088 生命の指輪
海竜様の口から吐き出された光の球が俺の掌へ乗る、光が収まるとそこには見慣れた指輪があった、シルバーのリングに小さなダイヤモンドが付けられている指輪だ。
「これは…『生命の指輪』だ」
VRMMOで俺がアクセサリー枠に装備していた生命の指輪、それが今俺の手元に戻ってきた。
「これで良しっと、見事に指に馴染んだな」
右手の人差し指へ生命の指輪を装着する、少しブカブカだったリングが大きさを変え丁度いいサイズになった、次の瞬間指輪から眩い光が放たれる、光が収まるとそこには1人の女性が佇んでいた。
「やっと会えたわね、ユイトくん、いつ迎えに来てくれるか待ってたのよ」
「貴女は…生命の指輪の化身ですか?」
「あらあら、そんな呼び方されたらお姉ちゃん悲しくなっちゃう、私はメリッサ、生命の指輪に宿る慈愛の神よ」
メリッサと名乗った女性が俺に微笑みを向けた、金色の髪を長く伸ばし優しい空気を纏っている、年齢は20代前半位にみえるな、美人で優しいお姉ちゃんって感じだ。
「メリッサ…さん?はやっぱり俺がVRMMOで装備してた生命の指輪なんですよね?」
「うーん、やっぱり余所余所しいわね、ユイトくんがそんな風に私に接するなら教えてあーげない」
「参ったな…どうにも昔から歳上の女性に慣れてないんだよ、教えてくれメリッサ…これでいいかな?」
「よく出来ました、意地悪してごめんなさいね、考えている通り私の憑代はユイトくんが装備していた生命の指輪よ、偉い偉い」
そう言ってメリッサは背伸びをして俺の頭を撫でる、嫌な気はしないがなんだかとても照れ臭い。
「や!やめてくれメリッサ!皆が見てる!」
「皆?…そう、貴女達が私の仲間なのね、可愛い妹が3人も出来たみたいで嬉しいわ、これからよろしくね」
「はじめましてメリッサさん、私はサクヤです、ユイトさんの武器、鬼神刀咲夜に宿ってます」
「私はアイギス、神甲アイギスの化身、よろ」
「テミスよ、私の憑代は狩猟神の耳飾り、こちらこそよろしくお願いするわ」
メリッサ達がお互いに挨拶をする、アイギスやテミスの時もそうだったがやはり装備の化身同士波長が合うのだろうか、メリッサもすぐに3人と仲良くなれそうだ。
「今はゆっくり話をしてる時間がないんだ、もうすぐ戦闘が始まる、メリッサ、出会って早々に申し訳ないんだが力を貸して欲しい」
「事情は理解しているわよ、お姉ちゃんに任せなさい、そうそう、まずは海竜様の怪我をどうにかしないといけないわね、私は直接戦う事には向いていないけどこんな事ができるの」




