1-15 冒険者ギルド 前半
レオン、ユーリ、シンはテイマーギルドを後にして、冒険者ギルドへと向かっていた。
屋敷からテイマーギルドまでは近かったが、冒険者ギルドは町の入り口近くにあるため、距離がテイマーギルドよりも倍近くもあった。
「おい、ユーリ嬢ちゃん。
そろそろ小腹が空いてないか?」
レオンはそういうと一人で屋台の方へ向かい、二人の元へと戻って来た。
レオンの両手には飲み物らしい袋に入ったモノを四つと串に刺さった焼いた肉が三本、棒の上にべっこう飴を持っていた。
「ユーリ嬢ちゃんは肉よりこっちの方がいいだろ。」
レオンはニカッと笑い、ユーリに飴を差し出した。
「ありがとう。(パクッ)
甘くておいしい。」
ユーリはレオンから受け取った飴をすぐに口に入れて、その甘さに頬を緩まさせた。
レオンはユーリの顔を確認してから、シンにも串に刺さった肉と小さな袋を一つずつ渡した。
レオンは道の隅にあったベンチを見つけ、ユーリを片手で持ち上げベンチに下ろした。
「ほれ、こっちはリュウに食わせてやれ。
ただし、リュックの中でな。」
レオンは片目を閉じ、笑った。
「(おぉ・・・。レオンさんのウィンク。
なんか想像してたのとは違うのは獣人族だからかな・・・。)
ありがとう。レオンさん。」
ユーリは飴を口にくわえたまま、レオンから肉を受け取り、自分の前にリュックを下ろし蓋を開けた。
リュックの中ではいつの間にか目を覚ましていたリュウが涎を垂らしながら座っていた。
(串のままあげたらあぶないよね・・・。)
ユーリは串から肉を外し、右手に乗せてリュウの前に差し出した。
リュウは差し出された肉の匂いをクンクンと嗅いでパクパクと食べ始めた。
リュウが最後の一個の肉を口に入れ、ユーリの右手をペロッと舐めた。
「美味しかった?リュウ。」
「ワン!」
ユーリは嬉しそうに尻尾を振るリュウを軽く頭を撫でてから座りなおした。
レオンから小さな袋を二つ受け取り、色の付いた袋の方を一飲みした。
ちなみに色の付いていない袋はただの水でリュウとアクアの為に、レオンが買ってくれたそうだ。
ユーリがレオンにお金を払おうと言ったが、レオンは「子供が変な気を回すな。」という事で大人しく奢られた。
少し休憩をした後、三人は再び冒険者ギルドへ歩き出した。
さっきのテイマーギルドとは違って、お粗末な造りだが頑丈なユーリが住んでいた森の中の小屋四つ分の家にたどり着いた。
「さぁ、ここが冒険者ギルドだ。
さっきのテイマーギルドとは違って、粗忽モンの集まりだが肩ひじ張らずに気楽で楽しいぞ~。」
レオンがそう言うと扉に手を掛けて笑った。
レオンが扉を開けると、中にいた数人の男たちが入り口に顔を向けた。
一瞬、ユーリがビクッと肩を動かし、シンは腰に掛けた剣に手を掛ける。
「お。レオンじゃねぇか。
久しぶりじゃねぇか。」
「とうとう領主さまから追い出されたか?」
「おい。後ろに小さい子供がいるぞ。
ライじゃねぇようだな・・・。隠し子か?」
中にいた数人の男たちはすぐにいかついが、笑いながら大声でレオンに話しかけた。
レオンも森の小屋で見せていた少し子供っぽい表情になった。
「久しぶりに来てみれば、相変わらずそうだな・・・。
コイツは俺の子供な訳ねぇだろ。
純粋な人間族だろ。
ちょっと縁があって保護してるユーリだ。
おめぇら、ユーリ嬢ちゃんになんかしようモンなら俺がタダじゃ済ませねぇからな。」
レオンはユーリを自分の前へと押し出しながら紹介をした。
「ったく。こいつらは相変わらず変わらねぇな・・・。
ユーリ嬢ちゃん、いきなりで驚いただろ・・・。
安心しろ。こいつ等はそんな悪いヤツじゃねぇからよ。
良いヤツでもねぇけどな。
シン、剣から手を放せ。
こいつらが町中で暴れるなんて大それた事なんか出来ない小心者の集まりだ。」
レオンが言うと、シンは剣から手を離した。
「は、初めまして。ユーリです。
今日から冒険者になります。
よろしくお願いします。」
と元気にユーリが挨拶してお辞儀をしたら、数人のいかつい男たちが大きな声で笑った。
そして、カウンターにいた女性数人もクスクスと笑っていた。
「ユーリ嬢ちゃん。
そんな丁寧に挨拶なんてこいつらには勿体ねぇよ。」
リオンがそんな事を言うと、数人の男たちが「なんだと~。」とレオンに抗議していた。
そして、レオンに連れられてユーリは奥のカウンターに向かった。
「初めまして。
ユーリちゃんでいいかしら?」
髪の長い女性がユーリに合わせてかがんで挨拶をした。
「はい。ユーリです。
今日は冒険者ギルドに登録したくて来ました。」
「あら。礼儀正しいのね。
その辺にいる野暮な冒険者たちとは大違いね。
少しはユーリちゃんを見習って欲しいわ。
私はサラレイン領の冒険者ギルド職員、ナナって言うわ。
ユーリちゃん、文字は書ける?」
ナナはユーリに自己紹介しながら、紙を差し出した。
「多分、大丈夫。
(レオンさんたちと出会ってから本やら羊皮紙やら文字も普通に読めたし、文字を書いてみたりして試したし・・・。
その辺は、転生あるあるの加護かな?)」
「じゃぁ、ユーリちゃん。
ここに名前とか記入してくれるかしら。」
ユーリはナナから紙と羽ペンを受け取り、記入していく。
その間にレオンはナナに簡単な出会った経緯や、ユーリの生い立ちを説明していく。
ユーリが渡されて紙に書き終わって、ナナに渡した。
「まぁ、その歳で苦労したのね・・・。
ちょっと待ってて。
すぐに手続きを済ませるわ。」
少し涙を浮かべながら、ナナは他の職員にユーリの書いた紙を渡した。
「本当は登録するのに銀貨一枚は必要なんだけど、私のポケットマネーで・・・。」
「いや、大丈夫だ。保護者である俺が出す。」
ナナがありがたい事を申し出ようとしたら、レオンが口を挟んだ。
何気に後ろで座っていた数人の男たちも「オレも!」と言い出していた。
思ったより長くなりそうなので一旦、切ります。




