083 言質
報酬の受け取りを承諾した俺達は職員さんの持って来てくれたお茶を飲みながら何枚かの書類にサインをした、報酬をもらう手続きに必要だそうだ。
「…良し、これで手続きは大丈夫だ、白金貨で3000枚での支払いになる、現金が用意出来たらまた連絡をするよ」
「よろしくお願いします、どの道しばらくはこの街に滞在する予定ですので、そう云えば…ブロスタさんに聞いたんですがクラブさんも海竜様を実際に見た事があるんですか?」
「あぁ、かなり昔に一瞬だけな、亡くなった父上や周りの者に話したが誰も信じてはくれないかったよ、実際に見た者でないとは信じられないのもムリは無い」
「実は俺達は海竜様について色々と調べているんです、竜神岩へ行く為に船の手配をしたいと思ってるんですが…」
「竜神岩か…船の手配なら出来ん事も無いがあの辺りは潮の流れが激しい、手の空いている船乗りの中にあの海域へ行く技術を持つ者が居ればいいが…」
クラブさんが眉間に指をあて考え込む、船が有っても俺達に船を操縦する技術がない、先程の港の様子を見るにザラキマクの船乗り達はモンスターの回収に大忙しだ、暇な船乗りがいるとは思えないな。
「そうだ、ユイト達はブロスタ船長と面識があるんだよな?それならばブロスタ船長に頼んでみると良い、一線を退いたが昔はこの街1番の名船長だった人だ、腕に間違いはない」
「お願いを聞いてくれるでしょうか?面識があると言っても少しの間話をしただけですし…」
「実際に会った事があるならユイト達も知ってると思うがブロスタ船長は少し…いやかなりの女好きなんだ、特に若くて美しい女性には目が無い、その…少し言いにくいんだがサクヤくん達がお願いしたら間違いなく引き受けると思う」
「確かに…それならお願いを聞いてもらえるとは思うんですが…」
サクヤ達の顔を見ると3人とも露骨に嫌な顔をしている、アイギスなんで立ち上がって拳を素振りしはじめたぞ。
「あのエロ爺に頼み事ね…気が乗らないけど仕方ないわ」
「私も…賛成で良いですよ、胸やお尻を触らせ無いように気をつけます」
「仕方ない、でもちっぱいって言われたら次こそは仕留める」
「ごめんな3人とも…お詫びに俺に出来る事ならなんでもするよ、せめてもの償いだ」
不甲斐ないな、妻のパート代でギャンブルをするダメ亭主の様だ、3人に申し訳ない気持ちになる。
「ん?ユイトさん今なんでもするって言いましたか?」
「確かに聞いた、手始めに今夜は添い寝するべき、言質はとった」
「アイギス!アンタ何考えてるの!?でも…それは魅力的な提案ね…」
3人が何やら良からぬ事を考えている、マズい、つい余計な事を言ってしまった、しばらくはこの失言をネタにされ大変な日々が続きそうだ。




