079 氷海
先程のサクヤの攻撃でモンスターの前線は崩壊している、人間の軍隊や知能の有るモンスターならばこの段階で撤退してくれるだろうがヤツらは進軍を止める気配がない、後続の群が港へと近づいている。
『サクヤ、さっきの攻撃は後何発撃てるか?』
『後10発くらいなら余裕で撃てますよ、発動までに時間がかかりますが』
『わかった、発動のタイミングはクラブさんに確認してくれ、俺は群れの後続を潰してくる』
サクヤの鬼火参式があれば多少の敵なら逃しても大丈夫だ、俺は港へ迫る敵の背を飛び移りながら沖へと進んだ。
「ウジャウジャいるな、この辺りでいいだろう」
俺はモンスターの群れの中心で一際高く跳躍し辺りを見回す、100や200じゃきかない数のモンスターが海にひしめいている。
「はぁぁぁぁ!!『青龍』!」
咲夜の刃に蒼いオーラが纏われる、刃を振るうと放たれたオーラが龍の形になりモンスターへと襲いかかった。
「やっぱり最上位スキルは体力の消耗が激しいな」
青龍に触れた部分を中心に海上が凍りついていく、俺が着地する時には辺り一面の氷原が出来上がっていた、モンスター達も凍りつきまるで氷像の様だ。
『ユイトさん、鬼火参式を撃ちました!気をつけて下さい!』
氷原から港の方を振り返ると巨大な火球を確認出来た、俺が見逃したモンスターへとサクヤの鬼火が迫る。
『俺は沖の方にいるから大丈夫だ、漏らしたヤツらは任せたぞ』
『了解です、さっきの青い龍はユイトさんの仕業ですか?港からも確認できました』
『あぁ、今ので大分敵の数を減らせた、もう少し暴れてから港にもどるよ』
火球が再び海を紅く染める、今ので漏らしたモンスター達は全滅しただろう。
「さてと、また敵が密集している場所を探さないとな」
すぐそばで凍りついていた亀の様なモンスターに触れると粉々に砕け散った、俺は氷原を走り再びモンスターの群を目指す。
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1時間程経っただろうか、あの後モンスターの集まっている場所を探し何回か青龍を放った、その結果ザラキマクの海は氷海と化してしたのだった。
『後続のモンスターは粗方片付いた、そっちの方はどうだ?』
『こっちも大体片付いたと思います、クラブさんがユイトさんに戻って来て欲しいそうです』
『わかった、すぐに戻るよ、大技を使い過ぎてクタクタだ』
『私もです、クラブさんが後は魔法部隊に任せろって言ってくれたんで少し休憩してます』
今回の戦いはサクヤが大活躍だったな、ご褒美に夕飯は奮発するか、早く港へ戻ろう。
「クシュン!それにしても…少し冷えるな」
誰も居ない氷原に俺のくしゃみが木霊した。




