2-3 アイテムカバン
オズワードとイアンとの晩餐の翌日、ユーリとギルバードはディオンたちが出掛けていくのを見送りしに行くと、レオンは制服を着ていた。
「ユーリ嬢ちゃん。
悪いが、今日はエド坊ちゃんとサム、シンと留守番してくれねぇか?
一応、王都まで来ていて一度も騎士団に顔出さない訳にはいかないからな。
昼過ぎには戻ってくるさ。」
レオンは、ユーリの頭を軽く撫でながら言う。
「うん。分かった。
レオンさんも、行ってらっしゃい。」
今日もユーリはギルバードと遊んで時間を潰して過ごす日々だ。
ユーリはさすがにずっと部屋に引きこもったままでは辛いのだが、少しでも外に出ようとすると、サムがやって来て止められるので部屋の中で過ごすしかなかった。
ユーリとギルバードの二人が仲良く昼食後、お腹いっぱいになったギルバードはお昼寝をしてしまい、ユーリの部屋にはベッドで寝ているギルバードとユーリ、そしてシンがいる。
(う・・・気まずい・・・。
シンさんは屋敷に来てから、ずっと私のそばにいるけど、ほとんど話した事がないんだよな・・・。
何か話しかけても少し返事をするぐらいだし・・・。
サムさんでもいいから、誰か早く来て~。)
サムは雑務が色々あるようでたまに顔を出したりする程度でほとんど部屋にいないのだった。
とりあえず、ユーリはやる事がないのでリュウにブラッシングをしたりアクアの観察をしたりしていた。
アクアは部屋の床をうねうねと這いずり雑巾掛けしたようにキレイにしたり、窓から差し込む光に当たったりして無害、食事は一日一回の野菜、もしくは薬草だけ構わないようだ。
ちなみにリュウの食事は朝晩二回の肉系、特に生肉を好んで食べている。
出会った頃は、ユーリの手のひらでも十分な大きさだったが、四歳のエドワードと同じぐらいの大きさに成長している。
ユーリはアクアと一緒に日光浴し、少しウトウトしているとノック音がなり、そのあとすぐに扉が開いた。
「よう。ユーリ嬢ちゃん。
良い子で待ってたか?」
「レオンさん!
(これでシンさんと二人っきりじゃなくなった!!)
おかえりなさい。
あ、シ~。
エドワード君がお昼寝から目を覚ましちゃう。」
「おぉ。そうだったか。
すまんすまん。」
二人はエドワードの様子を見ると、スヤスヤと寝ている様子にホッと一息をした。
初めの頃は、エドワードがお昼寝をするとレオンがエドワードの部屋に連れ出していた。
だが、エドワードは目を覚ますとすぐに大きな声で「ユーリお姉ちゃん」と泣き、エドワードを泣き止ますのに一苦労だったので、止めたのだった。
夜になると母親と同じ部屋に行って寝るのはまだ幸いだったとか・・・。
「あ、レオンさん。
お戻りになったのですね。」
サムが顔を出し、レオンに挨拶したがすぐにどこかへ行ってしまった。
レオンは、サムが部屋から遠ざかるのを確認した後、持っていたカバンから二回りほど小さなバックを取り出したのだった。
「ほれ?ユーリ嬢ちゃん。
お土産だ。」
「う?ありがとう。」
ユーリがレオンから受け取ったカバンを貰い、肩にかけて中を見た。
「これは?」
「そのカバンは冒険者なら誰でも持っている『アイテムカバン』だ。
まぁ、軽く五日分ぐらいの食料や着替えぐらいなら入るぞ。」
「五日分??
だったら、空間魔法の『アイテムボックス』なんか必要なくない?」
「いやいや。
空間魔法の『アイテムボックス』は他の空間魔法『ワープ』とかの基礎だし、本人の魔力量次第で大きさはマチマチさ。
その『アイテムボックス』を誰にでも使えるように開発されたのが『アイテムカバン』だ。
ただ、『アイテムボックス』は重さが無くなるが、『アイテムカバン』はたいだい中身の半分ほどの重さになるんだ。」
ユーリは「へ~。」と思いながら、少し重さを感じるので中に手を入れると革の何かに触れたので、出そうとした。
レオンはすぐにシンの死角にユーリを振り向かせ、コソコソと話し始めた。
「おいおい。
ここで出そうとするな。
それは、ユーリ嬢ちゃんが買いそびれた装備だ。
軽装備だが、革よりは少し丈夫な魔獣素材だ。
ユーリ嬢ちゃんの戦い方は素早さメインだから鎧とかより向いてるだろ?
大きさはライと同じだ。」
レオンがそう言うとユーリは慌ててカバンの中身を閉まって、二人でニヤッと笑った。
夕食の時間前にディオンたちが帰って来たので、みんなで夕食を食べた。
「ところで、サム。
今日もユーリちゃんは大人しく部屋で待っていたかい?」
「はい。一歩も外には出ず、大変行儀が良かったです。
そうですね・・・。
変わった事と言えば、レオンさまがユーリさんのお土産として『アイテムカバン』を買ってきましたね。」
ユーリは何事もなく食事を続けるが、レオンが動きを止めていたがすぐに食事を再開した。
「ほぉ~。
『アイテムカバン』をね~。レオンが・・・。
ユーリちゃんに何か買い与えるときは一言ぐらい声かけてくれても構わないのでは?」
「なぁ!
別にフィルに報告しなきゃいけないんだ。
ユーリ嬢ちゃんは、フィルの娘じゃないんだ。
だいだいなぁ!フィルより先に俺と出会ってるんだぞ!」
「また、その話か?
早いと言っても二・三日ぐらいの違いじゃないか。」
二人が口喧嘩している様子をセシルは「アラアラ・・・。子供ようなケンカ。」と言いながら、みんなで微笑ましく話しながら食事をしたのだった。
翌日、まだエドワードは眠たげな目を擦りつつもセシルに抱えられながら、みんなで馬車に乗った。
今回はレオンが御者の席に乗って馬を操るようだ。
「前はライがいたからね~。
やっぱり、一緒に居たいだろうと思ってね。
本来は、レオンが外の方が盗賊なんかに襲われずにスムーズに移動できるんだ。」
と、フィリウスが説明してくれた。
行きは12日もかかったが、帰りは10日間でサラレイン領の屋敷に到着したのだった。
もちろん、ユーリの部屋はディオンの隣でその反対側はサムとシンの部屋である。




