2-4 ディオンの思惑
サラレイン領に戻った一同。
数日は、大人しくしていたユーリだが夕食の後、お願いをした。
「ディオンおじいちゃん。
私、冒険者になったし、ギルドの依頼受けて良い?
近くの森で採取依頼とか・・・。」
「ほぉ・・・。
それも、そうじゃな?
近くの森だと日帰りで帰って来れるし、問題ないじゃろう。」
「なぁ!
そんな駄目です。
父上。」
フィリウスはディオンに抗議をしたが、ディオンは聞き入れなかった。
「フィルよ。
ユーリちゃんはお前の娘じゃないし、そんなにユーリちゃんを束縛すると嫌われるぞ。」
「う・・・・。
しかし!何かあってからでは危ないではありませんか?」
「人生は何事も経験じゃ。
お前が冒険者になると言った時も、儂は反対しなかっただろ?」
「そ・・・それは・・・そうですが・・・。
分かりました。
但し、念のためレオンも一緒に行動する・・・という事なら・・・。
良いでしょう・・・。」
「やった~。
ディオンおじいちゃん、フィルさん。ありがとう。
そして、よろしくお願いします。レオンさん。」
「おぅ!
まぁ、ユーリ嬢ちゃんの実力から言って俺がいなくて平気だとは思うんだがな?」
レオンがボソッと言ったのをフィリウスは聞き逃さず、レオンを睨んだのだった。
「あ、そうだ。ユーリさん。
少し多めに薬草を採取してきて、私の母に薬作りを教わってみてはいかがですか?」
「薬作り?」
「はい。
母は、昔からこの町でも有名な薬師で、私も幼い時から薬作りを教わっています。
簡単な傷薬から体力回復薬、そして魔力回復薬も作れますよ。」
サムがユーリに提案すると、ディオンのお茶を入れていたヘレナが「私で宜しければ。」と優しく微笑み言ってくれた。
それから、ユーリの日々は変わっていったのだった。
一日目はユーリとレオン、シンも一緒に冒険者ギルドへ行き依頼を受け森に薬草を採取しに行く。
二日日はヘレナから薬作りを教わり、三日目は屋敷にある本を読んだりギルバードと一緒に過ごしたりした。
たまに、セシル奥さまとお茶を飲んだり、ディオンやフィリウスたちと話したりして過ごした。
薬作りは基本的にお菓子作りと一緒でちゃんと分量を量り、煮詰めたり布で越したりして仕上げに少しだけ魔力を入れるという作業で、ユーリは楽しそうにヘレナから教わったのだ。
ヘレナも「ユーリは素質がある。」と褒められ、もう少し大きければサムの嫁に・・・とこぼしていた。
ヘレナはサムを見ながら、「いつになったら、孫を抱かせてくれるかしら。」などと言うと、サムは足早に「仕事、仕事」言いながら、立ち去って行った。
(いつの世・・・どこの親も同じだな・・・。)
と思いながら、ユーリは心の中でサムにエールを送った。
半年後、薬作りも一通り一人で出来るようになったある日。
談話室でみんな、お茶を飲んで寛いでいた時に、ディオンが咳払いをした。
「・・・??」
「ヘレナ。
ユーリちゃんの薬作りの進捗はどうじゃ?」
「はい。ディオンさま。
ユーリさんはとても飲み込みが早く、手際に良く基本的な薬なら一人でも大丈夫です。」
「え。そんな。そんな事ないです。
ヘレナさんが丁寧に教えてくれるから・・・。」
「フフフ・・・。ご謙遜を・・・。」
「そうか・・・。」
「どうされました?父上・・・?」
「そろそろ、ユーリちゃんは旅に行く気はないかい?」
「え・・・。」
ディオンがそういうとセシルやサム、シンまで動きを止めたのだった。
フィリウスとレオンに至っては持っていたカップを落とした。
「アチチ・・。」
「父上・・・。
それは一体、どういう事なんですか?
ユーリちゃんを旅に・・・なんて・・・。」
フィリウスは勢い良くソファから立ち上がり、ソファから『ガタッ』と大きな音がした。
エドワードは大人たちの空気が急変した事とソファの音に驚き、泣いたのだった。
セシルは泣いたエドワードを連れ、部屋に出て行きつつチラッとユーリとフィリウスを見たのだった。
部屋にはディオンとフィリウス、レオン、ユーリ。そして、執事長のアンディとサム、シンの六人だけになった。
「なぁに?そんなに長くはないさ。
クロードたちが長期休暇に入るまでの半年じゃよ。
儂と一緒にサラレイン領内の視察に着いて来ないかの?
護衛にはレオンもついてくるしの~。」
「視察でしたら、毎年私とレオンがひと月ほどで済ましてくるではないですか?
父上!
半年もかける必要もないですし、父上がわざわざ行かなくても・・・。」
「そうじゃな。
毎年、いつも仕事を儂に押し付けてフィルとレオンが視察にいくの~。
二人が帰った後の土産話を聞くたび、儂も冒険したくなってのぉ~。
ちょうど、ユーリちゃんも他の町や旅もしたくなる頃じゃと思っての。」
初めこそ少し寂し気だが、次第とウキウキと話すディオンをフィリウスは見て、言いたいことはあるが何も言えない顔をして渋々声を絞り出した。
「~~~。
分かりました。
父上。ユーリちゃんと一緒に領内の視察をお願いします。
但し、護衛にはレオンだけでなく、サムとシンも一緒にお願いいたします。
レオン、ユーリちゃんに傷一つでも付けたら・・・分かってるよな・・・。」
フィリウスはレオンをキツく睨んだのだ。
「お・・・おぉ。任せておけ。
それに、サムがいれば遠距離でも安心だしな。」
「サムさんが居れば安心・・・?なの?」
「あぁ、サムは魔法が得意なんだ。
回復魔法から攻撃魔法、補助魔法までな。」
「微力ながら大旦那さまとユーリさんをお守りいたしますよ。」
サムは今までの中で、一番柔らかく微笑んだように見えた。
次の日からユーリとレオンたちは旅に行く準備に取り掛かった。
ユーリはヘレナから「卒業のお祝いよ。」と言って、簡易的な薬作りに必要な道具を貰ったのだった。
今後・・・少し更新スピードを落とさせて頂きます。




