1-16 冒険者ギルド 後半
「大丈夫。自分の事は自分でする。
冒険者になるんだから!!
ギルドで魔獣の皮と薬草、素材とか買い取ってくれるって、レオンさんから聞いたんだけど、ここで出来る?」
ユーリがナナに聞いていたら、レオンは思い出したかのように自分の肩からカバンを外し、カウンターに乗せた。
「これ全部。ユーリ個人が集めた素材だ。」
すると、ナナよりも年上の眼鏡をかけた男がやって来た。
「ほぉほぉ・・・。これはこれは・・・・。
トビーラビットとラナコックの素材かぁ・・・。
ランクとしては低いが状態が良い。
薬草の方は・・・おぉ・・・一本だけだがディア草があるじゃないか・・・。」
素材などの鑑定役の男職員はやや興奮気味で持ってきたモノを見た。
そして、何やら羊皮紙に書き込んだら、すぐに自分の机と戻って行った。
「あぁ・・・。ごめんなさいね。
腕は確かの鑑定担当の職員なんだけど、ちょっと仕事熱心というか興味を持ったら目もくれない所があるのよ・・・。」
鑑定担当の職員は何やら計算したと思ったら、一番奥にいるおばあさんの元へ向かい少し話して、カウンターに早歩きで向かってきた。
そして、いきなりユーリの両手を取り、ブンブンと振った。
「まだ小さい子供なのに、立派だ。
解体とかも自分でやったのかい?
こんな新鮮な状態はめずらしい。
ディア草なんか根付きでまだ生きてる・・・。」
男性職員は早口でペラペラと始めた。
ユーリは男性職員の勢いに飲まれ、目を丸くしていた。
レオンはいきなり男性職員の手を払いのけ、ユーリを抱えた。
「おい。いきなり、なんだ。
ユーリ嬢ちゃんが怯えてるじゃないか。
ユーリ嬢ちゃんを困らせるってなら、俺が相手になるぞ!」
レオンは毛を逆立てながら男性職員に向かって少し低い声で話す。
男性職員は一瞬、怯んだが咳払い一つして、シャツの襟を軽く引っ張った。
「申し訳ありませんでした。
これほど状態の良いディア草をお目にかかって、我を忘れてしまいました。
お持ちいただいた素材はすべて当ギルドで買い取らせて頂きます。
本来ならば、ディア草以外の全ての素材を合わせても銀貨一枚と銅貨五枚ですが、これらの状態が良いという事で、銀貨二枚で買い取らせて頂きます。
そして、ディア草の方ですと相場は銀貨一枚ですが、根付きである事と状態がすばらしいという事で銀貨一枚と銅貨五枚で取引させて頂きます。
合わせて、銀貨三枚と銅貨五枚という事になります。
が、とても素材の状態が素晴らしくディア草に至っては、しっかり管理さえすれば育て株分けして増やすことも出来ます。
なので、そのお礼と冒険者ギルドからの登録祝い、そして私個人からのプレゼントという事で登録料はいりません。
あ、そうそう。
申し遅れました。私、冒険者ギルド鑑定担当職員 ダンテ と申します。
以後、お見知りおきをお願いいたします。ユーリさま。」
そう一気にゆっくりと分かりやすく説明したダンテはユーリに向かって深くお辞儀をした。
「え・・・。えっと、ユーリさまなんて・・・。
私なんかさま付けしなくてもいいです。
それに口調はもっとくだけてもらった方が・・助かります。
あと、レオンさん。もう大丈夫だから、下ろして。」
ユーリはいまだ、レオンに抱っこされっ放しなのが恥ずかしいので下ろすようにレオンにお願いしたが、レオンはニカッと笑い下ろす素振りを見せない。
ユーリは諦めてそのまま再び、ダンテの方を向いた。
「あ、いえ・・・。
そういわれましても・・・。」
ダンテは少しためらっていたが・・・
「わかりました。イエ、分かった。
ユーリちゃん。」
登録料の銀貨一枚の内訳を聞いてみてみると、半分の銅貨五枚はダンテからのポケットマネーだそうだ。
しかし、ユーリ個人にではなく、ディア草の方である。
ダンテはギルドから個人買い取りをするようだ。
そして、家で大切に育てると言っていた。
あとでレオンとユーリたちはナナから聞いたのだが、元々は王都で働いていたが真面目で融通が利かないという事で最近、サラレイン領の支部に飛ばされ黙々と仕事をこなしていたそうだ。
本人曰く、王都に働いていた時に知り合った調合師の影響で薬草の生育について詳しくなったそうだ。
「ダンテさんのあんなに生き生きした顔なんて初めて見るわ。
最初の方なんて、ブツブツと独り言を言っていたのに・・・。」
ナナは「明日、氷でも降ってくるのでは・・・」と、不安そうにダンテを見つめながら言った。
ユーリ達三人が冒険者ギルドを出る頃には空の端っこが赤く染まりかけていた。
「もうこんな時間が・・・。
しょうがない。急ぐか・・・。」
レオンはユーリを両手でしっかりと抱え、シンに「走るぞ!」と言った。
夕方の空の下、町には獣人族に抱えられた女の子と小さなリュックを両手で持つ少年が駆け抜けていく姿が多くの人の目をひいていた。
屋敷に戻った時には夕日はすでに沈んで暗くなり始めた頃に、三人は屋敷の扉の前にたどり着いたのだった。
そして、扉を開けたらニコニコと笑う執事長アンディーと息子のサムが怒った顔で待っていたのだった。
「レオンさま。
昔と変わっていませんね。
急にユーリさまと居なくなったと思ったら、こんな遅くに戻ってきて。
シンもシンです。
町に出るなら出ると一言声をかけなさい。」
サムはレオンとシンを怒ると、レオンからユーリを奪った。
「ユーリさま。
こんな遅くまでどこに行っておられたのですか?
旦那さまも、奥さまも心配されましたよ。
もちろん、父も私もです。」
サムはユーリを床に立たせ、レオンを叱った声とは明らかに優しい口調で叱ったのだった。
「サムさん、そしてアンディーさん。
心配をかけてごめんなさい。
レオンさんたちは何も悪くないの。
二人は私がテイマーギルドと冒険者ギルド登録をするのに付き合ってくれただけなの。
ごめんなさい。」
ユーリがサムとアンディーに謝ると、アンディーはサムの肩に手を置き軽く首を振った。
サムはアンディーの様子を見ると、ため息を一つ溢しユーリの頭を撫でた。
「ユーリさまはとても素直でお優しいのですね。
今回が初めてですし、今日のところはこの辺で良いでしょう。」
サムが言うと、ユーリを抱きかかえた。
「シン。あなたも付いてきなさい。
ユーリさま。お部屋に戻りましょう。
ただし、レオンさまは父上と一緒に旦那さま方にご報告して下さいね。
それと特に奥さまがお怒りになられておいだそうですよ。」
そのまま、サムはユーリを抱えてシンと共に部屋へと歩いていく。
ユーリは抱えられながらレオンの顔を見ると、口を開け全身が固まっていた。




