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貴方と私の記憶  作者: 凛音
6/7

久し振りの時間

じっと前を歩く後ろ姿を見る

昔から変わらない

私をいつも引っ張ってくれる背中

私をいつも守ってくれた背中


「どうしたの?」


……随分と見蕩れていたらしい

急に振り向いて話し掛けられて驚いてしまう


「いや……昔と立ち位置が全く変わってないなって……」


「立ち位置?」


不思議そうな顔をする夏奈


「夏奈がいつも前を歩いて私がそれを追い掛ける立ち位置って事」


「あぁ!確かにいつも優は私の後ろを歩いてたね」


納得したのか夏奈は再度前を向き歩を進める

私もそれに習い夏奈に着いていく


家への帰り道を歩いているのだが若干遠回りになっている

……これは多分何処かに寄るつもりなのだろう


5分程歩いて着いた先は、私の予想通り自宅ではなく昔2人で行った事のある喫茶店に着いた

中に入ると甘い匂いが鼻腔をくすぐる

店員に案内され窓際の席に座り一息つく


「……なんで此処に誘ったの?」


私は前に座った夏奈に当然の疑問をぶつける

これが何回も一緒に来ていているなら普通だ

だが、今日転校してきていきなり連れていかれたら戸惑うのは当然だろう


「久し振りに会った友達と喋りたかったから……じゃダメかな?」


瞬間、顔が熱くなる

夏奈はあんな事があったのに私を友達と言ってくれるのか

私は目頭が熱くなるのを抑えられず涙が溢れてしまう


「え!?ど、どうしたの!?」


唐突に泣き出した私を見て慌てた夏奈が此方に来ようとする


「……大丈夫だから」


何とか自身と夏奈を落ち着かせる


「……本当に大丈夫?」


「うん……目にゴミg「そんなテンプレな嘘はつかなくても良いよ」……」


私の嘘は一蹴され宙に消えていく

夏奈を見ると不安に満ちた瞳で見ていた


「……夏奈に友達って言われた事が嬉しくて」


この瞳に嘘はつけなかった私は本音を告げるのだった



………………………………………………………………………………



テーブルの上には頼んだケーキが乗っている

私の前にはモンブラン、夏奈の前には抹茶のムースだ

早速フォークで切り分け口に入れる

入れた瞬間口の中に広がる栗の仄かな甘み


私の反対では夏奈が抹茶のムースをスプーンで掬い口に運んでいた

私の視線に気付いたのか夏奈が顔を上げる


「どうしたの?」


「夏奈は昔から抹茶が好きだったなって思って」


「うん!大好きだよ」


満面の笑みでそう答える

……可愛いなぁ

思わず夏奈の顔をじっと見てしまう


「?」


夏奈は更に首を傾げる


「いや、なんでもないよ」


「そっか。こっちのケーキ食べてみる?」


「良いの?なら貰おうかな」


私がそう言うと夏奈は自身のケーキをスプーンに乗せ此方に差し出してきた

……これは俗に言う(あーん)というやつなのかな

頬が上気してきて暫し固まっていると


「食べないの?」


再三問うてきた


「いや、でもこれは……恥ずかしいというか」


「恥ずかしい?」


頬が熱くなっている私とは対照的に夏奈は真面目な顔つきだ

これは恥ずかしがるのがおかしいのかな

そう思い差し出されているケーキを食す

口に入れた瞬間ほんのり苦く強い甘みが広がる


「どう?美味しい?」


「うん。凄い美味しいよ」


そう言うと夏奈は満面の笑みで答えてくれた



………………………………………………………………………………



私だけ食べて終わりだと思った

しかし夏奈の言葉でその考えは打ち消された


「私も優のケーキ、食べてみたいな〜」


じっと私の方を見てそう呟く夏奈

これは暗に私にも今のをしてほしいって事、なのかな……

夏奈の方を見遣ると今か今かと私の行動を待っている


「……1回だけだからね」


そう言いながらケーキを1切れ取り分け夏奈の口元に運んでいく

差し出されたケーキを頬張りながら笑みを作るの夏奈を見て、私は自身の顔が綻んでいるのに気付かなかった

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