1-9 ここから始まる。
メイド服を着た女性に着替えさせられて一時間ぐらい経ってから、ロック音と共に聞き覚えのある声がした。
「ユーリ嬢。入っていいが・・。」
「はい。どうぞ。」
レオンが入ってきて敬礼をした。
が、すぐにいつも通りの無邪気な顔になった。
「・・・。
だれ??
レオンさん??」
顔はレオンだがクセ毛がなく、皺一つない青い服で胸当てなど簡単な銀色の鎧を付けていた。
いつもと雰囲気が違う。
「まぁ、なんだ。
サラレイン領の屋敷、近衛騎士団レオン=バードだ。
なんか、フィルのヤツに急ぎの仕事があったらしくてな。」
「サラレイン領・・・??
フィルさん??
あれ?
フィルさんの名前って・・・フィリウス・・・?」
「サラレインだ。」
「は?」
「フィルは現サラレイン領 領主フィリウス=サラレイン。」
「は?
フィルさんがサラレイン領の領主さま??
聞いてないよ・・・?」
「まぁな・・・。
あいつ、昔から公爵家扱いされるのが嫌いらしくてな。
一緒に冒険してた時なんて口止めされてたからな・・・。
ユーリ嬢、そのドレス似合ってんなぁ。
どっからどう見ても女の子、令嬢だな。」
レオンはユーリに近付いて来て、髪の毛がグシャグシャになるまで撫でた。
「・・・。」
「どうかしたか?嬢ちゃん。」
「どうかした?じゃないよ・・・。
あれって誘拐みたいなもんじゃん。
私、これからどうなるの?
どうしたらいいの??レオンさん。」
「誘拐?
・・・あ~。言われたらそうだなぁ。見えるな・・・。
まぁ、領主様の屋敷ってもあのフィルの家みたいなもんだ。
嬢ちゃんなら、少し礼儀正しくしてたら大丈夫だ。
フィルの仕事も今夜中には片付くだろうし、フィルの家族とは明日の朝食後にでも挨拶して・・・。
まぁ、それからだ。」
「・・・今からでも良いからあの森に戻りたい。
ねぇ、レオンさん。森に帰っていい??」
「それは駄目だ!」
ユーリは少し可愛い子ぶって下から見上げながらレオンにお願いしたが、直後に却下された。
不服そうに顔を背け、リュウに抱き着く。
リュウはどうしたらいいのかわからなくてオロオロしながらもレオンに「キュー。」とか甘えた鳴き声をした。
そんな様子を見ていたレオンは急に片手で頭を掻きながらユーリに言った。
「・・・わりぃ・・。
この屋敷では俺は一団員だし、客人をどうこうする訳にはいかないんだ。
先代もまだ現役で幅を利かせているからな・・・。
(というか、下手に返したら俺がフィルとか先代に怒られかねないしな・・・。
それに、あの人が黙ってないよな・・・。
あの人に会わせなかったら、後が怖いから・・・。
ホント、嬢ちゃんが男だったら大した事なかったんだが、女だからなぁ・・・。
さっきあの人を見かけたけど、メイドとドレス生地とかリボンとか見ながら楽しそうにしてたからな・・・)
腹減ったろ。
今夜と翌朝のメシはこの部屋で食え。
なんだったら、俺が一緒にいてやるぞ!!」
「・・・
(知らない屋敷に一人とか言うのも嫌だし・・・。
でも、レオンさんには仕事があるだろうし、ライも待ってるんだろうな・・・。
今は子供だけど、二ヵ月ぐらい前まで30過ぎだったし・・・。
一晩ぐらい、知らない屋敷で過ごすなんて訳ないんだよね・・・。)
大丈夫。
リュウとアクアが居るから寂しくない。」
「じゃぁな。」
ちょっと肩を落としながらレオンが部屋を去り、すぐにメイドの人たちが夕食を持ってきてくれた。
そして、久しぶりに夢を見た。
いつも通り地下鉄の乗り込み、会社に向かう私。
会社では同僚たちが挨拶をしてくれる。
私も少し微笑みながら挨拶をする。
ランチは近くの定食屋でカレーライスを食べる。
カレーの香りに食欲が沸く。
ちょっと辛いがお米と合わせて食べると汗をかく。
ちょっと午後からは忙しくて、30分だけ残業をする。
帰りにはスーパーに寄って帰る。
急に母親が電話がかかってきて近況報告をして適当な所で電話を切る。
そして、また朝がやってくる。
いつもと変わらない一日、いつもの日常。
急に真っ暗になる。
何も見えない。
そして、たんだんと暗闇の向こうから光が差し込んでくる。
そこは、森の中にある小さな小屋だった・・・。
私は自分の手と足を見た。
あれ?なんで、こんなに私の手や体が小さいのだろ・・・。
そうだ。
私が別の世界に生まれ変わったんだっけ・・・。
朝になり、目を覚ました。
私は何か頬に感じて触れてみた。
涙が流れていたようだった・・・。
・・・
森から村、の予定だったけど、飛び越えちゃいました。




