくれた事が嬉しかった。
嬉しいが、セシルの心配する方向がちょっと違うので戸惑っていたのだ。
フィリウスは、一度時計を見て「そろそろ行こうか?」とソファから立った。
どうやら、みんなで夕飯を外で食べに行くようだった。
まだ明るい内に王宮近くのフィリウスの兄、オズワードの家に来たのだ。
「フィルさん。家、間違ってない?」
ユーリは家を見て驚き、フィリウスに聞いた。
「あはは・・・。
やはり、ユーリちゃんもそう思うよね・・・。
前は前でシンプル過ぎて驚いたけど・・・まさかこうなってたとは・・・。」
前は壁も屋根も素材そのままの色だったのに、今回は壁が薄い緑で屋根も濃い緑で玄関の周りには草花が生えており、木も植えてあったのだ。
そして、使用人は老夫婦だけだったのに獣人族の若い夫婦と人間族のエドワードと同じぐらいの男の子もいた。
ディオンたちは老夫婦に応接室まで案内をしてもらった。
しばらくしたら、オズワードと今日はちゃんと正装しているイアンがやって来た。
「ようこそおいで下さいました。父上、それとフィルにセシル殿、ライにユーリちゃん。」
オズワードがディオンたちに挨拶をして、そのあとユーリの元にやって来て抱きしめた。
「「「な!」」」
その場にいた全員がオズワードの行動に驚いていた。
しかし、フィリウスはすぐに我に戻り、オズワードとユーリを引き離したのだった。
「何をするのですか?兄上。
あの壁と屋根はどうしたのですか?
あと、使用人が増えているのですか?」
「何って、挨拶だ。
壁と屋根は周りの家に合わせてみたんだ。
使用人は二人だけだと負担になると思って、新たに雇っただけだ。
あぁ・・・。
そうか。
ユーリちゃんだけに挨拶するのもなんだ。父上。」
オズワードはそういうとディオンに優しく抱きしめ、ディオンも片手で抱きしめた。
その後、オズワードは両手を広げ、笑顔でフィリウスに抱き着こうとした。
が、フィリウスはオズワードのお腹にブローを入れオズワードはうずくまった。
「な・・・何をするんだ。兄に向かって・・・。
「何って、こっちが聞きたいです。兄上・・・。
何が悲しくて男に抱き着かれないといけないのですか?
気持ち悪い・・・」
「な。兄に向かって気持ち悪いとは・・・。」
オズワードは痛みが和らぎ、体を起こしセシルと目が合った。
「・・・セシル殿は、フィルの嫁だ。
弟の嫁には手を出すわけにいかん。」
オズワードはそう呟くと、セシルの隣にいたレオンに抱き着いた。
レオンはビクッとなったが、妙な顔をしながら固まっていた。
そして、エドワードを持ち上げ抱きしめたのだ。
「まぁ。エドワード。良かったわね。
初めてオズワード叔父さまに抱っこされたわね。」
セシルは喜ぶと、エドワードは少し笑顔を見せたがセシルに小さな腕を伸ばし、そのままセシルの腕の中に移動した。
オズワードはソファの傍まで来たが一瞬固まり、近くのイアンに抱き着こうとした。
イアンはすり抜け、オズワードは頭から床に転んだ。
「イアン。なぜ、避けるのだ。」
「なぜって、オズワードお兄様がおかしな事をしようとしたからです。」
イアンは顔色変えずにスラスラと言った。
「まだ、お前がエドワードと同じ頃は抱っこしろとせがんできたのに・・・。」
オズワードはブツブツと言っていたが、使用人の老いた女性がお茶を持って入って来て、お茶を入れる。
それを一緒に入って来た、まだ幼い男の子がディオンとフィリウスの元に持ってきた。
夕飯の準備が整ったとの事で、全員で移動した。
なんでも、とある貴族が陰で使用人に暴力をふるっていたのを摘発した時に助けたのが獣人族の夫婦とまだ幼い男の子だそうだ。
オズワードが特に弱っていた三人を保護し、そのまま雇ったそうだ。
「兄上も人らしい感情があったのですね・・・。」
「噂は耳にしてたが、本当だったとはな・・・。
成長したの~。」
フィリウスは驚きを隠せず、ディオンは自分のヒゲを撫でながら感心していたのだ。
「あの『ゼノンの悪魔』が人を保護したとか・・・。」
レオンはユーリの隣で驚きながら呟いたのだ。
視察旅行の時、レオンからオズワードの事を聞いたユーリだが、何でも横領など噂が絶えなかった貴族や、位を縦にしながらもまともな成果を出さなかった貴族などの財産を没収したり、爵位を下げたり、時には爵位を返上させたりして三十代でこの国を変えたそうだ。
そのやり方もそうだが、容赦なくやったため初めは国民から支持されたが、やり過ぎとまで言われ、気付いた時には『ゼノンの悪魔』もしくは『氷結のオズワード』という別名がついたそうだ。
ディオン曰く、昔から生真面目で潔癖気味で少し可愛げがないが優秀な息子だそうだ。
ユーリはそんな事を思い出しながら、(まぁ、ここまで変わると驚くよな・・・。)と呑気な事を思っていたのだ。
夕飯後も少し応接室で話している間、ユーリはエドワードと使用人の男の子とリュウの面倒を見ていた。
二人はすぐに仲良くなり、リュウが上手く遊ばせている感じだったので、ユーリはただ近くで見ているぐらいで済んだ。




