奇跡の邂逅
私の目の前には"あの子"が立っている
何もせずただじっと立っている
ふと、あの子の口が微かに動く
「………………」
なんて言っているか聞き取れない
近づいて聞こうとするが私の足は何故か動かない
そうこうしている内にあの子は後ろを向いてしまう
そして私に背を向けながら何かを呟き走り去ってしまった
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……何か嫌な夢を見た感じがする
寝汗で肌にパジャマが纏わり付いて気持ち悪い
先ずはシャワーに入りそれから着替えよう
その後、お母さんが仕事に行く前に用意してくれた朝ご飯を1人で食べる
……この時間が学校のある日で唯一落ち着ける時間だ
誰にも邪魔されない静かな時間
それから手早く身支度を済ませ玄関に立つ
「行ってきます」
返事が帰ってこない事を知りつつ、つい口から出る
玄関から出ると熱気が押し寄せてきた
「……暑い」
何度目か分からない暑さへの愚痴を零しながら学校への道を進んだ
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学校に着き自分のクラスに入る
勿論、私が入っても挨拶なんかない
それどころか見向きもされない
強いて言うなら扉が開いた音に反応してこちらを見る人はいる
それでも直ぐにこちらから視線を外し元々していた事の続きを始める
まぁ、いつもの事なので気にせず自分の席に座った
ふと周りの生徒の話し声が耳に入る
「今日、転校生来るって知ってたか?」
「いや知らんけど、男子?女子?」
「話だと女子だって噂だぞ」
………転校生
まぁ、私にはあまり関係ない話題か
それ以上は聞いても無駄だと判断した私は提出課題等の準備に移った
その後、ベルが鳴り担任の先生が入ってきていつも通り学校生活が始まった
提出課題を集めて夏休みボケ予防の小言を言った後先生は転校生の紹介に移った
「入ってきていいぞ」
簡単な紹介をして廊下に声を掛ける
廊下と教室を隔てる扉が開き転校生が入ってきた
その瞬間私の目は転校生に釘付けになった
ゴクリと息を呑む音の後教室の、主に男子から小さな歓声が湧く
多分男子はその転校生の顔を見て歓声をあげたのだろう
だが私は違う
私の目はその転校生の"長い黒髪"に釘付けになっていた
「………夏奈」
ふと昔呼んでいた"あの子"の名前が出た
大好きだった"あの子"の名前を
転校生は黒板に名前を書き終わり簡単な自己紹介を始める
「父の転勤でこの学校に転校してきました鈴木夏奈です。宜しくお願いします」
周りからは拍手が起こるが私は固まってしまっていた
それもそのはずだ
この転校生は私が唯一大好きになった"あの子"なのだから