1-10 あの人・・・。(修正)
一部、修正させて頂きました。(2020.11.24)
ユーリは朝日に目を細めながら体を起こす。
カーテンはリュウが器用に開けたようで、完全には開いておらず一部だけ光が差し込んでいた。
「おはよう。リュウ。」
ユーリがリュウに声をかけると、カーテンはそのままで嬉しそうに尻尾を振ってベッドの上に飛び乗った。
ユーリはリュウが半端なカーテンを全部開け、背伸びをした。
昨夜と同じ、森の小屋とは何から何まで違う。
壁の色は清潔な白で床には赤いカーペットがひいてある。
ユーリはベッドの近くにある机に用意してある大きめの水差しの水で顔を洗った。
家具は少ないが、どれも高級品だと一目で分かる品々。
窓際の丸いテーブルには森では見たことがない大きな花びらを付けた花が飾られている。
「・・・・。
はぁ・・・。
やっぱり、ここって普通の家じゃないよね・・・。
やけに部屋が広いし、装飾品とか高そう・・・。
やっぱり、森に帰ろう・・・。
そうだ。窓から出て逃げ出そう!!」
ユーリは昨夜着せられたドレスではなく、ライから貰った服の方を着ようと思っていた。
そして、窓の下を確認しようかと思ったら、部屋の下にいる男と目が合ってしまった。
そこには、剣の素振りをしていたレオンだった。
レオンはすぐに剣を鞘に戻し、人懐っこい顔でユーリに笑いかけた。
(・・・逃げれそうにないよな・・・。
この配置・・・・。)
そして、しばらくしたら廊下からノックがして「失礼します。」とレオンが入ってきた。
「おはよう。嬢ちゃん。
朝は早いんだな。
まだゆっくり寝てても良かったのに・・・。」
「(・・・レオンさんは多分、素なんだろうな・・・。
フィルさんあたりかなぁ・・・。
私が逃げれないようにしたのって・・・。
夜中もドアの前に人がいる感じがあったし・・・。)
おはようございます。レオンさん。」
レオンはそれから一歩も部屋から出ることなく、朝食もユーリと二人で食べた。
「(あれ?
なんで部屋から出ないんだろ・・・?)
レオンさん、お仕事とかしなくて大丈夫なんですか?」
「あぁ。問題ない。
昨夜、自室に戻ってライと寝るつもりの所をフィルの奴が来て、ユーリの事が心配じゃないのか?って言われたな。
もう夜は遅いから今日は朝早くから一緒に過ごそうと思ってな・・・。
いくら、嬢ちゃんが大人びていても子供だもんな。
知らない家で一人っきりは寂しいだろう?」
ー昨晩ー
フィルは執務室で一通り仕事を終わらせ、お茶を飲みながら窓から外を覗いていたら、レオンは騎士団の数人が使っている家に入って行くのが見えた。
フィルはすぐに部屋を出て、レオン親子が使っている部屋からレオンを廊下に連れ出した。
「なんだ?どうした?
酒でも飲みたくなったのか?」
「レオン。
ユーリはどうした?」
「あ?
嬢ちゃんなら、客間で寝てるんじゃないのか?」
能天気な顔でレオンが言うのを見て、フィルは力をなくし壁に片手をついてため息をついた。
「そうじゃない。
ユーリは落ち着いて、どこか大人っぽいところはあるが、まだ子供だ!
俺の息子やライとそう年齢は変わらない。
いきなり知らない土地に連れてこられて心細い思いをしているのではないか?
今頃、涙で枕を濡らしているんじゃないか?
明日、目が覚めて泣いてしまうかもしれないぞ・・・。
(ちょっと言い過ぎだが、このバカにはちょうど良い。)」
フィルは抑揚をつけて涙ぐむように言うと、レオンは顔を青白くして固まってしまった。
(・・・やっぱり、フィルさんが手を回したんだな・・・。
でも、まぁ、レオンさんは何も悪気はなさそうだし、それにリュウとも相性が良いみたいだしな・・・。)
リュウはユーリ以外にはあまり体を触れさせたがらない。
この屋敷に来る途中に、ライやフィルが触ろうとすると体を避けてしまって結局、レオンだけに頭を二回ほど触らせただけだった。
屋敷に来た時のブラッシング?
あれはメイドの中で一番若く、ユーリより少しだけ年上の女の子には素直に体を任せていたのである。
しばらくすると、レオンと同じ服装の若い男がレオンとユーリを呼びに来た。
シンとレオンに案内されながら、広い廊下をユーリは歩いていく。
ユーリの後ろにはちょっと尻尾を立て気味なリュウと、リュウの頭の上に乗ったアクアも連れて歩く。
その様子を廊下ですれ違った使用人や警護の人の目を引いていた。
両開きの大きな扉の前でシンとレオンが立ち止まり、レオンがノックと共に声を出した。
「失礼します。
お客人をお連れしました。」
「どうぞ。」
中から返事を貰い、レオンが扉を開ける。
そこには、フィルとフィルによく似た老人と反対側には若い女性が立っていたのだった。
レオンはユーリを連れて部屋に入り、シンはそのまま頭を伏せて扉の隅っこに立った。
「やぁ。
悪かったね。ユーリ。
何も説明もせずに屋敷まで連れてきて。
紹介するよ。」
フィルはいつも以上にまぶしい笑顔でユーリを出迎える。
そして、両手を上げて紹介する。
「こちら、私の父上で先代領主のディオン=サラレインと、私の妻セシル=サラレインだ。」
ディオンとセシルは丁寧にお辞儀をしたので、ユーリは慌ててお辞儀をした。
「わ、私はユーリです。
そして、こちらのシアウルフがリュウで、その上に乗っているスライムがアクアです。」
「ワン!」
リュウは短く吠え、お行儀よくおすわりをしていた。
「うむ。」
「あらら。
なんてお行儀が良いのかしら。
とても可愛らしいお嬢さんだわ。
ユーリちゃんって呼んでいいかしら?
ユーリちゃんは用意したドレスは好みじゃなかったかしら?」
セシルは一気にユーリの合間を詰めてユーリの両手を取って早口で話しかける。
「まぁまぁ、セシル。
落ち着きなさい。
ユーリちゃんがビックリしているじゃないか?
さあ、こっちにおいで。ユーリちゃん。
お茶とお菓子を用意しているよ。」
「そ、そうよね。
ごめんなさいね。ユーリちゃん。
驚かせるつもりはなかったのよ。」
セシルはユーリの片手を引いてソファに案内をする。
フィルとディオン、ユーリとセシルがテーブルの前に立って、レオンはフィルの後ろに控えた。
リュウはユーリのすぐ隣に大人しく座った。
五人と一匹のお茶会は一時間ほど続いた。
「私ね、本当は女の子が欲しかったのよ。
でもね、三人とも息子でね、可愛いドレスとかリボンとか用意しても喜んで着てくれないのよ。」
「・・・。
でも、クロードが十歳ぐらいまで着せていたじゃないか・・・。
あ、ユーリちゃん。クロードは私の息子でキミと同じ歳なんだ。」
「でも、クロードは昔こそ可愛らしかったけど、大きくなるにつれてしかめっ面になってたわ。
ちっとも笑ってくれなかったじゃない?
ギルは何着せても喜んでクルクル回ったり笑ってくれるわ。」
「ギルはまだ6歳だろ・・・。
良く分かってないんじゃ・・。
あ、ギルは次男なんだ。」
(あ・・・。
もしかして、私を森に戻らせなかったのって・・・。
奥さまの為のだったのでは・・・。)
ユーリはフィルを睨み付けるが、フィルは少し悪い笑みを浮かべつつ二人のやり取りを見ていた。
レオンは顔を背け、窓の向こうを見ていた。
ディオンは嬉しそうに微笑んでいる。
「息子を愛してないわけじゃないのよ。
でもね。三人とも息子なんて神さまは酷いと思わない。」
セシルはユーリの両手を握りながら熱弁をして、ユーリはそれに相槌をして話を聞いていた。
屋敷の中のボスが登場。
さて、どちらがなんでしょう。




