2-5 視察 その一
ディオンとユーリ、レオンたち五人が旅立つ日は早くやって来た。
セシルとフィリウスは嫌になったら早く帰ってきたら良いと言って、エドワードは良く分かっていなかったがリュウから離れようとしないので、少し手間取ったのだ。
ディオンがいるので、旅の間は馬車で移動することになった。
以前、王都までの行き返りに使った馬車より少し狭いが、後ろと上に荷台が付いてる。
馬も一頭増えて、三頭の馬が引いている。
夕食は、屋敷の料理人が下ごしらえ済みのスープと野菜、パンをみんなで食べ、リュウは特製のお皿に乗った生肉を食べていた。
アクアは皆が食事のために馬車の外に移動した後、残って馬車の中をキレイにしていた。
「ユーリ嬢ちゃんのあの馬車は初めてだったか?
三頭の馬の方がスピードはあまり出ないが、それなりの重量を運べるだ。」
「そうですよ。ユーリさん。
一応、旅という事で荷物もあまり持って来れず、私が色々選ばせて頂きました。」
レオンは馬車の説明をし、サムが補足をしてくれた。
三日後、朝食の時にレオンがそろそろ小さな町に着くぞ。と言ってくれた。
しばらく、道なり進んだところで、何やら叫び声や喚き声が聞こえた。
どうやら、町に戻ろうとした荷馬車が盗賊に襲われていたようだが、レオンが馬車を止め一人で走って行ったら、すぐにカタが付いた。
あと一日ぐらい行ったところのある町に帰る商人だったようで、ユーリたちと一緒に向かう事になった。
小さな町に着くと長が出て来て、襲われた商人はレオンにお礼を言ってディオンと共に長の屋敷に出迎えられたのだった。
ディオンとレオンは翌日も長と話し込んでいたので、ユーリとサム、ユーリは町で食料などを買いに行った。
小さな町に一日だけ滞在して、ユーリたちは出発したのだ。
二ヵ月後
ユーリたちは小さな村から少し大きめな町を訪れてはすぐに出発する。の繰り返しで、王都に向かうのとほとんど変わらなかった。
何度も盗賊に襲われそうになってもレオンが威嚇すれば逃げ去り、魔獣に襲われてもシンとサムが出て行き、レオンと一緒に戦い終わっていた・・・。
(あれ??
旅・・・冒険ってこんなんだったっけ?
私、一回も戦ってないよ!!
もう、屋敷を経って二ヵ月も経ったのに・・・。
おかしい!!)
ディオンより早く目が覚めたユーリだが、横になったまま考えた・・・。
確かに、食事の合間にレオンに剣の稽古をつけて貰ったり、サムに魔法の勉強をして貰ったりと屋敷ではあまり出来ない事まで教えて貰ってはいたが、実践をする前に終わっているのでユーリの出番はなかったのだった。
ある日、一行は屋敷があった町よりは少し小さめの町に着いた。
「ユーリちゃん。
この町には、三日ほど滞在するからのぉ~。
冒険者ギルドに行ってみて、薬草採取なんか受けておいで。」
ディオンがユーリに言うと(よし!)とユーリはみんなには見えないように小さくガッツポーズをした。
「ユーリさん。依頼は私が代表して受けますからね。」
一番年上で、領内の魔獣が大量発生した時に魔法が使えるという事で、何度か討伐に参加しているサムがリーダーでユーリとシンの三人パーティになったのだ。
レオンは護衛でディオンのそばから離れない。
三人は冒険者ギルドに向かい、一緒に依頼の紙を見ていたが、サムは一枚の紙を取りカウンターへ向かったのだ。
それを見ていたユーリも紙を取ろうと手を伸ばしたが、シンと腕を掴まれた。
「駄目だ。
依頼はサムが決める。
もう受付手続きしにいったから」
表情を変えずシンが言うが、ユーリは掴まれていない腕を伸ばそうとしたがシンに持ち上げられ、入り口の近くにあったテーブルまで移動されたのだった。
結局、サムが依頼を受けたのはFランクの薬草採取依頼で近くの川の近くで採取をするのだった。
サムとユーリが一緒に薬草を探しつつ、サムに見つけ方や見分け方を教わりながら探したのだ。
シンは周辺の警戒で周りを見渡していた。
依頼が完了した時もサムが一人でカウンターに行き、謝礼を貰って三人分に分けてサムが二人に渡した。
次の日も依頼を受けたが町の外ではなく、個人宅の草むしりだった。
個人宅に向かっている途中、サムがユーリに教えてくれたのだ。
「良いですか?ユーリさん。
冒険者ギルドに依頼が来るのは町の外だけではないのです。
今回のような住人の個別依頼があったりもします。
冒険者ギルドは冒険者登録をしていなくて、日雇いや低ランクの依頼であれば仕事の斡旋もしてくれるのです。」
依頼のあった個人宅ではお年寄りの夫婦でおじいさんが腰を痛めてしまったため、庭の手入れが出来なくなったので依頼をしたとおばあさんが言った。
夫婦は困っていたところに、ユーリたちが来てくれた事をとても喜んでいた。
途中、お茶やお菓子などを出して貰い、おばあさんたちと世間話もした。
依頼が終わったのは日が暮れ始めた頃だった。
おばあさんたちはとても喜び、手土産におばあさん特製のお菓子も持たせてくれたのだった。
「ありがとうね。
あなたたちとのお話も楽しかったわ。
孫がいたらきっとこんな感じなんでしょうね。」
ギルドの帰り道、ユーリは冒険者らしくない仕事だが、充実した一日を過ごせてうれしかったのだ。
「今回の依頼は、ただの草むしりだけではないのですよ。
ご夫婦と話をするというのも依頼の一つだったんです。
色んな町には多くの人が住んでいます。
様々な事情を抱えながらも生活を送っている。
ユーリさんにもそう言う事も知っておいて欲しいと思い、この依頼を受けたのです。」
サムは優しく微笑みながら、ユーリに話したのだ。
ユーリはサムの優しさを感じながらも、少し複雑な心のままディオンたちが待つ宿に向かったのだった。
この町に滞在する最後の日はギルドへは行かず、サムとシンと一緒に買い出しに行ったのだった。




