08 赤き炎
ベータさんが棚から持ってきた地図にはこの辺りの地理が描かれていた、かなり年季が入っている地図であちこちに印やメモが書き込まれていた。
「これは母さんが現役の冒険者時代に使っていた地図だ、アイツはこの辺りでも指折りの偵察だったからな、この辺りのモンスターの巣についても調べていた様だ」
「母さんの地図…それでこの地図にリザードマンの巣の場所が描かれているのか?」
「あぁ、あの日もお前がリザードマンに攫われたと見張りから聞いたシータは迷いも無く駆け出して行った、ここだ」
ベータさんは地図に描かれていた印を指差す、印の横には『要注意!リザードマンの巣!』とメモ書きがあった。
「この場所は…!母さんが僕を庇って亡くなった場所のすぐ近くだ…」
「ヤツらは食料を自分達の巣へ運ぶ習性がある、事前に巣の場所を知っていたからお前を助ける事が出来たんだろうな」
アルフさんは地図を見て口をキュッと食いしばった、シータさんの最期を思い出し涙を堪えているのだろう。
「アルフー!着いたわよー!」
「おーい、大将ーどこだー?」
家の外が騒がしい、誰かがアルフさんを探している様だ。
「僕の仲間が到着したみたいです、家に入ってもらっていいですか?」
「ここはお前の家でもあるんだ、一々確認すんじゃねぇ」
そう言ったベータさんは笑顔だった。
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「はじめまして、私はアルフと同じパーティのメンバーでイオタよ、回復魔法と水魔法が使えるわ、よろしくね」
「俺っちはガンマ、同じく『赤き炎』で偵察役をやってるぜ、弓の腕にはちぃーっとばかし自信がある、よろしくな、特に美しいお嬢さん」
そう言って軽薄そうな男はサクヤにウインクした。
「やめないかガンマ、サクヤちゃんはユイトくんとその…、あ、愛し合っているんだ!」
「ブーッ!!!ゲホゲホ!」
急に何を言うんだアルフさん、おかげでお茶が変なところに入ったじゃないか。
「愛…そうですね、私はユイトさんのモノですよ、ユイトさんは私の事…あ、愛してくれてますか?」
サクヤが俺を真っ直ぐに見つめてくる、とても愛おしい気持ちになった。
「サクヤ…もちろんお前の事を…その…ああああ愛してるよ」
俺はサクヤと見つめ合う、サクヤは余程嬉しかったのかにへら〜と表情を崩した。
「カーッ甘酢っぱいねぇ、どうすんだい大将?イオタが羨ましいそうな顔で見つめてるぜ?こんな坊主が男を見せたんだ、大将もホラ!」
「何言ってるのよガンマ!そ、そんな事より仕事の話よ!何しに来たかわかってるの!?」
イオタさんが顔をを真っ赤してガンマさんに怒鳴り散らす、
アルフさんは頭の上に「?」と首を傾げていた。