1-6 従魔契約
「おい。レオン。
いきなり、入るなんで失礼だろうが・・・。
まったく成長しないやつだ・・・。
お前は昔から父さんや執事とかに言われて、屋敷ではちゃんとするようになったから成長したと思っていたのに・・・。」
レオンの後ろにいた男性はレオンの頭を軽く叩いて怒っていた。
レオンは後ろの男性に叩かれた場所に手で撫でながら、ちょっと子供っぽく笑っていた。
「あ?
お前と違って、こちとら庶民生まれの元冒険者だ。
それにボウズが一人で住んでるんだ。
気を遣うこともないだろ?
なぁ?ユーリ。」
「(・・・あ、やっぱり、レオンさんは私の事を男の子だと思ってるのか・・・。
まぁ、森の中で一人で暮らしてるんだ・・・。
女より男の方が何かと問題ないだろうしな・・・。
えっと・・・私に声をかけてるんだよね・・・。
あ、女じゃなくて男だから私じゃない方が良いよね・・・。)
レオンさん、こんにちは。
後ろの人は誰?初めまして?」
「おぅ。二日ぶりだな。
コイツは・・・。」
後ろの男性が一歩前に進み、レオンの前に片手を上げて話すのを遮った。
「初めまして。
私の名前はフィリウス・サラレイン。フィルと呼んでくれ。」
レオンよりシャキッとしてフィルはお辞儀をした。
「(あ、なんかレオンさんより礼儀正しそう・・・。
それに、金髪で白馬とか似合いそうだな・・・。)
は、初めまして。ユーリです。
フィ、フィルさん?
どうしたの?
二人で訪ねてくるなんて・・・。
とりあえず、立ち話もなんだからお茶でも出すから椅子に座って・・・。」
ユーリは訪問者を小屋に入れ、テーブルへと案内をしてお茶の用意をする。
「な。良い子だろう。
ぜってぇ悪人なんかじゃねぇって・・・。
まぁ、こんな森の中で一人暮らしって言うのもちょっとなんだが、問題ねぇって・・・。」
「別に悪人だと言っていない。
子供が森で一人暮らしをしているって言うのが問題なんだよ。
(・・・?
あの子は本当に男の子なのか?
さっきから見ているが女の子のようにも見える。
コイツ、昔からそういう所はだらしなかったからな・・・。
良いヤツか、悪いヤツかの感だけは良かったが・・・。
それに、レオンから聞いたこの子の過去は明らかに可笑しいだろう・・・。
いくら、人間嫌いのじいさんに育たてられたと言っても・・・。)」
ユーリがお茶の用意をしている後ろで大人二人がコソコソと話していた。
ユーリがポットとカップを三つ用意して椅子に座る。
「これ、どうぞ。
熱いから気を付けて。」
「お、悪いな。ボウズ。
気が利くじゃないか。」
そういって、レオンは用意して貰ったお茶を飲もうとしたが口を付けた瞬間こぼしそうになった。
「ふ。レオンには熱かったのじゃないのか?
お前は猫舌だからな・・・。
お茶ぐらい優雅に飲めよ。
うん。美味しいな。このお茶。」
レオンと違ってフィルがお茶を飲む姿は優雅がそのモノだった。
ユーリは少し顔を赤くして俯いた。
「(うわ・・・。
ほんと、フィルさんって王子様みたいだ・・・。
なんか一枚の絵みたい・・・。
でも、フィルさんの目付きが、ちょっと怖い・・・って言うか、軽く値踏みしてるような感じ・・・。
レオンさんとは違ってなんか少し警戒されてる??)
あ、ありがとうございます。」
リュウは新しい訪問者に少し警戒しつつ、ユーリの足に軽く頬を摺り寄せた。
ユーリはリュウに気づき、持ち上げ膝にのせて優しく撫でた。
「ほぅ・・・。
そのシアウルフがレオンの言ってたキミの従魔かい?」
「フィル。
コイツだけ・・・リュウだったか?
リュウじゃなくて、スライムとも従魔契約してるんだぜ。」
「うん。
この子はリュウで、スライムのアクア。
アクアはこの時間なら屋根の上に日光浴してる。」
「ほぅ・・・。
スライムは良く聞くが、シアウルフとも契約しているとは・・・。」
フィルは関心したように頷き、驚いていた。
「え・・・えっと・・・。
この子もスライムも結果そうなんただけで、従魔にする気なんてなかった。
(確か、この世界で従魔契約出来るのは珍しい事だし・・・。
珍しい・・・。目立ちたくなんかない・・・。)」
ユーリは慌てて首を振った。
「結果?
という事は、二匹とは何かあったという事かな?」
フィルは一瞬目を光らせながらも、すぐさま穏やかな口調でユーリに聞いた。
「(・・・一瞬、目が光ってなかった・・・?
やっぱり、フィルさんには適当な事とか通じないよな・・・。)
・・・えっと・・・。
リュウ・・・シアウルフは森の中で怪我して死にそうだった。
多分、他の魔獣にでも襲われたんだと思う。
それを発見して手当てした。
そして、元気になって頭を撫でてた時に手が光って紋様が現れた。
スライムの方は、森で狩った魔獣の血抜きとか下処理をする場所を一ヶ所に決めてやってた時に、いつの間にかそこに住むついて血とかを食べるようになった。
リュウを連れて行った時に、アクアとも契約していた。」
「・・・ほぅ。
シアウルフを手当てかぁ・・・。
ライの手当ての手際が良かったのも納得だぜ。」
「ふむ。
シアウルフの命を救ったから懐かれたのか・・・。
・・・うん。筋は通っているな・・・。
シアウルフもまだ子供だしな・・・。
・・・だが、ユーリ。
良く聞くんだ。」
フィルは真面目な顔になり、今までの親しみやすい雰囲気から深刻な感じでユーリに話しかける。
ユーリも緊張して促されるかのように重く首を縦に下ろした。
「従魔契約って言うのは滅多に出来るモノではないんだ。
スライムはともかく、シアウルフなんか大変な事なんだよ!
一部の人間、もしくは大掛かりな儀式めいた事をしたり大量の人の魔力が必要だったりする。
魔獣は知能もそれなりにあるから、魔獣に害のある事をしたりしたら勝手に解除されて、酷い時なんか主に牙を向いたりするんだ・・・」
「ゴクリ・・・。
魔獣に害のある事?」
「あぁ、虐待・・・。
そう。
従魔を蹴ったり殴ったり・・・。」
「オイ。
いきなり、物騒な事を言うんじゃねぇよ。フィル。
ユーリがそんな事する訳ないだろう。
こんなに気の利いた優しいボウズが!
なぁ、ユーリ。」
あまりにも、深刻そうにフィルがユーリに話していたが、レオンはフィルの首に腕を回し、いつもの人懐っこい笑顔でユーリを和ませようとした。
フィルも一度は穏やかな笑みを浮かべたか、少しだけ真顔になり気になった事を聞いた。
「・・・ユーリ・・・。
キミは本当に男の子なのかい?
私には女の子に見えるのだが・・・。」
「え・・・!
ボウズはボウズだろ??」
「え・・・えっと・・・
私は、ホントは女・・・。
・・・でも、私。
レオンさんを騙してた訳じゃない・・・。
一度も聞かれなかったし、勝手に勘違いしてた・・・。」
「え・・・!
・・・確かに一度も聞かなかったし・・・・
あ、そういえば、今まで一度もボクとかわたしとか言わなかったし・・・
それに、普通性別まで聞くヤツなんかいないだろ!
森で一人で暮らしてるなら普通は男だろ。
髪だって短いし・・・男でも長いヤツいるのに・・・。」
レオンはだんだんと声が大きくなって最後の方はヤケになっているようだった。
フィルは頭を抱え、ため息をついた。
「お前は昔からそうだろう・・・。
それでよく女性を泣かしてたし、一緒にパーティを組んで冒険していた時なんか女性メンバーに怒られてただろ・・・。」
ユーリは二人のやり取りを見ながらオロオロした。
「・・・えっと、私。別に気にしてない。
森で一人で暮らしていたなら男と思われてもおかしくない。
森を走っていると枝によく髪が引っかかって大変だった。
それで、邪魔になったから髪を切った。」




