1-13 準備
王都行きを決めた昼食のあと、ユーリはレオンと一緒に部屋へ戻った。
「よし。じゃぁ、ユーリ。
腹もいっぱいになったし。テイマーギルドに行くか。」
「テイマーギルド?」
「あぁ、リュウの従魔登録をしにな。」
レオンはユーリの腕にいるリュウを撫でながら言った。
「テイマーギルドはこの町の中にあるから日が暮れるまでには帰って来れるさ。」
「ホント!
あ、私、身分を証明するモノなんて持ってない・・・。
それでも大丈夫なの??」
「身分?
そんなの持ってる方が少ないさ。
公爵レベルの金持ちにならないと・・・。
だったら、冒険者ギルドにも寄って登録でもするか?」
「冒険者ギルド?良いの?」
「あぁ。問題ないさ。
あそこには俺の顔なじみがいるし、問題ない。
森で狩りなんかもしていたんだろう。
その素材とかも買い取ってくれるぞ。」
「ホント!
やった。薬草とかも大丈夫かな・・・。
アイテムボックスに入ってるから整理しておかないと・・・。」
「あぁ、そういえば、ユーリ嬢ちゃんはアイテムボックスも使えたんだったな・・・。」
「??」
レオンが陽気に話していたが、渋い顔をして悩み出した。
「アイテムボックスとか空間魔法は使えるやつは珍しいと言えば珍しい。
お前みたいな子供が使える事を知られる誘拐とか悪いヤツらに目を付けられるぞ。
今までユーリ嬢ちゃんが狩った魔獣の数と、薬草を少し見せてくれないか?」
「魔獣の数?
そんな多くないよ?
私とリュウ、アクアの食料だもん。
えっと。ラナコック5匹とトビーラビット10匹と薬草は・・・」
ユーリはアイテムボックスを展開しつつ、中身を確認する。
薬草は自分の前のテーブルに紙を引き、取り出していく。
「薬草は傷を治すのと、しびれが取れるのと毒に効くやつでしょ。
あと、白い花の付いたこれ。
白い花の薬草ってなに?分かんなかった。」
「おぉ・・・。
こ、これは・・・ディア草じゃないか・・・。」
「ディア草?」
「あぁ・・・。
ディア草は魔力の回復が出来る薬草でそこまでは珍しくはないが、きれいな水がないと育たないんだ。
最近では国や領主が培養してヤツが出回っている。
育て方も難しくて専門職にそのうちなるだろう・・・。
これはどこで??」
「え・・・えと・・。
(あれ?これって群生していて結構採って来たんだけどな・・・。
全部出すと怪しまれるかな・・・。
出しちゃったしこれだけで・・・。)
あぁ・・・。
場所は分かんない?
一度、一人の時に森で迷って川の上流の方で偶然に見つかったの。」
「これ一本だけでも、銀貨一枚分の価値ぐらいはあるんじゃないのか?
しかも、ちゃんと根っこも付いているじゃないか。」
「(ほぉほぉ・・・。
なかなかレアアイテムではないか・・・。
あとで何本あるか確認しておこう・・・。)」
ユーリの頭の中では両替した時のように硬貨は降り注いでいた。
「このぐらいなら、俺の持ってるカバンで持ち運び出来るな。
ユーリ、さすがにドレス姿で町を歩き回る訳には行かないから、動きやすい服に着替えておけ。
俺がカバンとか用意しといてやるからさ。」
レオンはユーリの髪をボサボサにするようになでてから、期待に膨らませた少年のように走り出した。
(ライのヤツが学校に行ったら暇になるかと思ったが、ユーリのおかげで当分つまらなくなりそうもない。
ユーリは冒険者としても見どころありそうだ・・・)
-数十分後—
レオンは、底がしっかりとして、上には蓋付きの小さなリュックを持ってきてくれた。
あと、後ろには今朝も会ったシンも付いて来ていた。
「ほれ。
ユーリ嬢ちゃんの背にぴったりなカバンだろ?」
「??
レオンさん。自分の荷物は自分で持てっと事?」
レオンが差し出してきたリュックをユーリの前に置いたが、慌てて中から大きめの肩掛けカバンを出した。
「違う。違う。
荷物はこっちの大きいのに入れて、俺が持つさ。
リュックの方はユーリ嬢ちゃんがリュウとアクアを中に入れて連れまわすんだ。
まぁ、リュックの方も俺が運んでも構わんが、リュウとアクアはユーリ嬢ちゃんのそばにいた方が良いだろう。
この屋敷の中だったら放し飼いでも構わないが、多くの人がいるからな。
スライムのアクアならともかく、シアウルフのリュウは厄介なヤツに絡まれてもな・・・。」
「それもそうか。
ありがとう。レオンさん。
大きさ的にもリュウとアクアを入れても平気そう。」
ユーリはそう言うとリュウを持ち上げてリュックに入れた。
リュウはまだ子供で、尻尾を入れても50cmぐらいの大きさ。
アクアは20cmぐらいの大きさ。
「そういえば、シンさんも一緒について来てくれるんですか?」
ユーリは扉のそばに立っているシンに顔をむけていった。
シンは無言で頷いた。
「ったく。シン。自分で言え。」
「奥さまからユーリさまの護衛を承りました。
これからよろしくお願いいたします。」
シンは表情一つ変えず、淡々と言ってお辞儀をした。
連れてユーリもお辞儀をしたが、レオンは頭を掻いた。
「あ~~。
ユーリ、コイツはセシルさまの兄上の三男坊で、騎士見習いではあるんだ。
あるんだが、何でも生まれた時から泣きもせず笑いもせず、産声でさえあげない。
少なくとも屋敷に来て半年。
一度も表情を変えねぇんだ。」
「一度もですか?」
「あぁ。
騎士家系だが三男だから普通なら冒険者なり騎士団なり自立させるんだかな・・・。」
レオンは途中で言葉を詰まらせ、シンを見ながら言いにくそうだった。
「私の一番上の兄が一年ほど前に結婚して、邪魔者になった私は家を追い出されたところを奥さまが拾って下さり、屋敷に連れて来てくれ騎士見習いをさせて頂いています。」
「ちげぇ~よ!
お前の事を心配したお前の父親がセシルさまに頼んだんだよ!
お前みたいな無表情なヤツは冒険者としても騎士団としてやっていくのが不安だったんそうだ。
冒険者や騎士団、町に住むと言っても人の中での生活だ。
人と生きる為にはコミュニケーション、表情が分かりにくいのは親として不安だったんだよ。」
「(あぁ・・・。
そうだよね・・・。
レオンさんが一生懸命に説明しているのに、シンさんは良くわかってないような感じだもんなぁ・・・。
あ、その前・・・シンさんがなんか言ってたような・・・。)
私の護衛ですか?」
ユーリは慌ててシンに向かって叫んだが、シンはただ無言で頷くだけであった。
そして、三人は町へと出向いたのだった。
無駄に長い準備だったような・・・




